安全のプロが伝授!子供用「おすすめライフジャケット」の選び方

イラスト 久保田 修康

 

子ども達が大好きな水遊びの季節がやってきました。海や川、湖などに出かけるファミリーも多いことでしょう。しかし水遊びには思わぬ危険がひそんでいます。安全に水遊びを楽しむためにぜひ使っていただきたいもの、それは「ライフジャケット」です。今回は、

1 なぜライフジャケットが必要なのか
2 ライフジャケットの選び方
3 ライフジャケットの正しい着用法
4 浮き方の練習
5 レンタルステーション

についてお話します。

1 なぜ子供が泳ぐときにライフジャケットが必要なの?

子どもにライフジャケット?浮き輪があるから大丈夫でしょ?と思われる方も多いかもしれません。確かに浮き輪は種類も豊富で子ども達も喜びますが、しっかりつかまっていられないと波や川の流れによってバランスを崩し、浮き輪から手が離れてしまうと、すっと水中に沈んでしまうことがあるのです。
その点、ライフジャケットは「つかまる」のではなく「着る」ものなので、身体に密着し、手足を自由に動かすことができます。正しく着用すれば、溺れから身を守ることもできるのです。

 

2 子供用ライフジャケットの正しい選び方は?

ライフジャケットは、釣り具店やアウトドア用品店、スポーツ用品店、一部の子ども用品店などで販売されていますが、認定品であるか、子どもの身体のサイズに合っているか(下記参照)を確認し(試着をおすすめします)、お店の人に相談して選ぶようにしましょう。
また、ライフジャケットはネットでも多く販売されていますが、浮力が十分でないものや、股の下を通すベルト(下記参照)が付いていないものが販売されている場合もありますので、製品の説明をよく確認した上で選んでください。
(※浮力は、体重40kg未満の子ども用は5kg以上、体重15㎏未満の子ども用は4㎏以上必要です。)

ポイント1 国土交通省などの専門機関の認定品であること

国土交通省は、2018年2月から、すべての小型船舶の乗船者にライフジャケットの着用を義務化しました。小型船舶に乗る人は、国の安全基準(浮力が十分か、顔が水面に出る設計か、目立つ色かなど)に適合したライフジャケットを着用しなければなりません。
この安全基準は小型船舶乗船用のライフジャケットに関するものですが、遊泳時もこの「桜マーク入り」のあるものをおすすめします。

桜マーク(国土交通省型式承認品)

 1.PROX 小型船舶用救命胴衣(型式認定)子供用

桜マーク入りライフジャケットの例

2.RAC(NPO法人 川に学ぶ体験活動協議会)公式認定品

RAC公式認定品の例

 

 

 

AQA ライフジャケット インファントDXIII(全3色)

 

ポイント2 子供の体のサイズに合っていること

ライフジャケットは、子どもの身体のサイズに合ったものを着用することがとても大切です。サイズが大きすぎると水中でライフジャケットが鼻と口を覆ってしまい、呼吸をさまたげてしまうことも。

12歳未満の子どもが着用するライフジャケットのサイズは下記の3種類に分類されています。
 (1)体重40kg以上の子ども用
 (2)体重15kg以上40kg未満の子ども用
 (3)体重15kg未満の子ども用

 

3 子供のライフジャケットの正しい着用法

ライフジャケットは、必ず股の下を通すベルトをしっかり締めてください。子どもは身体が細く柔らかいので、股下ベルトを使わないと、ライフジャケットから身体が抜け出してしまうことがあるのです。

イラスト 久保田 修康

4 子供にライフジャケットを着せて、浮き方の練習をしてみよう!

せっかくライフジャケットを用意しても、海や川に行ったときに子どもが着用を嫌がる、着用してもじょうずに浮くことができない、ということがあります。そこで、まずはプールで練習をしておきましょう。身体をまっすぐ立てて浮く、顔を空に向けて背浮きをする、といった練習をしておくと安心です。

横浜YMCA 山手台センターのプールで背浮きの練習をする保育園児

 

5 子供用ライフジャケットをレンタルするという選択肢もおすすめ

公益財団法人 マリンスポーツ財団では、全国の海岸でライフジャケットのレンタルステーションを展開しています。お近くの海岸にレンタルステーションがあるか、チェックしてみてくださいね。

鎌倉市由比ヶ浜海岸に設置されたレンタルステーション

わたしのSafe Kids ストーリー ~「子どもの傷害予防」に取り組む人をご紹介します~
第2回 吉川 優子さん


7月7日「親子で学ぶ 海のそなえ教室」で講演する吉川さん

息子さんの事故死をきっかけに、ライフジャケット着用促進活動

今回ご登場いただいたのは、一般社団法人 吉川慎之介記念基金代表理事の吉川 優子さんです。吉川さんは子どもの傷害予防活動、特に「ライフジャケット着用の促進」に力を入れて活動しています。

