コンドウアキさん【絵本作家インタビュー】いい気分で眠りについてほしい

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「あなたのおふとんになりたくて」ーーー。
絵本「おふとんさん」は、おかのてっぺんにある大きな木の下で出会った、ぼくとおふとんさんとの、心あたたまるストーリー。

作者・コンドウアキさんにとって“おふとんさん”は、小学生時代からいつもそばにいたキャラクターです。
満を持して世に送り出したこの絵本にこめた想いを伺いました。

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『おふとんさん』
作/コンドウアキ
小学館刊

詳細は、こちらのページをご覧ください

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■おふとんさんはいつもあなたのそばに

数年前、仕事をしていてものすごく眠くなったことがありました。ふと気づくと“おふとんさん”を描いていたんですよね。

私は昔から人一倍睡眠への欲求が強く、小学生の頃は親に“300年寝太郎”とよく言われていました。毎朝ふとんから出たくないと思っていましたし、夜寝るときには妹に「このふとん、飛ぶんだよ!」とふとんの妄想を話したりするくらい(笑)。

それほど寝るのが大好きでしたし、自分の中でふとんの存在は大きなものでした。だから今回、小学1年生向けの絵本を考えたときには、「小学生なら当然おふとんでしょう」と“おふとんさん”を主人公に決めました。まさしく私の睡眠欲とふとん愛から生まれた絵本ですね。

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うちには2人の娘がいます。下の子を見ていると、まだぬいぐるみが好きだったり、お気に入りの小さな何かをそばにおいておきたがったりするんです。一人で歩き出したい興味はあるものの、まだまだ不安な年代なんですよね。

ふとんは安心感を与えてくれるし、それがいつもそばにいてくれて、一緒に遊んでくれたらきっと楽しいだろうなと。ほぼみんなが持っているものでもありますし、読んだ子どもたちが親近感を持ってくれたらいいな、という気持ちで描きました。

実はおふとんさんにはすごい能力があって、空を飛んで学校に連れて行ってくれたり、夜中にラーメンを作ってくれたりもするんです。

今回の絵本では、使わないものと欲しいものが交換できる大きな木の下で、主人公とおふとんさんが出会います。ただ、そこに来るまでおふとんさんは一体どこで何をしていたのか…。ボロボロですし、これは最大の謎ですね(笑)。

■絵本の中でしか出合えないものがある

私はリラックマをはじめ、キャラクター関係の雑貨や文具をつくっていましたが、絵本をつくるときは色の選び方ひとつにしても考え方が全然違うなと感じます。

商品は使いやすさが大事なので、イラストの入れ方なども自然と枠が決まってきます。絵本にも枠はあるけれど、やろうと思えばページに穴を開けてもいいし、形だっていろいろできます。そういう風に、枠が決まっているようで決まってないメディアは珍しいのではと思うんです。

それこそふとんが歩いたり飛んだり、題材だって何でもOK。だからこそ、絵本の中でしか出会えないものがいっぱいある気がします。

■楽しい気分になって何度も読んでもらえたら

私自身、子どもの頃に読んで忘れられない絵本があるんですね。『あかいりんご』(なかのひろたか作)はりんごの赤色が好きでたまらなくて、うさぎがりんごに頬ずりする絵を見ては「本当によかったねえ」と思っていました。

他にも『はじめてであう数学の絵本』(安野光雅作)の小人が不思議だなと感じていたこととか、今も思い出します。娘たちを見ていても、どんなに幼くてもちゃんと好みがあるのがわかるので、絵本は自由に選ばせています。

大体10冊くらいを繰り返し何度も読んでいるんですよね。絵本を読んでいる間はそうやって誰にも邪魔されず、どんな妄想をしようが否定されない、ただひたすら好きなものに触れることができる時間だと思います。だから自分が絵本をつくるときには、楽しい終わり方にしたい。

悲しいことや辛いことを描くことも大事ですが、私は絵本を日常の中に置いてほしいので、「ああ楽しかったー、また読みたい」と感じてもらえるのが一番。

「おふとんさん」もこれを読んだらいい気分で眠れそうだなと、繰り返し読んでもらえることを願っています。

取材・文/宇田夏苗

©aki kondo

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コンドウ アキ:
1997年、文具会社デザイン室入社。「みかんぼうや」「リラックマ」のキャラクター原案商品デザインを担当。2003年退社後はフリーに。「うさぎのモフィ」や「ニャーおっさん」などのキャラクターデザインや執筆、イラスト制作などを行う。2児との日々を綴った育児エッセイ『トリペと』シリーズや、雑誌『小学一年生』での人気連載を絵本化した「かばくんとクレヨン」など、著書多数。

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