『小学一年生』2016年6月号ふろく「妖怪ウォッチ ジェットびひこうき」はみなさま、もう楽しんでくれましたか?
ビューンと飛ぶ爽快なこのふろくは、何度でも飛ばしたくなりますよね。お子さんはもちろん、大人も楽しめるモノになっているのではないでしょうか。
実はこのふろく。
飛行機のプロの手によって生まれているんです!
ジェットびひこうきの設計者は、この方です!
◆航空科学博物館の今野さんに、設計について聞いてみました!
成田空港のすぐ近く、飛行機の模型や実際のエンジンなどを数多く展示している博物館。
そこでお仕事をなさっている今野さんは、飛行機の制御工学が専門。さらにあの人力飛行機の競技会『鳥人間コンテスト』でも、伝説に残る大きな記録を打ち立てた機体を設計したという、まさに飛行機のプロの方です。
その方に今回はお話を伺いましたので、紹介いたします。
ー今回のふろくを設計してください、と編集部から話しがあったときは、どんな気持ちでしたか?
今野さん:率直にいうと、なかなか無茶なお話だなと思いましたね(笑)時間が限られていたので。
ーすみません…!実際にはどれくらいの時間がかかったんですか?
今野さん:2週間くらいでしょうか。仕事が終わって、試行錯誤を繰り返しながらやっていました。今回は計算して設計とかはせずに、とにかく試作機を作って飛ばして、の繰り返しでした。
↑試作機のほんの一部! こうして並べてみるとおもしろいですね!
ー完成までに色々な形を経ているんですね!設計の難しいところはどこでしたか?
今野さん:そうですね。バランスを取るのが大変でした。エアポンの力に比べて紙が重めで、重心の位置がむずかしかったです。とにかく試行錯誤して生まれました。
ー一番苦労されたのも、そのバランスですか?
今野さん:すべてはバランスにつきます。実際の飛行機でもディスパッチャー(運航管理)という専門の職の人が重量を管理しているくらい、大事です。
飛行機のバランスがよくなるように荷物の積み方とかも決めたりします。
↑そうしてできあがったのがこの設計図!
ー設計図を起こして、最終的にデザインが入って、完成した気持ちを教えて下さい。
今野さん:おもしろいなって思って。これが世の中に出回るのかと思うと、いいですね。デザインも可愛いです。
『鳥人間コンテスト』について伺ってみました。
『鳥人間コンテスト』は、製作した人力飛行機を飛ばして、飛距離を競う伝統的な競技会。年に1回、琵琶湖で行われ、日本テレビ系でテレビ放送もされているイベントです。
ー昔から飛行機が好きでしたか?
今野さん:そうですね。なので大学も飛行機に関係のある航空宇宙工学科を選びました。
幼い頃から飛行機に憧れていましたし、テレビで『鳥人間コンテスト』を見ていてやってみたいと思っていました。なので、大学でも『鳥人間コンテスト』で飛行機を飛ばす活動をしているサークル「航空研究会」に入りました。サークルでは、飛行機の設計を担当していました。
これが2003年の『鳥人間コンテスト』に出場した、自分が設計した機体です。機体の軽さと強度、全体のバランスが命で…。何回も飛ばしてはやり直して、というとてもシビアな設計が要求されました。
そうやって生まれた機体が、34キロの距離を飛んで、優勝しました。34キロというのは、当時の飛べるエリアの端から端なんです。
まだ飛べると思ってエリアの先まで飛ぼうとしたのですが、それはルール違反になってしまうので、しかたなく着水したぐらい。
ものすごくよく飛んで…。本当に嬉しかったです。
なんと今野さんは記録保持者でした! この記録以降、大会規定が変更になり、折り返し飛行も認められるようになりましたが、当時としては34キロは限界値=最長記録だったんです。
ー最後に、ジェットびひこうきを手に取った小学一年生のみんなに、メッセージをお願いいたします。
今野さん:ぜひ壊れるまで遊んでほしいですね!調整は難しいですが、ビューンって飛べば楽しいです。飛行機っていいなと思ってもらえればいいですね。
↑今野さんが「ジェットび ひこうき」作り方のコツをていねいに解説!
今野さん、多大なご協力、ありがとうございました!
今野さんがいらっしゃる航空科学博物館は、飛行機の模型や展示物など、数多く展示しています。ぜひご家族で、足をお運びください。
(ライター 斉藤裕貴)