毎日新聞で16年に渡り『毎日かあさん』を連載し、2017年6月26日に「卒母(そつはは)」宣言と共に完結を迎えた漫画家・西原理恵子さん。作中では、息子さんや娘さんとのさまざまな日常を綴っていました。
また、小学生限定の新人公募文学賞「12歳の文学賞」の審査員も務めていらっしゃいます。
ご自身のお子さんたちが小学1年生だった頃から現在までのエピソードを聞いてみました。
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■テストの意味を理解していなかった小1の息子
今、息子は19歳、娘は17歳です。なので、二人が小学1年生の頃はもう10年以上前のことですね。
うちの場合は、昔から完全に娘の方が賢いですね。勉強ができるという意味じゃなくて。いつも頭がすごくぐるぐる回転してるし、いくつも感情があるし。その点、息子は1つ持つと1つ忘れる、犬みたいな子で…。なので、息子のほうがいろいろ大変でした。
1年生の時は、まずテストというものを理解してないんです。「先生が◯とか×をつけてさ、点がついてる紙」って聞いても「そんなのないよ」って。今の低学年はテストをやらないのか? と思って、授業参観の日に息子の机を強制捜査したら出てくる出てくる、くっしゃくしゃのテストが(笑)。
隠してるんじゃないんですよ、忘れてるんです。机に突っ込んだ時点でもう。まあ別にいい点取るために勉強しているわけではないので。そのうち忘れずにテストを持って帰ってくるようになったので、私としてはそれで100点かなと(笑)。
■小4で人間関係に疲れた(!?)娘
息子は昔も今も、普通に友だちといるのが楽しいって言ってるんですが、娘は人間関係が難しいみたいで、小学生の時から疲れてた。小4くらいの頃は毎日フラフラでしたね。
今の女の子は、いじめってならないようにお互い人間関係に気を使ってることがすごく多いんです。女子の世界は特に、「やだ、あたしもう死んじゃいた〜い」とかって言い出すめんどくさい女いるでしょ。そこで「死ねば」なんて言ったら、このご時世、大変じゃないですか。そういうのをうまくかわしたり、関わらないようにしたりして。
なので娘は人間関係に疲れ切って、週に1回は学校を休んでますね。「木曜休んで金曜は行く」みたいに自分で決めてるみたいです。 そんな娘は今、絶賛反抗期中で、全く口をきいてませんが(笑)。
■大人になってしまった息子と娘
今、2人の子どもを見てて分かるのは、もう自分が死んでも多分絶対大丈夫、2人は何とかやっていける子たちだなって。
思えば16歳くらいで、うちの子は2人とも大人になっちゃいましたね。あんなにバカだった息子は急に16でアメリカに行ってしまったし、娘も16くらいで舞台に立ち始め、朝帰りし始め、そして口をきかなくなるっていう(笑)。
娘は大駱駝艦(麿赤兒さんが率いる舞踏集団)とか寺山修司の演劇とか観てるんですよ、もう、なにコイツ〜って、アメリカより遠いところに行ってるな、帰ってくるのかなって(笑)。2人とももう大人で、自分の思ったことをやり始め、自分の世界がある。帆を張った状態なんです。
美しい帆を張って、今から港へ出る準備をしている子どもたちに、別に何か言うつもりはないですね。好きにやってくれって。
今は嬉しいっていう気持ちばっかりですね、この引きこもる時代にどんどん外に出て行ってくれるっていうのは。すごくいいことなんで。いい子に育ったな、親の仕事は終わったなって。そう感じますね。
撮影/黒石あみ(小学館) 取材・文/川辺美奈
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娘が反旗を翻し、独立戦争が勃発中の西原家。巣立ちを目前に、西原さんから愛娘へ、どうしてもこれだけは語り継ぎたい母の教え。
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西原理恵子(さいばら・りえこ)
1964年、高知県生まれ。高校を中退後、大検を経て武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。88年、週刊ヤングサンデー掲載の「ちくろ幼稚園」で漫画家デビュー。数多くの作品を発表し、文藝春秋漫画賞、手塚治虫文化賞短編賞など受賞。11年「毎日かあさん」では日本漫画家協会賞参議院議長賞を受賞する。小学館が主催する「12歳の文学賞」では毎年審査員を務める。娘に伝えたい語りおろし本、『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』(KADOKAWA)が発売中。