子供の安全をヘルメットで守ろう!事故死を防ぐデザイン、サイズなど選び方の基準は?

イラスト/久保田修康

 

 

幼児、小学生(13歳未満)のヘルメット着用の義務、知っていますか?

 道交法改正から10年。ヘルメット着用率は?

2008年6月1日の道路交通法改正により、幼児および児童(13歳未満)に対するヘルメットの着用努力義務が施行されました(道路交通法 第63条の10)。これは、保護者の方が運転する自転車に幼児を同乗させる場合、または、小学生のお子さん自身が自転車を運転する場合にも、ヘルメットを着用するように努めなければならない、ということです。

 そのように道交法が改正されてから今年で10年。今、子どものヘルメットの着用率はどうなっているでしょうか? 2017年に「au自転車向けほけん」を取り扱うKDDIが、「自転車のヘルメット着用に関する意識調査」を週に1日以上、日常的に自転車を利用する1000名(内561名が保護者)を対象)にインターネットで調査を実施し、その結果を公表しました。その調査結果によるとヘルメットの着用率は、小学生は48.9%、中学生・高校生になるとそれよりさらに低くなるという実態が明らかになりました。また、未就学児(6歳以下)でも着用率は57.7%で、42.3%が着用していなかったのです。引用)

 

子どもの交通事故死の現状

 2013年の18歳までの子どもの「交通事故死」の状況はこの表のとおりです(公益財団法人 交通事故総合分析センターの統計による)。小学校に入学した頃から「自転車運転中」(自分で自転車を運転する)の事故死が急増、10歳から18歳では交通事故死の第一位になっていることがわかります。

 

 

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研:http://www.aist.go.jp/)では、病院等からデータを収集し、自転車事故によって身体のどの部分にケガをしているのかを調べました。その結果、頭の部分、特におでこのあたりや頭の側面にケガをしている子どもが多いという結果が出ました。

 

ヘルメットは安全のために本当に有効なの?

最も確実な安全策だと言えます

このようなケガを防ぐために、自転車用ヘルメットの着用が義務付けられているのですが、果たして本当にヘルメットは有効なのでしょうか?産総研では金沢大学と共同で、ヘルメットの有効性を検証する実験を行いました。

 まずはヘルメットを着用していない、そして自転車用チャイルドシート(ヘッドレストなし)に座った状態で、自転車が転倒した場合を見てみましょう。

 

右上のグラフに描かれた赤い線が、頭にケガをするかどうかのラインです。この赤い線を超えると、頭の骨が折れるなど、大きなケガを負います。ここでは3回実験をしていますが、3回とも赤いラインを大きく超えており、深刻な結果となったことを示しています。

 

次に、ヘルメットをかぶり、自転車用チャイルドシート(ヘッドレストあり)に座った状態で、自転車が転倒した場合を見てみましょう。

 今度は赤いラインを下回っていますね。大きなケガには至らなかったということです。ヘルメット着用と、肩または頭までしっかり覆われた自転車用チャイルドシートの有効性がよくわかります。

 

良いヘルメットを選ぶための3つのポイント

 ヘルメットの有効性はおわかりいただいたと思いますが、それではどんなヘルメットを選べばよいのでしょうか?3つのポイントをご紹介します。

SGマークが付いている

SGは、Safe Goods、「安全な製品」ということです。製品安全協会の厳しい試験・審査を経て認証された製品には「SGマーク」が付けられます。SGマークが付いていることが、安全性の高いヘルメットのひとつの基準になります。自転車用チャイルドシートも同様です。

 

 キッズデザイン賞を受賞している

キッズデザイン賞はキッズデザイン協議会が行っている顕彰制度です。キッズデザイン賞を受賞した製品は、子どもの目線で開発され、その安全に寄与している製品であると言えます。

 

オシャレよりも大切なのは、子どもの頭の形に合っているか

たとえば欧米人の子どもの頭の形と、日本人の子どもの頭の形は違います。海外メーカーのヘルメットを選ぶ場合は、そのヘルメットがお子さんの頭の形に合ったものかどうかを確認してください。欧米型のヘルメットをかぶると、横はぴったりでも前後が余ってしまってグラグラし、フィットしない場合があります。

 オシャレなヘルメットを子どもにかぶらせたいと思う気持ちは分かりますが、店頭で購入する場合もネットで購入する場合も、まずは安全を第一に、「SGマークが付いているか」または「キッズデザイン賞を受賞しているか」に着目し、海外メーカー製の場合は、「日本人の頭にフィットしています」等の記載があるかどうかを確認して、”良いヘルメット”を選んであげてください。

 

ヘルメットのかぶり方、3つのお約束

 さて、せっかく良いヘルメットを購入しても、実はかぶり方もとても大切です。ここではお子さん自身が確認できる「3つのお約束」をご紹介します。

 

イラスト/久保田修康

 

子どもの「目」で確認―ヘルメットの縁は地面と平行ですか?

