
「使いすぎはよくない」とわかっていても、子育てをする中でスマホやタブレットに頼らざるを得ないというママ・パパも多いのではないでしょうか。上手に活用するためのポイントを、子どもとデジタルメディアの関係に詳しい専門家がアドバイスします。

Q.1 イヤイヤがひどいときに、スマホを見せてもいいですか?
Q.2 小さい頃からスマホを使わせていると、将来スマホ依存になってしまうのでは……と心配です。
Q.3 現在はデジタル絵本もありますが、紙の絵本にも触れさせておいたほうがよいのでしょうか?
Q.4 幼児向けのアプリを使用するとき、親が注意しておくことはありますか?
Q.5 子どもが動画を何回も見たがります。見る時間や回数を減らすにはどうすればいいですか?
Q.6 親である私自身が、子育てでイライラするとスマホを見て気分転換をしています。こういう姿を子どもに見せるのはよくないですか?
Q.1 イヤイヤがひどいときに、スマホを見せてもいいですか?

A.
おうちの方が困ったときにスマホやタブレットを見せてしまうこともあると思いますが、いつもそのように対応するのではなく、やむを得ない場合の最終手段として考えたほうがよいでしょう。スマホを見せるほかにも、ユーモアを交えてイヤイヤを乗り切る方法を考えておくと、いざというときに役立ちます。
例えば、子どもに対して「これがイヤなんですね」とインタビューしながら気をそらすような対応をしたり、「イヤイヤメモ」を作って子どもの反応を分類してみたりするのもよいかもしれません。また、どんなイヤイヤに悩んでいるのかを、パートナーや家族、子育て仲間などと共有してみると、客観的に状況を見ることができるようになるはずです。
Q.2 小さい頃からスマホを使わせていると、将来スマホ依存になってしまうのでは……と心配です。

A.
スマホ依存にならないようにするには、使い方が重要です。スマホでずっと動画を見せてしまうと、それが習慣化するおそれがあります。一方、子どもが歌う様子をスマホで撮影・録音して聞き返したり、好きなものの写真を撮ったりするなど、記録媒体として使うことも教えていけば、「スマホ=動画を見るもの」という固定観念は生まれません。スマホは高性能なコンピュータで、調べものや生成AIを活用した創作活動などさまざまなことができるので、ツールとして使いこなす方法を示すことが大切です。
また、時間管理も重要です。適切な時間で視聴を区切る習慣やセルフコントロールの力を身につけることができれば、それは一生の財産になります。小学生になると友だちの影響を受けやすくなるため、おうちの方の言うことを聞き入れやすい就学前の時期に、スマホやタブレットを使用する際の「わが家のルール」をきちんと伝えていくことを心がけましょう。
Q.3 現在はデジタル絵本もありますが、紙の絵本にも触れさせておいたほうがよいのでしょうか?
A.
デジタル絵本にはさまざまな形態があり、紙の絵本をデジタル化しただけのものであれば、読む行為自体は紙の絵本とそれほど違いはありません。ただし、端末から発せられる光の刺激があるため、長時間にわたって読み続けることがないようにしましょう。
動画になっていたり、タッチすると反応したりするデジタル絵本の場合、難しい言葉や子どもが想像しにくい場面にデジタルで動きをつけることで、理解が深まるというメリットがあります。一方で、紙の絵本では、絵を見て話を聞きながら頭の中でイメージを動かすことで想像力を養う効果が期待できるのに対して、デジタルで細かく動きが表現されると、想像の余地が少なくなる可能性もあります。
このようなメリット・デメリットを考慮すると、デジタル絵本と紙の絵本の両方を活用するのがよいでしょう。紙の絵本の世界観を動画などでさらに楽しめるように作られているデジタル絵本もあるため、紙の絵本を読んだ後に同じ作品のデジタル絵本にも触れてみて、両方の表現を楽しむのもおすすめです。
Q.4 幼児向けのアプリを使用するとき、親が注意しておくことはありますか?
A.
まずはおうちの方自身が、そのアプリで子どもが何をするのか、どういうことを学べるのかを把握しておくことが重要です。難しい操作が必要なアプリや、プログラミング系のアプリなどは、おうちの方が先に内容を確認しておくとよいでしょう。また、連打する操作が必要となるアプリでは、子どもが連打だけに夢中になっている場合、コンテンツ自体を味わっているわけではないため、子どもが本当に楽しんでいるのかを見極める必要があるでしょう。
また、使う前にルールを決めておくことも大切です。例えば、フリーズしたときや困ったときはおうちの方を呼ぶようにするなど、約束をしたうえで遊ばせるとよいでしょう。そして、使い終わった後には必ず「何をしたの?」「楽しかった?」「どんなものを作ったの?」など、親子で会話をすることを習慣にしましょう。
Q.5 子どもが動画を何回も見たがります。見る時間や回数を減らすにはどうすればいいですか?
A.
「10分だけ」という約束で見始めても、子どもが動画に夢中になって、その時間を守れなくなってしまうのはよくあることです。この場合、単に「もう見ちゃダメ」と禁止するだけでは、子どもはどうしたらよいかわからなくなってしまいます。代わりとなる楽しい活動を提案し、子どもが自然と気持ちを切り替えられるようにすることが大切です。
また、動画の時間に関するルールづくりでは、大人だけで決めるのではなく、子ども自身も一緒に考えることがとても効果的です。「どうして約束の時間があるのか?」「長く見すぎると、どんな困ったことが起きるのか?」といった理由を、子どもが理解できる言葉で伝えることで、子どもはルールを“押しつけられている”のではなく、自分でも大切だと感じて守りやすくなるからです。
わが子がどんなことに興味を持っているかを最もよく知っているのはおうちの方です。動画よりも「やってみたい」「面白そう」と思える代わりの遊びや活動を一緒に見つけながら、親子で納得できるルールづくりを進めていきましょう。
Q.6 親である私自身が、子育てでイライラするとスマホを見て気分転換をしています。こういう姿を子どもに見せるのはよくないですか?
A.
親がイライラしていることを子どもは敏感に感じ取ります。黙ってイライラしながらスマホを見るよりも、「お母さん、ちょっと疲れたから、10分だけ好きな動画を見て気分転換するね」などと、何をするのかを実況中継するような感じで伝えると、子どもは何をしているのかがわかって安心できます。子どもは大人の状況をよく理解しているものなので、正直に伝えつつ、「時間になればまたあなたのところに戻ってくるからね」と安心感を与えることが大切です。そして、約束の時間になったら、スマホを見るのをやめて笑顔で子どものもとへ戻ることを心がけましょう。

佐藤朝美先生
愛知淑徳大学人間情報学部教授。博士(学際情報学)。教育工学、幼児教育などにかかわる研究に従事。著書に『デジタル時代の賢い「スマホ育児」』(中央法規出版)など。
イラスト/まつむらあきひろ 文/安永美穂 構成/KANADEL
スマホやタブレットはダラダラと使い続けるのではなく、「賢く使いこなす」という視点を持つことが大切です。『ベビーブック』2026年2・3月号「&ベビー」では、視聴環境の整え方や親の関わり方のポイントを解説しています!
