▲「12歳の文学賞」贈賞式で、受賞者の子どもたちと談笑する西原理恵子さん
『毎日かあさん』『ぼくんち』『女の子ものがたり』など、数々の作品を世に出している漫画家の西原理恵子さん。独特の視点から描かれる子どもや親子の姿に、多くの方が感銘を受けています。
また、小学生限定の新人公募文学賞「12歳の文学賞」の審査員も長らく務めていらっしゃいます。他の先生方とは一味違う選考の視点が毎回話題になっています。
そんな西原さんには、今の子どもたち、そして、彼らを取り巻く環境はどう見えているのでしょうか?
時代が大きく変わりつつある今、子育ても、教育も大きな変革の時期を迎えています。かつてのような横並び意識も変わりつつあり、その分、迷っている親御さんは多いように見受けられます。
西原さんの考え方には、ちょっと視点を変えるヒントがあるかもしれませんよ。
■選択肢が増えるのはいいこと
今の小1の子どもたちが大人になる頃には、今よりもっとたくさんの職業や進路が選択できる時代になってるんでしょうね。
私が若い頃は、漫画家になるとか音楽で食べていくとかなんて不良がやること、みたいな感じだったけど、今や普通になってるじゃないですか。
選択肢が増えるのは、いいことですよね。
子ども自身もすごく進化してますよね。今時の子って恐ろしいほど賢いんですよ、特に東京の女の子は(笑)。
私の娘は今17歳なんですが、娘やその友だちを見てるとつくづく思います。だって、勉強ができるだけじゃなくて、絵は描ける、本はたくさん読む、楽器は演奏できる、そんな子がごろごろいる。
しかも、世界中の情報を一瞬にして、手の中の端末で手に入れられる…。
「たくさんの選択肢の中からお子さんが何を選ぶのか」というのは、親御さんがすごく気になるところだと思いますが、それはお子さん自身で判断させるべきじゃないですかね。
だって、親の考えは古いもん。
■子どもが健康なら、それで十分
私は、子どもには全然指示しないですね。高2の娘が今ちょうど反抗期で、一年くらい口もきいてないです。
心配じゃないのか、って?
ぜんぜん。だって、ちゃんと学校もバイトも行ってるし。それに、とにかく健康なので、それで十分じゃないかと(笑)。
息子は大学生ですが、一晩中オンラインのサバイバルゲームやってますね。どうしてあんなにサバゲーができるのか…とは思いますが、別に心配にはならないですね。
だって自分で海外の学校に行くって決めて、一年間、外国で過ごして帰ってきた子だから。好きなことやればいいんじゃないの。
■子どもの気持ちは、分からなくて当たり前
よく、子どもの気持ちが分からなくて不安だって言うお母さんがいるけど、子どもだって結局他人ですから。適度に学校行って、それで、ちゃんとご飯食べてるんなら十分じゃないですか。
そんな人の気持ちを、無理やりこじ開けようとすることがまずダメでしょ。
子どものことや学校のことをあんまり真剣に考えすぎないでいいんじゃないかなあ。それよりも、毎日、笑顔で過ごすというのは、大事な子育てのテーマのひとつだと思います。
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娘が反旗を翻し、独立戦争が勃発中の西原家。巣立ちを目前に、西原さんから愛娘へ、どうしてもこれだけは語り継ぎたい母の教え。「王子様を待たないで。お寿司も指輪も自分で買おう」など、心にしみるメッセージが満載です。
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西原理恵子(さいばら・りえこ):
1964年、高知県生まれ。高校を中退後、大検を経て武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。88年、週刊ヤングサンデー掲載の「ちくろ幼稚園」で漫画家デビュー。数多くの作品を発表し、文藝春秋漫画賞、手塚治虫文化賞短編賞など受賞。11年「毎日かあさん」では日本漫画家協会賞参議院議長賞を受賞する。小学館が主催する「12歳の文学賞」では毎年審査員を務める。娘に伝えたい語りおろし本、「女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと」(KADOKAWA)が発売中。