『おふとんさんとねむれないよる』は、子どもの成長にそっと寄り添うどこまでもやさしい“おふとんさん”の最新作です。
リラックマなど数々“癒やし系”キャラクターを生み出してきた作者のコンドウアキさんに、本作にこめた想いを伺いました。
ぴっかぴかえほん
『おふとんさんとねむれないよる』
作/コンドウアキ
2019年10月25日発売・小学館刊
■小学生時代から考えていたキャラクター、おふとんさん
“おふとんさん”は、私が小学生時代 からずっとあたためてきたキャラクターです。夜8時には寝させられるけど、すぐには眠れなくてつまらないので、4歳年下の妹と一緒にいつも、「このふとんはラーメン出せるよ」とか「お菓子が出せるよ」とか妄想を話していました。なんでもないふとんだったんですけどね。
当時からふとんは大好きでした。私、すごく寝るタイプなんです。あんまり寝るものですから、親から「三百年寝太郎」とか言われていたほど。今でも睡眠はすごく重要で、人一倍寝ているように思います。睡眠時間がこの半分ですんでいる人はもっといろいろと活動できるんだろうと思うと、損している気になります。でも私の場合、寝ないと動けなくてシーンとしちゃうからだめですね(笑)。
■自分の眠りたい願望がみなさんの願望と一致
小さいころからイメージしてきた“おふとんさん”の概念が形をもったのは、ツイッターでふとんのことをつぶやき始めたころです。何度か「ふとんが待っている」っていうツイートをしたら、夜中に寝られない社会人のみなさんが「おふとんさん、おふとんさん」って言ってくれて。
私も寝たいし、みなさんも寝たい。ふとんって家以上に個人的な“帰る場所”なんじゃないかと思ったんです。眠たくって、早くおふとんに帰りたい、っていう自分の願望を、キャラクターデザインとして起こしました。
リラックマのときもそうでしたが、みなさんを癒やそうとかおこがましいことは考えていなくて、自分の願望がみなさんの願望と一致したっていうそれだけです。みなさんも疲れていたんじゃないでしょうか。
■おふとんさんはどこにでもいます
おふとんさんの絵本はこれで3作目になります。1人でお泊まりするっていうのは、子どもにとって独りを実感する究極の体験かなと思うんです。おばあちゃんちだったら慣れたところではあるけれど、やっぱり夜は独りだし、安心感と不安が一緒にあるシチュエーションで。
私も小さいころ、1年に1回おばあちゃんちに行くのが楽しみでした。すごくやさしくて、何もかも肯定してくれる人だったので、私のおばあちゃん観っていうのが、今回のおばあちゃんちのおふとんさんにも出ているのかもしれません。
おふとんさんは、どこにでもいます。その子が望むおふとんさんがすぐそこにいます。本作の主人公のクーちゃんはすごく怖がりで、不安でいっぱいだから、どこまでもやさしく寄り添ってくれる包容力のあるおふとんさんが必要だったのだと思います。赤ちゃんのころから大きくなるまで、親とは違った距離感でずっと成長を見守ってくれている存在ですね。
■必ず朝が来ますから大丈夫です
私はぐうたらで怠け者だからかな、眠ることはよろこびである、静養やったー、って感覚なんです。でも、子どもは必ずしもそうじゃないんですよね。
子どものころって早く寝かされるけど、すぐに眠れるわけじゃなくて。暗い夜に1人になると、どんどん怖いことがあふれてきたりしますよね。思いついたらそればっかり考えたり、考えればいつか答えが出るんじゃないかと思ったり。
そんなときに「必ず朝が来ますから大丈夫ですよ」っていうことを伝えたかったんです。考えても仕方がないことはとりあえず置いておくと状況が変わったりもするし。これって、大人は知っているけど、子どもは気づいていないことのように思うんです。寝て起きたら朝だけど、眠れなかったら朝がこないんじゃないか、このままずっと続く夜をどうしよう、とか。
安心して寝ればいいんだよ、ってね。安心して眠れない場合は、自分のおふとんが、絵本のおふとんさんと同じおふとんだ、って思ってもらえればちょっといいのかな、と。
■安心して眠れるって究極のいいこと
おいしい物を食べるのもすごく大事ですけど、「食べる」には文化や習慣などによっていろいろ種類がありますよね。だけど安心して「眠る」っていうのは全世界に共通していえる大事なことじゃないかと思います。明日の心配や、身の危険を感じずに眠れるって、究極のいいことじゃないかな、って思うんですよね。大人も子どももみんな、そうなったらいいですよね。
人を生き物として考えると、食べているときは「動」だけど、寝ているときって「静」だと思うんです。いちばん無防備で、いちばん危ない状況。だから寝られないときって、いらんこととか、いやなことを考えたりしちゃうんでしょうね。そこが危なくないってすごいこと。子どもたちが安心して眠れるって、究極のいいことですよね。
絵本のラストはいつも、ああよかった、という終わり方にしたいと思っています。初めて何かをやるときは不安 がつきもの。それが「できた」って思 えることで、またひとつ怖いことが減 って自信につながる。そういうことがいっぱい重なると、怖かったことがどうでもよくなってくるんですよ。でもそれまでは、いろんなことを「やれた」「できた」ってひとつずつ乗り越えていかないといけないから。それをおふとんさんと一緒にやってくれたら、とてもうれしいです。
(構成/田中明子)
©aki kondo
Profile・コンドウアキ
1997年、文具会社デザイン室入社。「みかんぼうや」「リラックマ」のキャラクター原案を担当。2003年退社後はフリーで「うさぎのモフィー」や「ニャーおっさん」などのキャラクターデザインやイラスト制作などを行う。2児との日々を綴った育児エッセイ『トリペと』や『おふとんさん』絵本シリーズなど、子どもから大人まで幅広く人気を集めている。
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