世界でも圧倒的な強さを誇る日本女子レスリングで、全国大会6連覇を果たしたのが、島根県のスーパー小学生・小野こなみさんです。勝利を求め努力し続ける、こなみさんの強さの秘密に迫ります。
(『小学一年生』2018年10月号では、スポーツで活躍している小学生を紹介する記事「すごいぞ! スポーツ1とうしょう」を掲載しています。 本誌もあわせてご覧ください。)
■お兄さんの影響でレスリングの世界へ
こなみさんがレスリングを始めたきっかけは、3つ上のお兄さんでした。幼稚園のときに音楽教室に通いはじめたお兄さんでしたが、授業はそっちのけで大暴れ。その元気よく暴れる動きを見た先生が「レスリングに向いてるんじゃない?」とポツリ。
そんな何気ない一言をきっかけに、まずお兄さんがレスリングを始めました。まもなくこなみちゃんも触発され、兄妹はめきめきと頭角を表し、一気に全国レベルの選手へと成長しました。
「私は、戦うことが大好き。白か黒か、勝ち負けがはっきりと結果にあらわれるのがおもしろい」こなみさんは、そうレスリングの魅力を語ります。
■自分の限界は決めない
実家は、島根県松江市にある、来年創業100年の老舗の醤油製造会社です。香ばしい醤油のかおりが漂う自宅には、お父さんが子供たちのために作ったトレーニングルームがあります。壁には将来の夢や練習メニュー、目標とする選手の写真などがぎっしり。
こなみさんは毎朝5時50分に起きると、この部屋で25kgの人形を相手に、投げ技やタックルの練習など、自分で考えたメニューを1時間ほどこなします。
学校から帰るとまたトレーニング。週に3回は、自宅から車で1時間ほどのところにある、加茂B&Gレスリングクラブの練習に参加します。小学6年生のこなみさんの練習相手は、なんと中学生男子。自分より体格も力も上の選手に、果敢に挑みます。
コーチの厳しい声が飛ぶ中、2時間みっちり体を動かします。さらには、体育館での走り込みで体力をつけたり、投げ技の感覚を磨くために柔道の習得にも励むなど、とにかく練習漬けの毎日。
「目標を小さく持っていたら、日本一になんかなれない。自分で限界を決めずに、それを超えて頑張る気持ちが、自分を強くするんです。とにかく勝利を求めて取り組むことに意味がある」と、どこまでもストイックなこなみさんです。
■憧れの選手は伊調馨選手
こなみさんは、2015年アメリカで開催された世界選手権で優勝を決めた時の伊調馨選手の表情が忘れられないという。「優勝したのに全然嬉しそうじゃない。真顔なんです。もう、次のことを考えているのだと思いました」と振り返ります。
「年齢制限があるので20年の東京オリンピック出場は難しそうだけれど、24年のパリから、伊調選手のオリンピック4連覇の記録に並ぶことが目標です。…あ! 東京オリンピックで伊調選手が5連覇するかも!」こなみさんは笑いました。
2018年7月に行われた、全国少年少女レスリング選手権大会では全試合を第1ピリオドの無失点で試合を終え見事優勝し、6連覇を達成。この快挙は、伊調馨選手や吉田沙保里選手も成し遂げていない偉業です。
「小学生は学年別だけど、中学生になると1~3年生が同じカテゴリになるので、しっかりと体を作って、スピードと技を磨きたいです」と語るこなみさんもまた、伊調選手のように未来を見据えているのです。
小野こなみ(おのこなみ)さん
『小学一年生』認定スーパー小学生。
島根県の小学6年生。 好きな芸能人は、陣内智則とサンドイッチマン。今はまっているのは、スライムで遊ぶこと。
(取材・文/青木こずえ 写真/平田貴章)
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