吉川さんがライフジャケットの着用促進活動を始めるきっかけについて教えてください。

「吉川慎之介記念基金」の「慎之介」というのは、私のひとり息子の名前です。今から6年前、私たちは夫の転勤で愛媛県西条市に住んでいました。この年の7月20日、当時5歳で幼稚園の年長組に在籍していた慎之介は、大好きな先生やお友達と一緒に、幼稚園のお泊まり保育に出かけました。お泊り保育は西条市を流れる加茂川という川で行われていましたが、その日上流で降った雨によって川が増水し、慎之介を含む数人が流され、慎之介は溺死してしまったのです。

夫は出張の多い人でしたが、慎之介もそれをよく見ていて、7月20日は元気に「しゅっちょう、行ってきます!」と言って出かけて行きました。結局それが最期になってしまったのです。

お泊り保育の事前準備会では、「川に入りますが、水深は浅く、おとなの足首くらいまでです」という説明がありました。西条は自然豊かなところで、慎之介が小さい頃から海や川によく出かけていましたが、慎之介には必ずライフジャケットを着せていました。でも、幼稚園のお泊り保育で行く川は穏やかな流れで水深も浅いという説明だったので、ライフジャケットは持たせなかったのです。他の子が誰も持っていかないということも影響していたかもしれません。今となっては悔やんでも悔やみきれませんが、なぜあの時ライフジャケットを持たせなかったのか、と思います。

 

ライフジャケットを着用する生前の慎之介くん(2011年)

 

それはお辛い経験をされましたね。おうちで海や川に行くときはライフジャケットを着ていたのに・・・という点が特に考えさせられます。活動はどのように始めたのですか?

慎之介の葬儀のとき、夫が「この事故の原因を究明します」とあいさつをしたのですが、それを受けて、一緒にお泊り保育に行った園児の保護者の方から、「子ども達の記憶が薄れないうちに現場に行き、あの日何があったのかを調べたい。」という提案をいただきました。それで全員ではないですが、年長組の多くの親子と事故が起きた現場に行き、先生方が立っていた位置や、慎之介がいた位置などを、子ども達、そして宿泊予定だった施設職員の方達の話も聞きながら、共に検証したのです。観光で現場を訪れていた方達からも当時の様子を教えていただきました。
その結果、これがどういう事故だったのか、がだいたいわかってきました。また、これは刑事事件になりましたので、警察も詳細な現場検証を行っており、幼稚園の元園長に有罪判決が言い渡されたのですが、裁判の過程で有益な情報がいろいろ得られ、判決時には「園児にライフジャケットを装着させるべきたった」ということが厳しく言われたこともあり、ライフジャケットの着用を進めたいと考えるようになりました。

それから、幼稚園の体制の問題も大きいと感じました。裁判では、幼稚園関係者から「我々は気象の専門家ではないので、急な増水は予見できなかった」「ライフジャケットを着用させると安全性が向上するという教育は受けていない」といった発言があり、唖然としたことを覚えています。このような発言にどう向き合えばよいのか、どう整理していいのかわからなかったのですが、裁判の過程で出会った刑事さんや検察官の方が、きちんと説明してくれました。慎之介の事故を、国の権限できちんと捜査してくれている、ということが私たちにとって大きな支えになりました。

 

事故のあった西条市で積極的に活動されていると聞きました。

はい、事故が発生した地域で啓発に取り組むことに意味があると考えています。死亡事故の遺族は誰でもそうですが、私たちも「この事故を教訓に、二度と同じことが起きないようにしたい」と考えます。でも「事故の教訓を生かす」ことは、実際にはなかなか難しいことです。私たちは、事故直後から保護者のみなさんや西条市職員、そして子ども達と共に「再発予防」について考えてきました。子ども達は当時5歳、現在は11歳になっていますが、当日の様子を後になって思い出し、直後には子ども自身わからなかったことも後になってわかったこともありました。子ども達なりに慎之介の事故に向き合っていると感じています。
西条市と愛媛県に対しては、事故後ずっとライフジャケットの着用義務化を訴え続けてきました。昨年新たに就任した西条市の市長と面会した際に、「(ライフジャケット着用促進など)どんどんやっていくので、取り組みについて提案してください」と力強い言葉をいただきました。それで、保育・学校向けのシンポジウムや小学校におけるライフジャケット装着体験学習などを新たに提案し、それらがひとつずつ実現しています。