 ヘルメットを後ろに傾けてかぶっている子どもを見かけることがあります。おでこを守ることが大事なので、ヘルメットの縁が地面と平行になるようにかぶってください。お子さん自身に確認してもらいましょう。まっすぐ正面を見て、頭を傾けずに目で空を見上げたときに、ヘルメットの縁が見えるかどうか、縁が見えればOKです。

子どもの「指」で確認―あごひもにたるみがないですか?

 あごひも(ストラップ)の締め方も重要です。あごひもにたるみがないよう、きちんと締めてください。これもお子さん自身で確認することができます。耳の前後にかかっているあごひもの上にVサインを作るように人さし指と中指を沿わせてみます。指があごひもにぴったり沿っていればOKです。

 

子どもの「声」で確認―あごひもがきつすぎず、声を出せますか?

 あごひもの締め方がゆるいとヘルメットが脱げてしまいますが、きつすぎると子どもが苦しく、かぶるのを嫌がる原因にもなります。あごひもを締めたら、お子さんに「あー」と声を出してもらってください。無理なく「あー」と言えればOKです。

 

ヘルメットをかぶれない赤ちゃんの自転車の乗り方は?

赤ちゃんをおんぶして自転車を運転しても大丈夫?

 ヘルメットをかぶることのできない赤ちゃんを、おんぶしたり抱っこしたりして自転車を運転してもよいのでしょうか?道路交通法には特に記載はなく、各自治体がそれぞれ規則を作り、「乳幼児一人をおんぶひも等で背負った状態であれば運転してよい」などと定めています。しかしおんぶひもでしっかり固定していたとしても、衝突時や転倒時に赤ちゃんがケガをしたり、中には亡くなるケースもあり、大きな課題となっています。Safe Kids Japanでは、「ヘルメットを着用することのできない赤ちゃんを、おんぶしたりだっこしたりして自転車を運転しない」ことを推奨していますが、「現実的ではない」という声も寄せられています。

 2016年5月、東京・国分寺市で、赤ちゃんをおんぶして自転車を運転していた女性が自動車に接触、赤ちゃんが投げ出されて亡くなるという事故がありました。その事故を受け、Safe Kids Japanでは、産総研や東京工業大学と共同で実験をし、その様子がwithnews(朝日新聞社が運営するニュースサイト)に掲載されました。

 おんぶでも抱っこでも自転車が転倒すれば投げ出されてしまうことが多く、ヘルメットをかぶっていない赤ちゃんは重大なケガをする可能性が高いです。「私は転倒したりしない」「交通量の少ないところを走っているから大丈夫」という声も聞きますが、誰にでも、どこを走っていても、衝突や転倒の可能性はある、ということを知っておいていただきたいと思います。

 

わたしのSafe Kids ストーリー~「子どもの傷害予防」に取り組む人をご紹介します~

第1回 近藤 あゆ香さん 

 

「おぎゃっと21」(5月3日、4日 徳島市)で、ヘルメットのかぶり方を指導する近藤さん

 

安全性が高く、子ども達にも大人気の「TETEシリーズ」を製造している徳島双輪。近藤さんはこの徳島双輪の専務取締役です。しかし、徳島双輪は元々ヘルメットメーカーではなく、自転車卸業を営む会社。そんな徳島双輪で、なぜ子ども用ヘルメットを開発・製造することになったのでしょうか?

徳島双輪は、50年以上前から自転車卸業を営んでいる会社です。自転車卸業というのは、自転車メーカーから仕入れた一般自転車を小売店に販売する仕事です。

今から15年ほど前のこと、当時1歳だった長男を、自転車に乗せて保育園に送迎していました。みなさんも経験があると思うのですが、子どもを乗せて走っているときに、「ヒヤリ」とする瞬間が何度かあったんです。これは危ない、自転車用のヘルメットをかぶせなければ・・・と、当時まだ一般的ではなかった子ども用の自転車ヘルメットを取り寄せ、長男にかぶせてみたのですが、どうも頭にフィットしない。子どもも嫌がる。それで、私が子どもにかぶせたい、そして子どもがかぶりたくなるようなヘルメットを作りたい!と思いました。

 

作りたい!と思ったというのはすごいですね。でも、ヘルメットって「作りたい!」と思って作れるほど簡単なものではないですよね?

ええ、徳島双輪として製品の開発をするのは初めてのことだったので、ヘルメット作りは大きな挑戦でした。前社長には、夫の父ですが、「売れない」「ムリだ」と反対されました。でも、自分が納得できるヘルメットを作りたい、ヘルメットを作ることで世の中の安全に対する意識も高まるから・・・と説得し、夫も「子どもの安全のためだから」と後押ししてくれて、なんとか・・・(笑)。

 

近藤さんの情熱を感じます。それで何から始めたのですか?

まず海外の展示会に行きました。台湾だったのですが、その展示会で知り合ったメーカーの工場を見学させてもらい、日本人の子ども用のサンプルを作ってもらいました。自分の子ども達や友人の子ども達の頭のサイズを測って、「日本人の子どもの頭はこういう形なんです」と直接説明しました。結婚前は繊維会社の研究室で働いていて、検査などもしていたので、ものづくりのプロセスについては多少知識はありました。

 

なるほど。それで実際にヘルメットを作ることになったのですね?

