インフルエンザ&冬の病気のキホン!予防接種や治療、かかったときのホームケアまで

気温が下がり、空気が乾燥するこれからの季節は、さまざまな病気が流行しやすくなります。かかってしまった場合はどうすればよいのか、ホームケアのポイントを小児科の先生にうかがいました。いざというときのために、基礎知識を身につけておきましょう!

子どもにうつさないよう 大人が予防を心がけて

1~3歳の子どもの場合、保育園などで感染症が流行することもありますが、おうちの方が家の中に持ち込んだウイルスや細菌に感染するケースも多いと考えられます。そこで、感染症を防ぐには、まずは外出する機会が多い大人が手洗い・うがいの徹底を。子どもが手洗いをするのが難しい年齢であれば、アルコール消毒や除菌ウェットティッシュなどを使うのもよいですが、神経質になりすぎる必要はありません。親子ともに体の免疫力を高めておけるよう、日頃から「バランスのよい食事をとる」「十分な睡眠をとる」「生活リズムを整える」といった基本的な健康管理を心がけましょう。

自分ならどうしてほしいか 考えながらケアを

病気の症状はさまざまで個人差もあり、正確な診断をするために経過を見ることもあります。「おうちで様子を見てください」と言われたときは、熱が出ているのであれば、おうちの方自身が熱を出したときにはどうしてほしいかを考えながら、子どものケアをしていきましょう。育児書などに書かれていることは一つの目安だと考え、「暑がっているのか寒いのか」など、子どもの様子をよく観察して対処することが大切です。判断に迷うときは早めに受診し、子どもが自らの力で病気を治していくプロセスをどうすれば手助けできるのかを、医師といっしょに考えていけるといいですね。

 

■小児科で受診するときに 心がけたいこと

あちこちの病院で受診せずに  かかりつけ医をつくる

病歴や体質などをよく知っている医師であれば、その子に合ったケアの方法をアドバイスしやすくなります。予防接種も含めて継続的に受診する「かかりつけ医」をつくり、医師との間に信頼関係を築いておくと安心です。

子どもの病状をよく知っている大人が付き添う

正確な診断をするには、「いつから」「どんな症状が出て」「どんな経過をたどっているのか」といった問診が欠かせません。診察時には、持病やアレルギー、服用中の薬なども把握している大人が付き添いましょう。

写真や動画をとっておくと診断の手がかりに

発疹(じんましん)や、おう吐物・便の様子は、スマホなどで写真をとっておくと診察時に役立つことも。咳の場合は動画を撮影して、咳やゼーゼーといった呼吸の音がわかるようにしておくと症状を伝えやすくなります。

重症なら早めの時間帯に受診する

症状が重い場合や一度受診したあとに悪化した場合は、詳しい検査や大きな病院への紹介が必要になるケースも。「いつもと違う」と感じたら、診察終了時刻ギリギリに駆け込むのではなく、時間に余裕をもった受診を。

 

インフルエンザの症状や対処法は?

■どんな病気なの?

複数の型があるので 何度もかかることも

インフルエンザにはA・B・Cの3つの型がありますが、軽症のC型は普通の風邪と区別がつかないことが多く、検査で調べることができるのはA型とB型です。A型では高熱・寒気・体の痛み、B型ではおう吐・下痢が見られることが多いものの、症状の出方は人により異なります。 A型とB型には、さらにそれぞれ複数の型があり、違う型が同時に流行することも。予防接種を受けたり、一度かかっていても、免疫がない型には感染する可能性があります。

症状はさまざまで 高熱が出ない場合も

38度以上の発熱、寒気、全身の関節痛や筋肉痛など、普通の風邪よりも重い症状が多く見られ、気管支炎や肺炎、中耳炎、脳炎・脳症などの合併症を起こすこともあるため注意が必要です。ただし、必ずしも高熱が出るとは限らず、鼻水や咳といった風邪のような症状だけの場合や、腹痛・おう吐・下痢といった胃腸の症状が中心となる場合もあります。

けいれん・意識障害には 注意が必要

発症する確率は高くありませんが、けいれんが止まらない(1日に何度もくり返す)、意識状態が悪い(意識がない、おかしな言動が見られる)、吐き続けるといった場合は、インフルエンザ脳症の疑いがあるのですぐに受診を。はじめは熱や咳だけでも急にけいれんを起こす場合もあるので、体調に変化がないかを注意深く見守るようにしましょう。

■インフルエンザの予防接種で気をつけることは?

