根底にあるのは人間のやさしさ【絵本作家インタビュー】門田隆将さん×松成真理子さん

ぴっかぴかえほん『ヒョウのハチ』は、太平洋戦争中に本当にあった奇跡の物語。本作の文と絵を手がけたお二人に、この絵本で伝えたい想いを伺いました。

ぴっかぴかえほん
『ヒョウのハチ』
文/門田隆将  絵/松成真理子
2018年7月13日発売・小学館刊

(詳細は、こちらのページをご覧ください)

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―― 同世代のお二人ですが、子どものころの、将来なりたい職業は何でしたか。

松成 小さいころは、ピーヒャラドンドンと音を鳴らす、ちんどん屋さんでした(笑)。楽しくて、お化粧していてきれいで、あこがれていました。

小学生のころは絵を描くことが好きで、授業中はノートに落書きばかり。中学の卒業式には模造紙に先生方の似顔絵を描いて喜ばれた思い出があります(笑)。

門田 へえ、松成さんがちんどん屋さんとはおもしろいですねえ。でも、あの当時、ちんどん屋さんは子どもたちに大人気でしたからね。

私は、小学生のころからスポーツが大好きで、野球、ボクシング、相撲の結果を友だちに解説したり、新聞記事を切り抜いてスクラップしながらコメントを書いたりしていたんです。小学4年生のころには『ジャーナリストになる!』と決めていました。

■兵隊たちに愛されたヒョウのハチの姿が、そのまま素晴らしい絵に

――今回の絵本は、高知県出身の兵隊が、戦地・中国で野生のヒョウを育てたという、実話に基づいたお話ですね。

門田 高知県出身の私は、地元の歩兵第236連隊、通称“くじら部隊”が中国へ行っていたことは知っていましたが、そこでヒョウの赤ちゃんを育てていたとは知りませんでした。ノンフィクション『奇跡の歌』の取材をしているなかでこのハチのエピソードと出合ったわけです。

今回、絵本にするにあたり松成さんに絵をつけていただいたのですが、素晴らしい、の一言です(笑)。人間社会に入り込み、兵隊たちに愛情を注がれ育てられたヒョウのハチの愛くるしさが、そのまんま描かれていて、感激しました。

松成 ありがとうございます。最初は “えっ、本当にそんな話があったの?”と思ったのです。ところが門田さんの『奇跡の歌』や、成岡さんの自伝を読んでみましたら、人間と野生のヒョウが稀な出会いをし、お互いの一途な愛と信頼のなかでハチが育っていったことに驚きました。

これは絶対にいい絵本になる、そして多くの人に知ってもらいたいと思い、絵を描く前からやる気満々になっていたんですよ(笑)。

■人間とプロレスごっこも。猛獣なのに子猫のようにかわいいハチ

――ヒョウは猛獣ですから人間に飼われるなど想像できませんよね。

門田 そうそう。サーカスでもライオンやトラはいても、ヒョウの姿は見たことがありません。ヒョウは飼いならすことができない猛獣だからです。ところがハチはまるで子猫のようにかわいい(笑)。

成岡さんの腕枕で寝たり、人間とプロレスごっこをしたり、自分の尻尾をつかまれているのに動じなかったハチの話を知って、初めは“これ、ほんまにヒョウなのか?”と思いました。

お世話役の兵隊は口移しで食事を与えていたのでまさに親鳥とひなの関係です。ハチは自分がヒョウだと思っていなかったんでしょうね。しかも兵隊たちに囲まれた環境で育ちましたから、軍服を着ている人間を自分の兄弟や家族のように認識していたのでしょう。

松成 人間の愛を受けていたハチは人懐こいやさしいヒョウだったんですね。もしもハチが私にすり寄ってきたとしても、どう猛なヒョウだからとハチを怖がらず、抱きしめたいと思います。

■はく製になったハチに会いに行って、いろんなことを考えてほしい

―― 戦争を知らない子どもたちに、絵本を通して何を伝えたいですか。

松成 絵を描く前に、高知で大切に保管されているハチのはく製に会いに行ったんです。首のところにやけどの跡があって、ああ、本当にハチなんだ、と。成岡さんと一緒に写っている写真から想像していたハチより小さくて驚きました。

そして戦時下でこんなにもやせてしまったんだと悲しく思いました。このお話は事実なのですから、まずは私自身が感じたままを描いてみることにしました。その絵が子どもたちにどう受け止められるかわかりませんが、この話を知らなかった人たちにも知ってもらえればうれしいです。

門田 そうですね。この絵本に噓はひとつもなくて、すべて本当にあったことです。根底にあるのは、戦時下でも失われなかった人間のやさしさや心のあたたかさです。

愛くるしさで人間の愛情にこたえたヒョウがいたことも、そしてひとつの命をこんなにも大切にする人たちが、それでも、戦争をしなければならなかった悲劇も事実です。

ハチは今もはく製となって姿をとどめ、私たちにいろいろなことを考えさせてくれています。この絵本をきっかけに、みなさんにはぜひハチに会いに高知へ足を運んでほしいですね。

ぬいぐるみのようにハチを抱く成岡正久さん。中国・白砂舗にて。

戦後、はく製となったハチを、成岡さんが引き取る。
2018年7月より、高知県のオーテピアにて展示予定。

(取材・文/祓川学)

 

Profile・松成真理子(まつなりまりこ)
1959年、大分県生まれ。京都芸術短期大学(現、京都造形芸術大学)卒業。絵本『まいごのどんぐり』で第32回児童文芸新人賞、紙芝居『うぐいすのホー』で第43回五山賞奨励賞受賞。主な絵本に『じいじのさくら山』『せいちゃん』『たなばたまつり』など、著作多数。

 

Profile・門田隆将(かどたりゅうしょう)
1958年、高知県生まれ。中央大学法学部卒。作家・ジャーナリストとして、政治、経済、司法、事件、歴史、スポーツなど、幅広い分野で活躍。『この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』で山本七平賞受賞。この絵本の元になった実話を詳しく取材し書いた『奇跡の歌~戦争と望郷とペギー葉山~』(小学館)など、著書多数。

 

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