毎日は自由研究!「デイリーポータルZ」×『小学一年生』編集長・対談

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渡辺
「子どもが出したアイデアを“それ、おもしろいね!”と親が盛り上げられるといいですよね」
「その役は、僕たち編集者の大事な仕事です」(笑)
僕らにとっては、自由研究って楽しくやっていることなんですけど、親御さんたちはどんな部分を「面倒だ」とか「わからない」などと感じるんでしょうね。
渡辺
自由研究って、苦手意識を持っている親が多いですよ。「自由」という言葉に戸惑ってしまうのでしょうね。「なんでもいいですよ、自由ですよ」と言われてしまうと、かえって何をしていいのかわからなくなっちゃう。それなのに、子どもが出した案に対しては親が「それは、ちょっと……」って言っちゃったりしてね。

自由だから、何でもありなのに、そこでブレーキをかけちゃうのはやめてほしいなと思いますね。

その気になれば、なんでもおもしろがれますよね。バカバカしいこと、普段見過ごしてしまいがちなことについて、まじめに検証することほど楽しいことはないなって思います。
渡辺
それそれ! それも大事ですよね。自由研究で親御さんにお願いしたいのは、子どもに「そんなの自由研究には向かないよ」って絶対に言わないで欲しいということ。

子どもがせっかく思いついたのに、親にそう言われちゃうと、なんだか身もふたもないですよね。子ども自身がおもしろいと思ったことや、疑問に思ったことをやるのが一番いいと思うんです。

だから、そこは「よし、一緒にやってみよう!」と言ってほしい。そこで、「ええ!? それは無理だよ」なんて言われちゃうと、子どもはもう何も出てこなくなっちゃいますよ。

そのつもりで見ると、世の中には疑問だらけですよ(笑)。普段の生活レベルでもたくさん転がっている。
渡辺
そういったものを探すのは、大人より子どものほうが長けているのかもしれませんね。だからこそ、「え、ちょっと、これどうなるの? おもしろいじゃない!?」と子どもの話に食いついてみると、またいろいろと出てくるんです。「こんなのもどうかな?」ってね。
デイリーポータルZの企画会議だと、編集者がその役をやっていますね。みんなが「それおもしろいね!」と盛り上がり、「よし、じゃあやってみようか!」ってね(笑)
渡辺
わが家では、まさにそのやり取りが繰り返されていますよ(笑)。僕には子どもが3人いまして、子どもたちの自由研究を見るのは僕の役目なんです。

「これどうかな?」「ここはどうやってまとめたらいい?」と子どもが相談してくるのに対して、「すごくいいね! ここをこうしたらもっと見やすいんじゃないかな」とか、「こんなのもどうかな?」といったやり取りを繰り返しています。会社で編集部員相手にラフチェックしているのと変わらないな、なんて思うことがあります(笑)。

たしかに編集長と編集部員とのやりとりに近いですね! ますます編集作業と自由研究には通じるものがあるって思えてきますね?
渡辺
そうですね。やったことをまとめるのが自由研究で、編集作業と似ていますね。

誤解されがちなのは、実験したり観察したりすることが自由研究だと思ってしまうこと。実験や観察自体は自由研究とイコールではないんですよね。

実験し終えたところで、「ああ終わった」と思っちゃうんですけど、じつは出発地点に過ぎない。どうまとめるか、不要な要素は捨てて、残ったものをどんなふうに並べて、どんなふうに見せようか、というところが大きなポイントになると思います。

編集作業も、取材や撮影を終えたところが出発地点ですよね。そこからきちんと整理して、おもしろいところだけストーリーが見えるようにするのが肝ですから。

僕たちがデイリーポータルZでやっている企画は、世の中の役に立つようなことではないし、ただ「なるほど!」とか、「おもしろいな」と思ってもらえればいいと思っている。

だから、ライターさんには「過程はわかりやすく簡潔にしてください」とお願いしています。最初に仮説を立てて、どういう検証方法にするかを決めて、「では始めます」みたいなね。

渡辺
調べたいテーマについて、まずは「こうなるんじゃないか?」と仮説を立てて、どうやって調べるかを決めて検証する。自由研究もその一連の流れをいかにわかりやすくまとめるかが肝心なんです。
具体的に言えば、パッとみて何をしているのかがすぐにわかるような写真や絵がいいですよね。あとはタイトル文字をできるだけ大きくすること。読んだ人を「えっ!? 何なに?」とひきつけることができれば大成功。
渡辺
それはどんな物事でも共通するまとめ方の基本といえるかも。自由研究は、まとめ方の練習だったってことがこれではっきりとしましたね!

 

「ボクたちみたいな大人がいるということで気が楽になってもらえれば……」
渡辺
「いろいろなことでおもしろがれる人の人生はきっと豊かですよね」
渡辺
自由研究についていろいろといろいろとお話させてもらいましたけど、「自由研究」=「デイリーポータルZ」=『小学一年生』となる共通点がたくさん見えてきて楽しかったです。
いやぁ、僕たちみたいな大人がいるということで、『小学一年生』読者の親御さん、お子さんも気が楽になってもらえるといいかなって思います(笑)
渡辺
自由研究は、大人になってもずっと続くんだよってことですよね。
そうですね。たまにサイトの過去記事を振り返ったりすると、楽しい人生だったなぁと思います(笑) 
渡辺
いろいろなことでおもしろがれる人の人生はきっと豊かですよね。いっぱい楽しいことがあるということじゃないですか。そして、そのなかには失敗もあったっていいんだよ、と。

子どもに失敗させたくないという親の思いが「これ、むりなんじゃない」「やめたほうがいいよ」と先回りして言ってしまうこともある。でも、失敗してもいいんです。どうして失敗したかをまとめれば立派な自由研究ですよね。

もちろんです! まぁ、実際にデイリーポータルZのサイトを見ると、結構失敗もしていますからね(笑)。ただ、うちの場合は、1日3本発信していかなければいけないので、失敗してもそのまま載せざるをえないという事情もありますけど(笑) 

でも、失敗は失敗で意義はあるのかなと思っています。たぶん、読んだ人は同じことをやってみようとは思わないでしょうからね。

渡辺
そうですね! 失敗って、本人も周りの人もおもしろがらせることができる。何より、失敗してもいいから、子どもたちにも親御さんにも自由研究を楽しんでもらいたいですね!

 

対談から見えてきた自由研究制作ポイントのまとめ

  • 生活すべてが自由研究。生活のなかで疑問に思ったことを検証する。それを軸にすれば、おもしろい自由研究になる。
  • それを大人になってもやっている人がいる。これは、子どもにとっては励みになる……かも?
  • 自由研究は社会人になって役立つプレゼン力を培うことにつながるはず。
  • 失敗してもいい。失敗にも意義があるし、失敗の過程をまとめれば自由研究になる。

■「デイリーポータルZ」編集長・林雄司さんのコラムはこちら!

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