子どもは2回接種なので 早めに予定を組む

子どもは1回の接種では免疫がつきにくいので、3~4週間程度の間隔をあけて2回接種を。昨年接種していても、今年はまた新たに接種する必要があります。風邪のひき始めなど、体調が悪いときは接種を延期することもあるため、遅くとも12月上旬までには2回目の接種を終えられるように予定を組みましょう。重度の卵アレルギーの場合は医師に相談を。

パパ・ママ・祖父母も 家族全員で接種を

予防接種をしていてもインフルエンザにかかることはありますが、かかった場合でも症状が軽く済んだり、脳症などを起こすリスクを減らしたりする効果が期待できます。大人が家の中にウイルスを持ち込むのを防ぐため、祖父母など子どもの世話をお願いする人も含め、本格的な流行が始まる前に家族全員で接種を。大人は基本的に1回の接種でも効果が見込めます。

■インフルエンザにかかってしまったら、治療は?

抗ウイルス薬は 発症48時間以内に

発症してすぐのタイミングで受診すると、インフルエンザの検査結果が陰性になり、翌日また受診しなければならなくなることも。熱があってもけいれんを起こしておらず、意識がはっきりしているのであれば、家で半日くらい様子を見てから(夜間なら翌日に)受診するのがよいでしょう。  抗ウイルス薬のタミフルは、発症から48時間以内に飲み始めれば発熱期間を短くする効果が期待できます(抗ウイルス薬には吸入薬のリレンザやイナビルもありますが、いずれも1~3歳児には適しません)。タミフルは飲まずに、症状をやわらげる薬や漢方薬のみを用いるという選択肢もあるため、気になることがあれば医師に相談を。

解熱後3日間は登園、外出を控えて

インフルエンザにかかったら、発症した日を0日と数え、5日を経過し、かつ解熱後3日を過ぎるまでは保育園・幼稚園は出席停止となります。熱が下がってもしばらくはウイルスが体内に残っていて、ほかの人にうつしてしまうおそれがあるため、この期間は外出を控えて。きょうだいとのコップや食器の共用も避けましょう。

インフルエンザにかかったときのホームケア

こまめな水分補給を

水分補給は30分~1時間ごとを目安に。寝ている場合は起きたときに飲ませれば大丈夫です。食事がとれないときは塩分を含む経口補水液や子ども用イオン飲料が望ましいですが、基本的にはお茶やジュースなど本人が飲みたがるものでかまいません。

高熱で暑がるときは  薄着に

熱の出始めで寒がっているときは布団をかけてもよいですが、熱が上がって暑がるようであれば薄着に。熱を下げるには、太い血管が通っている首・脇の下 ・もものつけ根を冷たいタオルなどで冷やすのが効果的です。熱が高くて元気がないときは入浴を控え、濡れタオルで体をふいてあげるとよいでしょう。

同じ部屋で過ごし様子を見守る

おうちの方がそばにいて、夜も同じ部屋で寝るようにすれば、子どもの具合が急に悪くなったときもすぐに気づくことができます。子どもはなるべくひとりきりにせず、家事などで一時的にそばを離れる場合もこまめに様子を見に行きましょう。

こんなときは急いで病院へ

けいれんが止まらない、1日に何度もくり返す ・意識がない、おかしな言動が見られる ・顔色が悪くてぐったりしている ・何度も吐き続ける

 

Q&A 小児科の先生に ココが聞きたい!

Q、夜中に急に39度の発熱。救急に行くべき?

A、熱が出たときは、熱のほかにどのような症状があるかをよく観察することが大切です。高熱でも水分がとれて意識もはっきりしていれば、救急には行かずに、翌日にかかりつけ医で受診すれば問題ありません。ただし、発熱に加えて、けいれんや意識障害が見られる、吐き続ける、顔色が悪くてぐったりしている場合は、夜間でもすぐに受診を。

Q、解熱剤を使うときの 注意点は?

A、ベビブ世代は症状をうまく伝えられない場合が多いので、薬の選択は慎重にして、その時処方されたものを、医師の指示に従って服用しましょう。一般的には体温が38・5度以上でぐったりしている場合に解熱剤を使用する、と指示する医師が多いです。過去に処方された薬は品質が変わっている可能性があるため、飲ませないようにしましょう。

Q、食事はどんなものを 食べさせればいい?

A、基本的には本人の食べたがるもので大丈夫ですが、下痢の場合は冷たいものや消化の悪いものは控えて。うどんは丸飲みすると消化に悪いので、細かく切って与えましょう。食後に飲む薬でも、食事がとれないときは薬だけを飲ませてかまいません。

Q、粉薬を飲むのを 嫌がるので困ります……

A、子どもの好きなジュースや甘いもの、味の濃い食べものに混ぜると飲みやすくなることが多いようです。ただし、子どもが主食を嫌いにならないよう、おかゆやうどんに混ぜるのは避けたほうがよいでしょう。薬局などで売られている服薬用のゼリーを使うと、飲みやすくなることも。うまく飲めたら、ほめてあげることを忘れずに。

Q、家族にうつらないように するためにできることは?