ええ。でもいざ作ると言ってもデザインをする方法も知らなかったので、最初は自分で絵を描いてファクスで中国の工場に送っていました、「こんなヘルメットを作ってください」と(笑)。その後コンピュータで使う専用ソフトを買って、イラストを描いて、それを工場に送りました。長男はその頃2歳か3歳になっていたのですが、初めてわが社で作ったヘルメットをとても気に入って、もういつでも、どこに行くにもかぶっていました。

かわいいですね。

はい、うれしかったですね。その後、イラストを描いてくれる人も見つかり、今はその方の力もお借りしています。

 

TETEという名前も素敵です。

うちのヘルメットは初めからTETEという名前なんです。赤ちゃんが話す喃語ってありますよね、実は当時長男が1歳くらいで、喃語で「テテ」「テテ」と言っていたのがかわいくて、それがそのままヘルメットの名前になりました。

 

徳島双輪のヘルメットTETE

 

TETEは第1回キッズデザイン賞を受賞しています。

日経新聞に、キッズデザイン賞の募集記事が載っていたのを見て応募しました。そうですね、第1回の時です。次男が生まれる前日に受賞の報が入ったので、今でもよく覚えています。

安全性の追求はどのようにしているのですか?

当社のヘルメットは開発当初からSG基準に照準を合わせ、キッズ用ヘルメットはSGマークの認証を受けています。検査所の方に非常に安全性が高いと言っていただいたヘルメット(キッズデザイン賞を受賞したTETE)は、当初の金型を基本的に変えず使用しています。ヘルメットの基本となる型がいくつかあるのですが、まずデータを見て、次に衝撃実験で良い数値のものを選んで、さらにそれを改良しています。その上で、工場の試験室で試験をする、という流れです。

今やヘルメット作りのプロフェッショナルである近藤さん。ご家族の反応はいかがですか?

子ども達はやはりヘルメットを見ると喜びます。以前、ある大手ヘルスケア用品の会社のテレビCMにTETEが使われたことがあったんです。「あ!TETEだ!」と大喜びしていました。

夫もはじめはちょっと戸惑っていたようでしたが、実際にヘルメットを作り出してからは応援してくれています。両親の協力があってこそ、ということももちろんあります。海外の展示会に出かけることもありますし、中国や台湾の工場に行くこともよくあります。そんな時はいつも両親が子ども達を預かってくれました。実は徳島は女性社長が多いところで、私も仕事をするのが当たり前という空気の中で育ちました。なので、もちろん大変なことはいろいろありますが、特に気負うこともなく、普通に仕事に向き合っています。

 

安全でかわいい自転車ヘルメットの開発・製造に力を尽くしてきた近藤さん。10年後はどんな社会になっていてほしいですか?

今、ヘルメットの着用率は地域によって少し異なるようですが、50%前後です。10年後はヘルメットがもっと普及しているといいな、と思います。そしてヘルメットのかぶり方ですね。今はただかぶっているだけ、というお子さんが多く、私も気が付いたときは声をかけて直したりしていますが、みなさんが正しいかぶり方ができるようになるといいと思います。私たちの事業開始当初からのコンセプトは「子どもがかぶりたい、子どもにかぶせたいヘルメット」ですが、より安全性が高く、かぶりやすいヘルメットを作れていたらいいな、と思っています。

ありがとうございました。

親子でオリジナル・ヘルメットを作ります(「おぎゃっと21」の会場で)

徳島双輪株式会社

 

 Safe Kids Japanとは

 Safe Kids Japanは、事故による子どもの傷害を予防することを目的として活動しているNPO法人です。今月からこのHugKumで、子どもの傷害予防に関する記事を配信することになりました。基本的に毎月1回、季節や年中行事などに即した内容の記事をお送りしたいと考えています。

さて、「事故による傷害」、「傷害予防」という言葉、あまり聞き慣れないかもしれません。私たちがなぜ「事故」ではなく「傷害」という言葉にこだわっているのか、について、はじめに少し説明させてください。

事故?傷害?その違いは?

 「事故」という言葉を辞書で調べてみると、「思いがけなく起こった良くないできごと」とあります。英語で言うとaccidentですね。accidentは「意図しない不幸なできごと」という意味で、「避けることができない運命的なもの」という意味も含まれています。海外でもかつてはaccidentを使っていましたが、最近ではinjuryという言葉が使用されるようになりました。injuryは「ケガ」「負傷」という意味です。「事故」は科学的に分析し、きちんと対策すれば「予防することが可能」という考え方が一般的になり、「運命的な」という意味を含むaccidentではなく、injuryという言葉を使用することが勧められるようになったのです。今ではaccidentという言葉の使用を禁止している医学誌もあるくらいです。

 そのinjuryに対応する日本語として、Safe Kids Japanでは「傷害」という言葉を使っています。よく「事故予防」と言われますね。もちろん事故そのものが起きないことがいちばんなのですが、たとえ事故が起きたとしても、(重大な)ケガはしないように備えよう、そんな思いも込めて、「傷害予防」と言っています。

Safe Kids Japan

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