
子どもをほめたいのに、叱っている回数のほうが多いかも……と思うことはありませんか? 子どもだけでなく、自分、そして家族みんなをほめられるようになる秘訣を、保育園で長年「ほめる子育て」を実践してきた専門家がアドバイスします。

Q.3 ほめたほうがいいことはわかっているのですが、できないことに目がいってしまいます。どうすればいいでしょうか?
Q.4 ほめることを意識すると叱ることができなくなってしまいます。
Q.5 わが子が他の人からほめられたときはどのように反応すればいいでしょうか?
Q.6 自分をほめることに抵抗を感じてしまいます。自分のマインドをどのように変えればいいでしょうか?
Q.7 パートナーをほめるのが難しいです。どうすればいいでしょうか?
Q.1 ほめるということは甘やかすことになりませんか?
A.
ほめることが甘やかすことになるのでは、と心配される方は多いのですが、そもそも「甘やかすこと=悪いこと」という認識が誤っていると私は考えています。むしろ、適切な甘やかしは子どもの成長に必要不可欠です。植物が育つためには水が必要なように、幼児期の子どもには存分に甘えられる環境が必要です。子どもは、愛情を受け取ることで将来的に他者に対しても愛情を注げる大人に成長します。甘やかしは、子どもの安心感を育み、自立への準備段階として機能します。いつか「もう水は必要ない」となるときが必ず来るので、そのときまでは、愛情を込めて適度に甘やかすことは悪いことではない、むしろ必要なことであると認識して、存分に愛情を注ぐといいでしょう。
Q.2 どこをほめればいいのか、わかりません。

A.
子どもをほめる際は、結果だけでなく、過程や姿勢を大切にするといいでしょう。例えば、笑った、歩けた、ボタンを留められるようになったなど、当たり前に見える行動も立派な成長の証です。また、たとえその行為ができなかったとしても、例えば「ボタンを留めようとした」ことだけでも十分です。「自分で留めようとしたんだね!」とその意欲を認め、言葉にしてほめるといいでしょう。
子どもの挑戦する姿勢、やりたいという意欲を評価することで、自己肯定感を育むことができます。大人の視点で「できた、できない」を判断するのではなく、子どもの成長の過程そのものを肯定的に見ることが大切なのです。
Q.3 ほめたほうがいいことはわかっているのですが、できないことに目がいってしまいます。どうすればいいでしょうか?
A.
できないことに目が行くというのは、視点の問題です。その時のあなたは、ネガティブなものだけが見える視点になっているため、マイナスな面が多く見えています。この視点を意図的にプラスの方向に変えていくことが重要です。
視点を変えるために、まずは、当たり前のことをほめる習慣をつけましょう。「できないこと」を探すのではなく、「できていること」や「がんばっていること」を探す習慣を心がけることが大切です。自分の基準で「いい・悪い」や「好き・嫌い」とジャッジすることを控え、子どもの存在そのものを丸ごと肯定的に受け止める姿勢が、ほめることへの第一歩となるのです。最初は難しいかもしれませんが、慣れてくるとお子さんの「ほめポイント」がたくさん見えるようになり、それがおうちの人自身の自己肯定感にもつながってきますよ。
Q.4 ほめることを意識すると叱ることができなくなってしまいます。
A.
叱ることは、子どもの安全や社会性を守るための重要な行為です。特に、他者に危害を加えたり、社会的なルールに反したりする行為に対しては、適切に制止する必要があります。ただし、叱り方には愛情が伴うべきです。感情的に叱るのではなく、子どもの成長と安全を思う気持ちで接することが大切です。例えば、喧嘩をしている子どもに対して、「いつも仲良くしてくれてありがとう」と伝えることで、より深い気づきを促すこともできます。このように、ほめることを意識することが、叱る際の基盤にもなります。日常的に子どものよいところを認め、愛情を伝えることで、叱る必要が生じた際にも、子どもは親の言葉を受け入れやすくなるのです。
Q.5 わが子が他の人からほめられたときはどのように反応すればいいでしょうか?
A.
他の人から子どもをほめられたときは、過剰に謙遜したり否定したりせず、素直に「ありがとうございます」と受け入れるといいでしょう。多くの人は「そんなことないです」と言って子どものよさを否定したり、「でも○○はできないんです」などネガティブなことを言ったりしがちですが、これは望ましくありません。
他人はお子さんの一面を客観的に見ており、その視点はおうちの人とは異なります。おうちの人は自分の子どもの全体像を知っていると思いがちですが、例えば、コップを上から見た場合と横から見た場合では形が全然違うように、他人はあなたからは見えないお子さんのよい部分を発見しているのかもしれません。外部の人の評価は貴重な視点となります。ですので、子どもをほめられたら、その言葉を素直に受け入れて子どものよさを認める姿勢を示すといいでしょう。過剰な説明や否定せず、感謝の気持ちを伝えることは、子どもの自己肯定感を育むことにもつながります。
Q.6 自分をほめることに抵抗を感じてしまいます。自分のマインドをどのように変えればいいでしょうか?

A.
自分をほめることに抵抗を感じること自体が、実は素晴らしいことです。この抵抗感は、真面目で誠実な自分の証でもあります。大切なのは、恥ずかしがらずに、小さな声でも自分をほめ始めることです。ほめられ慣れていないため恥ずかしさを感じるのは自然なことです。「ほめようとしている自分」そのものをまずほめてみましょう。「自分を大切にしたいと思っている」「子育てをより良いものにしたいと考えている」といった、自分の意志や努力を認めることから始めるのです。
日記をつけたり、心の中でつぶやいたりと、自分なりの方法で自分をほめる習慣をつけることが、マインドチェンジへの第一歩となります。恥じらいながらでも、小さな一歩を踏み出してみましょう。
Q.7 パートナーをほめるのが難しいです。どうすればいいでしょうか?
A.
パートナーをほめることが難しい場合は、むしろ感謝を伝えることから始めましょう。例えば、仕事から帰ってきたパートナーに「今日も仕事お疲れさま」「がんばって働いてくれてありがとう」と伝えてみてください。どんな人でも、感謝の言葉を言われるとうれしいものです。洗濯物を畳んでくれたら「片付けてくれてありがとう」、家事を手伝ってくれたら「助かったよ」と素直に感謝の気持ちを伝えることで、関係性を良好に保つことができます。ほめることにこだわらず、相手の努力を認め、感謝の気持ちを伝えることで、お互いを大切にする関係性が築けるのです。

向井秋久先生
社会福祉法人千早赤阪福祉会理事長。29歳で園長に、36歳で2代目理事長に就任。約40年に渡り大阪府で幼児教育の現場に携わる。著書に『日本一ほめる保育園に教わる 子どもが伸びるほめ方 子どもが折れない叱り方』(学研)がある。
イラスト/石塚ワカメ 文/洪 愛舜 構成/KANADEL
うれしいと感じるほめられ方は、人それぞれ違いがあります。『ベビーブック』2026年4・5月号「&ベビー」では、わが子に合ったほめ方がわかる、子どもの「タイプ別」ほめ方を紹介しています!

