絵本『すうちゃんはね』著者インタビュー・【10年後のすうちゃんはね】

定価 1540円(10%税込)
発売日 2024/04/17
菊12取36ページ

子どもの本音を受けとめ、抱きしめる絵本

【あらすじ】

ある朝のこと。幼稚園に通うすうちゃんが、門の前で泣いています。
すうちゃんが、園に行きたくないのは、なぜかというと・・・・・・。
子どもの登園しぶりや、突然のかんしゃく。そのきっかけは思いもよらぬところにあるもの。どんなことが嫌なのか、不安になるのか、どうすると心がラクになるのか、すうちゃんの本音とは?
繊細で感受性の強いすうちゃんの心情を丁寧にすくいながら、小さな成長を見守っていく絵本です。

【絵本作家インタビュー・ほんだあきこさん】 

繊細で感受性の強い子の子育てあるあるが満載

本作は、文章を手がけたほんだあきこさんが、繊細気質のお子さんを育てた体験を元に創作した絵本です。ほんださんに本作の制作秘話をおうかがいしました。

 

絵本『すうちゃんはね』は、幼稚園になじめない女の子すうちゃんが主人公です。

この絵本は私の実体験をもとに作らせていただきました。

うちの娘は入園から間もなくして、幼稚園のことを「うるさい」「こわい」「ちかい」「くさい」などと言い、嫌がるようになりました。

私が「何が?どうして?」と聞いても、娘はまだ自分の気持ちをうまく言語化できなかったので「いやなの」としか言ってくれませんでした。この時、私は「この子は新しい環境に馴染めないから不安を口にしている」と思っていたのですが、それは誤解でした。

娘は、幼稚園年中に上がる頃から言語表現力がついてきて、自分の気持ちをどんどん話してくれるようになりました。

「うるさい」と言っていたのは、いろんな音が混ざり合う騒がしい場所に居るのが嫌だということ、

「こわい」と言っていたのは、突然の出来事でどきっとするのが嫌だということ、

「ちかい」は、人との距離が近いと落ち着かなくて嫌だということ、

「くさい」は、お弁当と服の匂いが混ざった部屋にいると気持ちが悪くて嫌だということでした。
そして他にも、友だちに触られた時の触感がベタベタして気になること、困っていたり悲しんでいる人がいたら、自分も同じような気持ちになってしまうことを話してくれました。

娘は感覚が鋭敏だから気になることや不快なことが沢山あったのです。

すぅちゃんはね

私が娘の気質をもっと早くから理解できていれば、娘は安心して過ごせたと思いますし、私ももっと穏やかに見守ることができたのではないかと思います。

この絵本が、感覚に特性を持つ子どものことやHSC(Highly Sensitive Child)のことを知っていただくきっかけになれば幸いです。

 

ある朝、幼稚園の門の前で泣いている子がいる、というシーンから始まります。

嫌がる娘を無理に連れて行ってよいのか、私は日々悩んでいました。けれども「幼稚園は自立心や協調性を育む場所」なので通わせた方が良いと聞いていましたから、娘をなだめつつ、だましだまし登園を続けさせました。

その結果、娘は、だんだんと感情が荒れるようになって、私をたたいたり、かんしゃくを起こすようになりました。

絵本にはそんなある日の出来事を書いていますが、もうこれ以上、無理をさせてはいけないと感じた時から「行きたくない日は行かなくていいよ」と娘に話しました。

登園するかしないかを娘に決めてもらうようにしてからは、ひどく荒れることはなくなりましたし、自分で決めて登園した日は泣かなくなりました。
子どもの気持ちに任せたことは、とても良かったと思っています。

 

感受性の強い娘。幼稚園時代に好きだったことは・・・。 

うちの娘は自然豊かな場所が大好きで、そこで捉えた心地よい音や香りにいちいち感動する子どもでした。

葉擦れ音や水音を聞き入ったり、草花の香りにうっとりしたり、花びらや種の触感を熱心に確かめたり、川石を拾って愛でたり。虫や動物の気配にはいち早く気づいて教えてくれました。

