ペットを超えた家族の絆を描いた、奇跡の物語!
【あらすじ】
主人公のももちゃんは、幼い頃に子ねこのみゅうを拾います。
ももちゃんにとって、ねこのみゅうは、友達であり、大切な家族。
みゅうと遊び、時にけんかして、多くの時間を一緒に過ごしていきます。
しかし、みゅうはももちゃんより、ずっと早く年老いてしまいます……。
ISBN:9784097251149
定価:1,540円(税込)
【絵本作家インタビュー】今林由佳さん
『ももちゃんのねこ』は、短編アニメ-ションが先に作られ、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で観客賞を受賞したほか、数々の国際映画祭で公式上映されてきた作品です。そのアニメをもとに新たな物語を紡いで創作されたのが絵本版です。
アニメ版と絵本版、両方の作画を手がけたのが、アニメーション監督で絵本画家の今林由佳さん。今回、絵本版の発売にあたって、この作品に込めた思いをお聞きしました。
アニメーション監督、絵本画家 今林由佳さん
アニメーションと絵本『ももちゃんのねこ』の全作画を担当しました。
東京藝術⼤学美術学部絵画科油画専攻卒業。同⼤学院映像研究科に進み、アニメーション作家として学生時代からコンペで入賞するなど活躍。2017年にSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で観客賞、同年、キネコ国際映画祭で日本作品賞ノミネート。2018年にキネコ国際映画祭でNHK制作の「貴女へ~ヒバクシャからの手紙」でキネコ国際映画祭日本作品賞グランプリ受賞。絵本に『どうぶつぱっかーん』シリーズ、『うれしいひのいただきまあす』(原作:わだことみ先生)など。
絵本ならではの楽しみ方をしてほしいですね
「アニメーションだと観る画面のサイズで大きさや印象が変わりますし、さわれませんが、絵本の場合はまるで猫に『出会えた』ようなサイズ感ですし、実際に触れることもできます。絵本には絵本ならではの良さがあると思います。
デフォルメを控えリアル感を大切にし、さわりたくなるような絵柄にしたくて、猫の毛1本1本も丁寧に描きました。柔らかい色合いなのは、ぬくもりを感じられるものにしたかったからです。悲しくて苦しい場面でも、どこか包まれているような感覚を持てるように心がけて色を使いました」
絵本より。主人公のももちゃんが小さな猫を見つけた場面。
草花の1本1本、雨のひとすじまで丁寧に描かれ、物語の世界を身近に感じることができます。
絵本の中のお気に入り場面は
「お話の最後に出てくる、ももちゃんとみゅうが抱き合う場面が好きです。愛しくて大好きなもの抱きしめる安堵の気持ちだけではなく、切なさのある微笑みを描けたかな、と思っています。
愛しさの中の切なさ……時は常に流れていること、命は永遠じゃないことに目をやると、どうしようもない切なさがあふれます。
この場面は、切なさを根底に抱きながら、みゅうへの愛にあふれているので、この絵を見ると私も、恐れを伴う切なさから、慈しむ方へ解放されるような気持ちにな るんです」
ももちゃんがみゅうをやさしく抱きしめるシーンは、お話の中に何度か登場します。
こんな方に絵本を読んでもらいたいですね
「お話の原作者である、わだことみ先生は「猫ちゃんを飼ったことのない方も、これから飼われる方も、今飼っている方も、過去に飼われていた方も……皆さんに読んでいただきたい」とおっしゃっていました。
動物と人間は命に隔たりがなく家族になれることを、この絵本の制作を通して教えていただけたので、私のようにまだペットを飼ったことがない方にもぜひ読んでいただきたいです。そして、動物に限らず「命」のお話なので、広くいろんな方に読んでいただけたらと思います。
人の人生の20〜 30年間がこの1冊にぎゅっと詰まっているので、追体験を楽しんでいただければいいなと思っています。
アニメ版をご覧になられた方から『2歳の子が泣いていました。死についてわかるようです』という声や、『親子で初めて一緒に泣きました。親の悲しそうな気持ちを子どもも察知しているのだと思います』という声をいただきました。
誰かを愛すること、思い出を共有すること、失うことの感情は小さなお子さんにも伝わるのだなぁと私たちも教えていただきました。
切ないラストシーンについて、わだ先生についてお聞きしたんです。すると、
『死は無ではないと思います。残っている思い=宝がある。だからずっと心は、絆はつながっている』ということを教えてくださいました。
たとえば、ペットを失った悲しみ『ペットロス』がやってきても、その絆のつながりの温かさのおかけで前を向いていくことができます。そのような意味で、この本を必要としている方にも手に取っていただけたらと思っています」
アニメーション版も楽しめます!
『ももちゃんのねこ』特設サイト(https://momochan.sho.jp)では、アニメーション全編を公開中! 絵本とアニメは少し違う物語になっているので、どちらも楽しんで、ぜひ『ももちゃんのねこ』の世界に深く入り込んでみてください。
撮影/岡本明洋