はやしますみさん【絵本作家インタビュー】 ぜひオリジナルのうそ話を作ってみて!

ひょうきんなかわうそが物知り顔で語る、ほんとみたいな、うそんこ話。 動物たちの名前の由来にまつわる、ユーモアあふれる言葉遊びの絵本です。

作者のはやしますみさんに、この楽しい絵本が生まれた舞台裏についてお聞きしました。  

ぴっかぴかえほん
『うそうそかわうその むかしばなし』
作/はやしますみ
2017年12月11日発売・小学館刊

(詳細は、こちらのページをご覧ください)

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■幼い頃に聞いた昔話がきっかけで生まれた絵本

小さい頃、母が寝る前によく昔話をしてくれました。母は京都生まれだったので、京都にある山の比叡山と愛宕山の昔話をしてくれて。

昔、二つの山が、どちらの背が高いかを言い争ってケンカしていて、比叡山が思わず愛宕山の頭をポカッと叩いた。そうしたらこぶになって膨らんで、そのぶん愛宕山の方が高くなってしまった。それを見た比叡山が自分もこぶを作ろうと思って、自分の頭をポカポカ殴っていたら、逆に凹んでしまった…なんてお話です。

子どもの頃からこの話がすごく気に入っていて。他にも「ゾウの鼻はなぜ長い」とか、そういう由来話を聞くのが好きで、普段からこれはどうしてこうなったのかな、とか考えることが多いんです。それで今回、自分なりのウソ話を絵本で作ってみたいなと思ったのがきっかけでした。

■子どもと触れ合う時間に生まれる物語

絵本のネタが思い浮かぶのは、車を運転しているときや、子どもと話しているときですね。息子も動物が大好きで、動物の変な名前の話などで盛り上がるんです。

たとえば「ハダカデバネズミって、かわいそうな名前だよね」とか、「トゲアリトゲナシトゲトゲって虫がいるけど、トゲがあるのかないのかどっちやねん!」とか。そんな話をするのが大好きで、話し出すと止まらないんです。

息子には生まれて2、3ヶ月くらいのときから、長新太さんの絵本を読み聞かせていました。だから彼は2、3歳くらいになるまで、絵本はみんな長さんの絵本だと思い込んでいたくらいです(笑)。

その後もたくさんの絵本を読み聞かせしましたが、いつもひととおり読んだあと、眠いから電気を消して寝ようとすると、そこからまた読んでってせがまれるので、今度は私が作り話をしたんです。

シンデレラのあらすじを使って、息子を主人公にした童話を作ったり、振り返ってみるとたいした話ではないんですけど、そうやって子どもと遊んで蓄えたものを、今作品にしている感覚もありますね。

■自由な絵本の世界に憧れて

本というものをはじめて意識したのは、中学校のとき。保育士をしていた母親の本棚にたくさん絵本があって、こっそり読んでいたら、そこに『100万回生きたねこ』があって。絵本の中に「しぬ」とか「きらい」とか、たくさんのネガティブな言葉が書いてあって驚いたんです。

これまで良い子を育てようという絵本ばかり読んでいたので、「これはなんちゅう大人や!」ってすごく新鮮で(笑)。そしてこんな絵本を描いてしまう大人と、この作品をよしと評価する大人がいる絵本の世界って自由で面白いなと思って、そこから絵本作家になりたいと思うようになりました。

大学もそのために行ったのですけど、卒業したあとどうしたら絵本作家になれるのかがわからなくて、結局グラフィックデザイナーになりました。息子が生まれてから、神戸で開催されている「絵話塾 絵本わくわくコース」に通ったことがきっかけで、絵本作家としてのデビューにつながりました。

■匂いや温度まで伝わる、実感のある絵が描きたい

子どもの頃から動物が大好きで、大学生のときには、大学が京都市動物園に無料で入れるチケットを配っていたので、週3くらいで通い詰めていたんです。朝のバイトを終えて、10時から12時くらいまで京都市動物園でスケッチ、それから午後の大学のゼミに行って…みたいな生活を4年間送っていました。

ネコ科が好きで、ライオンやヒョウ、ピューマなどをひたすら描いて。今も家には猫が2匹いるんですよ。生きものでも風景でも、実際に触ったり匂いをかいだりしながら、実感のある絵が描けたらいいなと思っています。

■人々の営みと自然がつながる、ふるさとの暮らし

今は琵琶湖に隣接する西の湖から車で5分くらいのところに住んでいます。雨が降ると、田んぼからカエルがわさーっと出てきて、水で濡れている地面はもう全部カエルの領分。地面が乾いているところだけが、かろうじて人間のテリトリーなんです。

田植えの終わった頃あたりから、雨の夜に車で走っていると、地面に三角形の形をした影がぴょこんぴょこんと跳ねていて、それを轢かないように運転するのがひと苦労(笑)。

稲刈りのあとには、大きなトノサマバッタとかカマキリとかがエサ場をなくして道路に出てくるし、カワセミも飛んでいます。そんな人々の暮らしが自然とつながっているところで暮らせているのは、幸せなことだなと思いますね。

今回の絵本『うそうそかわうそのむかしばなし』は、そんな普段の暮らしの中で、子どもと楽しんだウソ話から生まれてきたお話です。絵本を読んで面白いと思ってもらえたら、ぜひ自分でもオリジナルのウソ話を作ってみてください。子どもたちに「自分の方がうまく作れるよ!」って遊んでもらえたら嬉しいです。

(取材・文/内山さつき 撮影/田中麻以)

 

Profile・はやしますみ
1968年京都府宇治市生まれ。京都精華大学美術学部デザイン学科卒業後、グラフィックデザイナーとなる。2008年度ギャラリーVie絵話塾修了。第10回ピンポイント絵本コンペで優秀賞受賞。自然の匂いや温度を感じる大らかな作品や、動物たちをユーモラスに描き出した作品が人気。『とんとんとんだれですか?』、『たんぼレストラン』、『どんどろめがね』など、絵本多数。

【絵本作家インタビュー】リスト

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