『いっぴきおおかみとおほしさま』

定価 1870円(10%税込)
発売日 2023.2.20
A4変形32ページ

星のまたたく夜の癒やしのファンタジー

【あらすじ】

ひとりで自由気ままに暮らしているいっぴきおおかみが、ある夜、うさぎ座のしっぽで輝くお星さまに出会います。

いつも同じ場所で輝いていることに少しつかれたお星さまは、自由ないっぴきおおかみに憧れていると語りかけます。一方、おおかみは、時々からっぽみたいな気持ちになることを打ち明けます。

そこで、ある名案を思いつき、両者はひとときを一緒に過ごすことにしますが…。

優しいおおかみと、無邪気で明るいお星さまの、おたがいを思いやる友情と安息に満ちた癒やしの絵本。

星のまたたく夜の光と闇を、まつむらまいこが美しく繊細な筆致で描き出します。

【絵本作家インタビュー】まつむらまいこさん

息を飲むほど美しい、まつむらまいこさんの絵本。うっとりといつまでも眺めていたくなります。原画制作のマル秘エピソードや、物語のつくりかたなどについて、インタビューしました。

まつむらまいこ・プロフィール

画家、絵本作家。1985年奈良県生まれ。京都精華大学でヴィジュアルデザインを専攻。
2009年ボローニャ国際絵本原画展入選。
出版物に、愛蔵版『絵のない絵本』挿絵(ハンス・クリスチャン・アンデルセン/作、大畑末吉/訳、岩波書店)、『あなたはせかいのこども』(ほるぷ出版)、『わたしはしらない』(えほんやるすばんばんするかいしゃ)など、私家版の絵本に『まどのむこうには』、『わたしのたからばこ』、『はじまるはじまり』などがある。

Q1. 絵本『いっぴきおおかみとおほしさま』を描くことになったきっかけや、アイディアがどのように生まれたかを、教えてください。

絵本のアイデアを考えはじめた当初は、実はおおかみは出てきていませんでした。はじめは「夜と光」をテーマにお話を考えていたんです。お話を膨らませていく中で、光を食べてしまう孤独な悪役として、おおかみが登場しました。

まさかそのおおかみが 主人公になってしまうなんて、自分でも意外でした。お話を考えていくうちに、だんだんとおおかみに感情移入していっていることに気がついて、知らぬ間におおかみが主人公になりました。孤独だけれど楽しそうで、優しいおおかみです。

Q2. 一方で、おほしさまのほうは、元気で明るくて無邪気なキャラクターですね。重ね合わせたイメージはありますか? 

おほしさまの具体的なモデルがあるわけではないのですが、おおかみの真逆の存在だと思いながら書いていました。おほしさまはいつもたくさんの仲間に囲まれていて、キラキラ輝いていて、でもときどきひとりになりたくなる。

いつも一人ぼっちだけれど、ときどき寂しくなってしまうおおかみと正反対です。存在としても、光そのものであるおほしさまと、真っ黒い夜の闇みたいなおおかみでは対照的です。

ただ自分自身に置き換えた時、おほしさまとしての自分と、おおかみとしての自分、どちらも持ち合わせているような気がしていています。表裏一体というか、「自分の中にある二面性が二つのキャラクターになったのでは?」と後から振り返ってみて思いました。

Q3. 完成させるまでに苦労したところ、大変だったところはありましたか?

なんといってもおおかみを描くことに苦労しました。私は今まで動物を主人公にしたお話を作ったことがなくて、おおかみを描くのも初挑戦でした。

おおかみの写真集や絵本をたくさん見て、多摩動物公園に本物のおおかみも見に行きました。とにかく毎日毎日たくさんスケッチしているうちに、おおかみの魅力や可愛らしさにすっかり惹かれていきました。

そうしてラフスケッチを描き続けていると、ある日無口な夫が「おっ、そのおおかみいいね」とぼそりと呟きました。その時はとても嬉しかったです。

たくさんのスケッチ。残っていないものもいっぱいあります。

Q4. 息をのむほどに繊細で美しい原画。透明感や発光感、温かみや優しさを感じさせる絵は、どんな道具を使って、どんな風に描いていらっしゃるのでしょうか?

原画は基本的には水彩絵具を、白い部分だけアクリルガッシュの白を使っています。また今回はおおかみの黒い毛並みも黒のアクリルガッシュを使いました。より黒を際立たせたかったからです。

特別な道具は特に使っておらず、細い線は画材屋さんで売っている2番目くらいの細さの筆で描いています。無意識に呼吸を止めてしまっているようなので、ときどき大きく深呼吸するなどして、気をつけなくてはいけないです。

Q5. 作画に入るときのルーティーンや、 絵を発光させるためのコツなどはありますか? また、まつむらさんは白の使い方がとても特徴的だと思います。白をうまくいかすための秘訣を教えてください。

作画に入る時のルーティーンは、コーヒーを淹れることでしょうか。本書きの絵を描く時は、やはり心がざわざわしていると始められないので、コーヒーを淹れたり、水張りをしたり、机を整えたりするなど、心を静かにすることをしてから描き始めます。

もし私の絵が発光しているように見えているとしたら、とても嬉しいです。白で絵を描く時は、光で絵を描くつもりでいます。例えば、黒い鉛筆で白い紙にデッサンをする時は、基本的には物の影の部分を描くことになります。

ですが白い絵の具で濃い色の面に絵を描く時は、光の部分を描きます。光を描いている、というつもりで描いていると、自ずと発光しているように見えるのかもしれません。

Q6. 絵本に込めた想いや、こんな絵本にしたいなと、こだわった点を教えてください。

主人公である「いっぴきおおかみ」は、ひとりでいるのも平気だし、毎日とても楽しそう。私自身もひとりで絵を描いたり、本を読んだり、本屋さんを巡ったりするのが好きで、おおかみみたいにひとりでも平気なんです。

でもやっぱり、毎日一緒にいる訳じゃなくても、どこかに大切なひとや友だちがいることが、心を温めてくれる時があります。
特にコロナ禍の中で、会いたい人に気軽に会えなかったり、孤独感を感じたりした時に、「会いたいなって思える人が、どこかにいるだけでもうれしい」と、ふと感じた気持ちが、このお話に繋がっていると思います。

お子さんはもちろん、大人の方も、遠くにいる大切な人へのプレゼントにも、是非お手にとっていただけるとうれしいです。

『いっぴきおおかみとおほしさま』原画展、開催決定!

発売を記念して、東京・大阪にて原画展を開催いたします(入場無料)。まつむらまいこさんの繊細で優しい筆致を、ぜひ間近でご堪能ください。

ウレシカ(東京・西荻窪) 

3月2日(木)~3月20日(月) 12:00-19:00 

*火・水はお休み

アートショップ&ギャラリー ART HOUSE(大阪・北堀江) 

4月7日(金)~4月18日(火) 11:00-18:00 ※初日・金曜日 19:00まで  火曜日・最終日17:00まで

*水、木はお休み

ブックハウスカフェ(東京・神保町) 

5月10日(水)~5月23日(火) 11:00-18:00

5月14日(日)著者来場 作画生公開!トーク&サイン会(チケット制*詳しくはブックハウスカフェへお問い合わせください)

作者 まつむらまいこ
定価 本体 1700 円+税
発売日 2023年2月20日
サイズ 216 x 293mm
ページ数 32ページ
ISBN 9784097252115
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