生活に欠かせない「言葉」だからこそ、その発達には気軽に人に聞けない悩みがありますよね。言葉を覚えはじめたこの時期の心配ごとについて、言語発達の専門家がアドバイスします。
Q.1 周りの子に比べて言葉の発達が遅いように感じられて悩んでしまいます。
Q.2 子どもに話しかける際に、赤ちゃん言葉(ブーブー、ワンワンなど)を使ってもいいでしょうか?
Q.3 言語の発達が早いかどうかは、将来の学力に影響はありますか?
Q4. ワンオペ育児で実家も遠く、日ごろ私しか関わる大人がいません。言葉の発達に影響はありますか?
Q5. 子どもが何に対して泣いたり怒ったりしているのかわからず戸惑ってしまいます。いつごろから自分の気持ちを言葉で伝えられるようになりますか?
Q6. 言葉を育てるために絵本をたくさん読んだほうがいいでしょうか?
Q.1 周りの子に比べて言葉の発達が遅いように感じられて悩んでしまいます。
A.
「言葉の発達が遅い」という場合、「話す力」だけが注目されがちですが、 まずはこちらが言っている言葉を理解しているかどうかにフォーカスを当ててみましょう。こちらの問いかけに対して指差しで答えたり何かを見せたりするなど、問いかけの意味を理解できているようであれば、あまり心配はありません。
とはいえ、他のお子さんと比べて悩んでしまうようであれば、かかりつけ医や定期健診の際に相談してみてもいいでしょう。
Q.2 子どもに話しかける際に、赤ちゃん言葉(ブーブー、ワンワンなど)を使ってもいいでしょうか?
A.
幼児期に赤ちゃん言葉を使うことはまったく問題ありません。赤ちゃん言葉はオノマトペ(擬音語・擬態語)がもとになっています。オノマトペは子どもにとって覚えやすく、発音しやすいだけでなく、楽しい気分にさせる言葉なので受け入れやすいのも特徴です。
また、言語を習得する段階の子どもは、どこからどこまでが一つの単語であるかを理解するのが難しい傾向があります。その点において、赤ちゃん言葉は独立した単語として認識しやすいため、それが影響してその前後の言葉も別の単語として認識できるようになり、理解が進みます。赤ちゃん言葉を使うことが言葉の発達につながるという面もあるのです。
Q3.言語の発達が早いかどうかは、将来の学力に影響はありますか?
A.
言語の発達がそのまま将来に直結するということはありません。
発語が早かった子がそうでなかった子に比べて学歴におけるアドバンテージがある、という調査結果はあります。しかし、それは「発語が早かった=学歴が高い」や「発語が遅かった=学歴が低い」と断言できるほどの強い影響はありません。
また、発語が早かった子というのは、乳幼児期からさまざまな面でサポートを受けやすい環境で育っている場合が多く、それが学力にも影響しているのではないかとも考えられます。
Q4.ワンオペ育児で実家も遠く、日ごろ私しか関わる大人がいません。言葉の発達に影響はありますか?
A.
例えワンオペの育児であっても、安定した環境で愛情を持って接していれば、言語発達に何も問題はありません。そして、お子さんに話しかける人がママかパパ一人しかないとしても、ママやパパが日常的に話しかける機会を作ることができれば、そこに大きな差が生まれることはありません。
ずっと家にいると話しかける内容が同じパターンになってしまうようでしたら、買い物などで外出するついでに30分程度散歩しながら、「天気がよくて空が青いね」「葉っぱが風で揺れているね」「赤いお花が咲いているよ」など、目に見えるものを言葉にして伝えるといいでしょう。
Q5.子どもが何に対して泣いたり怒ったりしているのかわからず戸惑ってしまいます。いつごろから自分の気持ちを言葉で伝えられるようになりますか?
A.
2歳半ごろから、自分の感情の言葉が少しわかるようになってきます。3歳を過ぎると「これが欲しかった」「あっちに行きたかった」など、感情の理由付けについても言葉にできるようになります。
とはいえ、その年になったら自動的にできるようになるわけではありません。まだ言葉を話せない時期から、泣いたり怒ったりしている際に「これで遊びたかったの?」「ばあばとバイバイするのがさみしいのかな?」など、子どもの感情を言葉にしていくことで、本人も「この感情はこういう言葉で表すんだ」と学習し、感情を言葉で伝えることができるようになっていきます。
Q6.言葉を育てるために絵本をたくさん読んだほうがいいでしょうか?
A.
絵本を子育てに取り入れることで、言葉の量だけでなく質を向上させ、バリエーションを増やすことにつながります。絵本を読むことで、日常の会話にはあまり出てこない言い回しや単語に出合うことができます。また、外国のお話やファンタジーの世界など、自分が住む場所以外の文化に触れることができる点もおすすめです。
お子さんの好きなテーマの絵本を選び、コミュニケーションツールとして一緒に読むといいでしょう。
辻晶先生
フランス国立科学研究センター(CNRS)・パリ高等師範学校 認知科学科 准教授。東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)連携研究者。乳幼児の言語発達と社会的相互作用の研究に従事。IRCN赤ちゃんラボでは、子どもの言語発達において社会環境がどう影響を及ぼすのかを研究している。
イラスト/オガワナホ 文/洪愛舜 構成/KANADEL
わかる言葉、話せる言葉がどんどん増えていくベビーブック世代。『ベビーブック』8・9月号「&ベビー」では、一番近くにいるおうちの方がどのようにお子さんに接すると言葉が豊かに育まれるのか、そのヒントをたくさん紹介しています!