娘の感覚の鋭さや感受性の豊かさにはいつも驚かされました。HSCの素敵な一面だと思います。

 

絵本の後半で、すうちゃんの思わぬひと言に、ママがすうちゃんを抱きしめるシーンがあります。

娘は感受性が強く、私のことをよく見ている子どもでしたから、私がイライラしたり悲しい気持ちの時は、すぐにそれを感じとっていたと思います。絵本の中の娘の一言は、私が不安にさせてしまったから出てきた言葉です。そんなことを言わせてしまった私は、娘に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

子どもの前で常に笑顔でいることはなかなか難しくて、気持ちや時間に余裕がないときはこわい顔になってしまいます。ですから私は自分の気持ちをなるべく言葉で伝えるようにしました。「今、楽しい」とか「嬉しい」とか「今、疲れている」とか「悲しい」とか。「大好き」は、毎日伝えるようになりました。娘にも「自分の気持ちや考えていることを言葉にして伝えてね」とお願いしていました。

 

すうちゃんの少しずつの成長を見守って。あれから10年、今のすうちゃんは・・・・・・

今の娘は、友だちや友だちの親御さまからコミュ力が高いと言っていただくことがありますが、それは娘が相手の感情に敏感で、気付く力があるからかもしれません。また、相手の話を自分ごととして聞く姿勢があるように思います。娘の感覚の鋭敏さが良い方へ働いてくれている部分かなと感じます。文章を書くこともわりに得意で、HSC特有の感受性の豊かさによるものかもしれません。

生活面での不快感は幼い頃からあまり変わっていないように思います。娘は今、中学生ですが、例えば、教室でのテストの時、みんなが一斉に紙に書き始める音が大きく聞こえて集中しづらいそうです。また、小学校の時と違って教室に緊張感が漂っていて余計に緊張するそうです。

そんな娘ですが、今では、友だちとわいわいおしゃべりすることが大好きになりましたし、騒がしくて嫌がっていた繁華街へも出かけるようにもなりました。いろんな刺激で疲れた時は景色を眺めに行っています。特に夕日を見るのがいいそうです。今は自分自身のことをよく分かっているので、気質と上手く向き合いながら、わりとのびのびと過ごせているような気がします。

 

――― ありがとうございました。

本作には、子ども達がどこかで少しずつ経験している集団生活での不安感や適応のしづらさなどの感情が描かれています。最後は温かい気持ちで本を閉じることができる絵本ですので、親子で読みながら気持ちを伝え合うコミュニケーションツールとしてもおすすめです。

【著者プロフィール】

文・ほんだあきこ

京都芸術短期大学(現・京都芸術大学)造形芸術学科映像専攻卒業。在京テレビ局の番組制作に携わる。ディレクターとして主に報道番組のドキュメンタリー取材を担当。出産を機に離職。HSC(Highly Sensitive Child)気質をもつ娘を育てる母。本作は、自身の子育て経験を元に創作した初の絵本。

絵・千葉智江

横浜国立大学教育人間科学部学校教育課程美術専攻卒業。子どもの本専門店・メリーゴーランド主催の「絵本塾」、絵本ワークショップ「あとさき塾」に参加。第16回ピンポイント絵本コンペ入選。第22回おひさま大賞優秀賞受賞。著書に『はなちゃん おとなになります』(小学館)、『みずうみ』(大日本図書)などがある。

【イベントのご案内】

千葉智江個展『あの子の見ている世界』

絵本『すうちゃんはね』の原画と描き下ろし作品を展示します。

日時:2024.6.3(月)~8(土) 12:00~19:00 (初日14:00~/最終日~17:00)

場所:東京・表参道 Pinpoint Gallery

*6月7日18:00より、絵本『すうちゃんはね』著者お二人の絵本トークとサイン会も開催予定。(参加無料)

 

作者 文/ほんだあきこ 絵/千葉智江
定価 本体 1400 円+税
ページ数 36ページ
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