A、いつもは同じ部屋で寝ているきょうだいがいる場合は、寝室を別々に。看病をする人はマスクをして手洗い・うがいを徹底することが大切です。インフルエンザは高齢の人がかかると重症化しやすいので、祖父母(特に持病がある場合)に子どもの世話を頼むことはできるだけ避けましょう。

救急で受診すべきか 迷ったときは……

•小児救急電話相談#8000

夜間や休日に、小児科医や看護師に症状に応じた対処法を相談できます(受付時間は都道府県ごとに異なるため、事前に厚生労働省のホームペ ージなどで確認を)。

•こどもの救急ホームページ  http://kodomo-qq.jp/

症状を選択すると、「救急車で病院に行く」「おうちで様子をみましょう」といった対処法が表示されます。

 

秋から冬にかけて注意する病気

RSウイルス感染症

軽い咳や鼻水といった症状から始まりますが、中には次第に咳がひどくなって息苦しくなる場合もあります。細気管支炎などを起こす場合もあり、重症になると入院が必要なことも。ウイルスに対する特効薬はないため、症状をやわらげる治療が中心となります。一度受診したあとも、ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸の音が強くて苦しそうなときは、早めに再受診を。

ウイルス性胃腸炎

ノロウイルスやロタウイルスなどが原因で、おう吐に続いて水のような下痢が起こり、熱が出ることも。おう吐は1~2日、下痢は1週間ほど続くケースが多く見られます。吐き気が少しあっても、吐いていないときには少量ずつ経口補水液で水分補給を。おしっこの量が減る、目がくぼんで唇が乾く、おなかの皮膚に張りがないといった脱水症状があれば早めに病院へ。

クループ症候群

のどの奥(声帯のあたり)が腫れ、「ケンケン」という犬の鳴き声に似た咳が出ます。声がかすれたり、出にくくなったりすることも。多くはウイルス性のものですが、細菌性の場合は重症化しやすいので、咳が続くときは早めに受診を。夜になると咳がひどくなることが多いので、呼吸が苦しそうになったらすぐに受診できるよう注意深く見守ることが大切です。

溶連菌感染症

のどの痛み、発熱、発疹、舌がイチゴのように赤くなるといった症状が見られます。検査で溶連菌感染症だとわかれば、リウマチ熱などの合併を防ぐために抗菌薬(抗生物質)を10日間ほど飲む必要があります。抗菌薬を飲み始めて24時間以上たてば登園は可能。咳やくしゃみなどの飛沫感染で大人にもうつることがあるため、看病するときはマスクの着用を。

咳が出るときの ホームケア

室内を湿度50~60%くらいに加湿し、こまめに水分を飲ませましょう。飲みものは冷たいものよりは常温の方が望ましいですが、本人が飲みたがるものでかまいません。食事が飲み込みにくいようであれば、のどごしのよいものを与えます。横になると咳がひどくなるときは、縦むきに抱っこするか、頭と背中の下に枕やクッションなどを入れて上体を高くするとよいでしょう。咳がひどいときの様子を動画で撮影しておくと、診断の手がかりになります。

こんなときは急いで病院へ

  • 咳がひどくて横になれない
  • ゼーゼー、ヒューヒューといった音がする
  • 呼吸が苦しそう
  • 顔色が悪くてぐったりしている

おう吐・下痢の ときのホームケア

脱水を防ぐため、塩分と糖分を含む経口補水液で水分補給を。吐いた直後に飲ませても吐いてしまうので、吐き気が少しおさまってからスプーン1杯程度を飲ませ、吐かなければ少しずつ量を増やします。食事は消化のよいものを与え、生もの、油っこいもの、糖分の多いもの、乳製品は控えて。おう吐物や便はマスク・手袋を着用して処理し、吐いた場所は塩素系漂白剤で消毒を。胃腸炎のウイルスにアルコール消毒は効かないので、石けんで手を洗いましょう。

こんなときは急いで病院へ

  • 血が混じったものや、黄色・緑色の液を吐く
  • 水分をまったく受け付けない
  • おう吐や下痢が続き、おしっこが出ない
  • 血が混じった便が出る

 

 

 

お話をうかがったのは中井千晶先生
東京都の千晶こどもクリニック院長。小児科専門医として20年以上のキャリアをもち、救急医療の経験も。専門は感染症とアレルギー。

 

イラスト/はったあい

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