すべての一年生を応援します!【絵本作家インタビュー】中川ひろたかさん×北村裕花さん

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新入学を迎えるすべての一年生を見守り、応援する絵本『いけいけ! しょうがくいちねんせい』(大好評発売中!)。

中川ひろたかさん(文・メロディ譜面)と、北村裕花さん(絵)に創作の裏話を伺いました。

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ぴっかぴか絵本シリーズ
『いけいけ! しょうがくいちねんせい』
中川ひろたか・ぶん 北村裕花・え
小学館・刊

詳細は、こちらのページをご覧ください

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■勢いがあってポップ。北村さんの絵を見た時、一緒に本をつくりたいと思いました(中川)

 

――お2人での絵本づくりは、今回の『いけいけ!しょうがくいちねんせい』が2作目になりますね。

中川 そもそもは、僕が審査員をしている講談社絵本新人賞に、北村さんが『おにぎりにんじゃ』という作品を応募されたことがきっかけでした。絵を見た瞬間、「この人と絵本がつくりたい!」と思いました。そこで北村さんに絵を描いてもらおうと、受賞後すぐに、絵本のお話を書いたんです。

北村 それが絵本『かけっこ かけっこ』になりました。

実は絵本新人賞に応募したのはあの時が5回目ぐらいで、それまでずっと最終選考止まりだったんです。あの作品で佳作を受賞したうえに、中川さんに「一緒にやろう」と声をかけていただいて、もう本当に光栄でした。

中川 今回にしてもそうだけど、これほどのびのびした勢いとポップな感じがありながら、子どもに届く絵を描ける作家さんは、最近珍しいんじゃないかな。

北村 私自身は『かけっこ~』まで、あまり子どもを描いた事がなかったんです。子どもってどんなだっけ? と見てみると、何かに集中すると、それにとことん向かっていくエネルギーをすごく感じて。楽しい100%でつきすすんだりするでしょう。それを表現したいと思いました。

中川 僕なんて、61歳の今も中身は小学5年生のままだけどね(笑)。ちょうどその頃にビートルズの音楽を聴いて歌をつくることに目覚めて、東京オリンピックの閉会式を見て、頭の中がパカッと割れるみたいに世界を見る目が変わったんです。国も宗教も超えて、選手達が笑顔で肩を組んで入場する姿に、「これが自由だ! 平和なんだ!」と。

あの感動が、自分の創作の大もとになっているかもしれない。北村さんもそんな経験があるのでは?

北村 そこまで歴史的な出来事ではないですが、美大に通っていたある日、書店でエゴン・シーレの絵を見た途端、心を打ち抜かれて。子どもの頃から美大に行くと決めていたものの、ピカソやゴッホを見ても良さがわからなかったのに、不思議ですよね。

中川 おもしろいよね。でもそういう瞬間が、きっと誰にでもあるのではないかと思うんですよ。

 

■ピッカピカの小学1年生のエネルギーがあふれる歌。私も楽しんで絵を描きました(北村)

 

――中川さんは小学校の教科書にも掲載された「世界中のこどもたちが」などの作曲、さらにライブと、幅広く活動されていますね。

中川 はい。実は今回も「小学1年生の歌の絵本をつくってほしい」と依頼されました。それで『いけいけ! しょうがくいちねんせい』を書いたのですが。むずかしかったな~。

歌は、たとえば「君が好きだ」という刹那の思いだけでもつくれるけれど、絵本は話が展開しないとおもしろくない。映像を考えながら映画の脚本をつくるようなつもりで取り組みました。

 

――北村さんは、中川さんの文章を読んでどのように感じましたか。

北村 初めて読んだ時、「5年生はごまだれぼうず」と書いてあって、「ごまだれ? えっ液体?」と(笑)。でも中川さんなら、たとえかわいくならなくても、おもしろい絵になれば許してくださると思って、もう、思い切ってごまだれによせて描きました(笑)。

中川 素晴らしい絵になっていますよね。北村さんの絵がポップだと言いましたけど、ポップはポピュラー、つまり“みんなのもの”だという事。絵本でも歌でも、子どもに通じるものが、世代性別を超えたすべての人に通じると、僕は信じているんです。その根源的で本質的なところに触れている事が大切なんです。

加えて、笑いがある事も大事。北村さんの絵にはその両方がありますよね。

北村 ありがとうございます。私にとって子どもはまだまだ未知な存在ですが。でも自分が楽しく描けた絵なら、子ども達にも喜んでもらえるかなって思うんです。テキストから感じる100%楽しいテンションを保って描くことを、今回いちばん気を付けました。

 

――ところで、お2人の小学1年生の思い出とは?

中川 僕は入学式の日に風邪をひいて、家で寝ていたんですよ。なのにあとで集合写真を見たら、母親だけ写っていましてね。この日のためにと準備もしたから、自分だけでも参加していたという(笑)。

北村 (笑)。1年生ではないのですが母いわく、毎朝、幼稚園のバスに乗る時に、他の子はお母さんに手を振るのに、私は振り返らなかったと。少し変わった子どもだったのかもしれません(苦笑)。

中川 なるほど。幼稚園といえば、年長さんと小学1年生を比べると、不思議と年長さんのほうが大きくて堂々として見える。幼稚園という社会の中ではいちばん年上だし自信もついているから。

逆に1年生が急に小さく見えるのは、制服がぶかぶかだったり、上級生に比べて小さく見えるって事もあるんだと思うけれど、小学校という新しい環境に踏みだして、緊張しているからだと思うんだよね。

北村 本当に。この絵本も、1年生だった頃の自分を思い返しながら描いたところがありますね。

中川 そう、誰でもかつては1年生だったわけだから。何より大人でも新たな社会でやっていくのは大変なことでしょ。だから大人も上級生もみんな、1年生の事はあたたかく見守って、応援してほしいなと思いますね。

 

(取材・文/宇田夏苗)

 

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Profile・なかがわ ひろたか

シンガーソング絵本ライター。5年間保育士として勤務後、バンド「トラや帽子店」を結成。「世界中のこどもたちが」など、多くが歌い継がれている。1995年『さつまのおいも』で絵本作家デビュー。『ないた』で日本絵本大賞受賞。他著書多数。

 

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Profile・きたむら ゆうか

『おにぎりにんじゃ』で2011年講談社絵本新人賞佳作を受賞。NHK Eテレで放送中の「ヨーコさんの“言葉„」のイラストでも注目を集める若手絵本作家。

【絵本作家インタビュー】一覧

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