 

それはすばらしいことですね。具体的にはどのような活動になっているのでしょうか?
この4月から、西条市内の消防署にライフジャケットが設置されていて、消防署の職員さんが予約を受けて貸し出し業務を行ってくれています。ライフジャケットは全部で100着。すべてグローブライド株式会社さんからご寄贈いただいたものです。サイズはSとLの2種類で、土・日・祝日も対応しています。
西条市の消防署員のみなさんは、慎之介の事故当日、ほぼ全員出動しておられました。西条市の職員の方も、消防のみなさんも、この事故の教訓をどうやって活かせばよいか、を考えてくださっていたそうで、ライフジャケットのレンタル事業を積極的におこなってくださっています。
一方、地域の人たちもこの事故を風化させないよう、しっかりと向き合ってくださっています。西条市には石鎚山という四国最高峰の山があり、そこで市民手作りのフェス、「STONEHAMMER=ストーンハンマー(石槌)」が開催されます。昨年、このイベントに初めて出展し、ライフジャケットの展示や着用体験を行いました。ライフジャケットは「見るのも着るのも初めて!」という方が多かったですが、地域で楽しくライフジャケットの着用促進を進めることができたのは、とても大きなことだったと思っています。
ただ、将来的な不安もあります。この活動が本当の意味で根を下ろし、市民レベルでライフジャケット着用が常識になれば「条例化」は必要ないかもしれませんが、市長が変わってもレンタルステーション事業は継続してもらえるだろうか?学校によっても温度差があると思うので、すべての学校でライフジャケット指導はしてもらえるだろうか?という不安です。

2017年7月 “STONE HAMMER”で西条市長の玉井 敏久さんと吉川さん

吉川さんは事故検証制度の法整備に向けた活動も行っておられます。

慎之介の事故のとき、死因を究明する法律がないことに驚きました。人が、特に子どもが亡くなったら、その原因を調べるのは当たり前なのではないかと思います。ただ、死因や事故原因を調べると言っても、そのベースに法律がないと難しいと痛感しています。
アメリカやヨーロッパ、オセアニアの国々にはCDR(Child Death Review)という制度があり、病気であっても事故であっても、亡くなった子どもすべてについて死亡原因を詳しく調べ、ひとりの子どもの死から再発予防策を探るということが行われています。このCDRの制度を日本にも取り入れたいと考え、遺族を中心に自主勉強会を開いたり、国会議員の方達と関連省庁の勉強会などでお話をする機会をいただきました。

お辛い経験を元に、ライフジャケット着用促進活動を進めている吉川さん。10年後はどんな社会になっていてほしいですか?

水の事故だけでなく、子どもの事故がなくなっていて欲しいです。制度的なところでは、子どもの安全に関する制度や法律を統一してほしいと思います。

ありがとうございました。

 

 

参照:吉川慎之介記念基金 

Safe Kids Japanのホームページ「水遊びを楽しく安全に」もあわせてご覧ください。

Safe Kids Japanとは
 私たちSafe Kids Japanは、事故による子どもの傷害を予防することを目的として活動しているNPO法人です。今月からこのHugKumで、子どもの傷害予防に関する記事を配信することになりました。基本的に毎月1回、季節や年中行事などに即した内容の記事をお送りしたいと考えています。
さて、「事故による傷害」、「傷害予防」という言葉、あまり聞き慣れないかもしれません。私たちがなぜ「事故」ではなく「傷害」という言葉にこだわっているのか、について、はじめに少し説明させてください。

事故?傷害?その違いは?
 「事故」という言葉を辞書で調べてみると、「思いがけなく起こった良くないできごと」とあります。英語で言うとaccidentですね。accidentは「意図しない不幸なできごと」という意味で、「避けることができない運命的なもの」という意味も含まれています。海外でもかつてはaccidentを使っていましたが、最近ではinjuryという言葉が使用されるようになりました。injuryは「ケガ」「負傷」という意味です。「事故」は科学的に分析し、きちんと対策すれば「予防することが可能」という考え方が一般的になり、「運命的な」という意味を含むaccidentではなく、injuryという言葉を使用することが勧められるようになったのです。今ではaccidentという言葉の使用を禁止している医学誌もあるくらいです。
 そのinjuryに対応する日本語として、Safe Kids Japanでは「傷害」という言葉を使っています。よく「事故予防」と言われますね。もちろん事故そのものが起きないことがいちばんなのですが、たとえ事故が起きたとしても、(重大な)ケガはしないように備えよう、そんな思いも込めて、「傷害予防」と言っています。

NPO法人Safe Kids Japan

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