どんどん言葉を覚える1~3歳児。実は、身近な大人が何気なくしている声かけによって、心もたくましく育っていきます。ほめ方・叱り方をはじめとするさまざまな「声かけ」の悩みに、親子コミュニケーションの専門家がお答えします。
Q.1 まだ言葉を話せない子にも言葉をかける意味はあるのでしょうか?
Q.3 うちの子はほめられると嫌がって泣きます。どうすればいいでしょうか?
Q.5 出先で叱るとき、周りの目が気になってうまく伝えられません。
Q.6 私はなるべくほめる子育てをしたいと思っているのですが、パパは厳しくて叱ってばかりです。悪い影響があるのではと心配です。
Q.1 まだ言葉を話せない子にも言葉をかける意味はあるのでしょうか?
A.
まだ言葉を話せない0~1歳の時期に、子どもは身近な大人たちの言葉を聞きながら、言葉を吸収(インプット)しています。この時期にたくさんの言葉をかけることで、子どもの中に言葉が蓄積されていき、いずれアウトプットできるようになるのです。
「空、青くてきれいだね」「冷たい風が気持ちいいね」「おばあちゃんに会えてうれしいね」など、体験したことや感じたことを、日ごろから言葉にして伝えるといいでしょう。
Q.2 叱るとき、感情的になってしまいます。
A.
感情は人間だけが持っているすばらしい力です。感情的になるのは悪いことではありません。大切なのは伝え方です。もし腹が立って感情的になった場合は、「ママはすごく腹が立ってイライラしてる!」と、自分(I-アイ)が主語になった言葉(Iメッセージ)で伝えるようにしましょう。
もう一つ大切なのは、怒るときだけではなく笑うときや泣くときも、感情的な表情を子どもに見せることです。おうちの人のそんな姿を見ることで、子どもも感情を豊かに表現できるようになるでしょう。
Q.3 うちの子はほめられると嫌がって泣きます。どうすればいいでしょうか?
A.
もしかすると、ほめられる言葉の中に「嘘」や「社交辞令」を感じ取っているのかもしれません。そんなときは、間接的にほめることをおすすめします。
例えば、上手な絵が描けたとしたら、「上手だね」と直接伝えるのではなく、「あの子、こんなにすてきな絵を描いたの! 私にはない色彩感覚なんだよね。すごいよね!」など、他の家族や祖父母など第三者に伝えてみましょう。そのように話しているのが耳に入ると、直接言われるよりは素直に受け止められるかもしれません。
Q.4 言葉で伝えても、伝わっているのかわかりません。
A.
「伝わっていない」と感じるのは、おうちの人の言葉の中に「言うことを聞かせよう」という意識が働いていて、それを感じ取っているからかもしれません。おうちの人が主体的になった「やらせよう」という一方的な言葉は、子どもに届きづらいのです。
子どもに伝えるときは、「①子どもの気持ちを受け止める ②おうちの人の気持ちを「Iメッセージ」で伝える ③その理由を伝える」の順番で伝えることで、子どもの気持ちを汲み取った声かけになります。ぜひ一度、試してみてください。
Q.5 出先で叱るとき、周りの目が気になってうまく伝えられません。
A.
この時期の子どもには、自分か他人の命の危険があることをしたとき以外は、叱る必要はありません。叱るのではなく、次の順番で伝えましょう。
まずは、「楽しくなっちゃったんだね」など、子どもの今の気持ちを受け止める言葉をかけます。次に、周りに対しておうちの人が謝ります。それから、おうちの人の今の気持ちを、「ママ、ここでは騒いでほしくないんだよね」という「Iメッセージ」で伝えます。その後で、「なぜかというと、ここはご飯を食べるところだからね」と、その理由を伝えます。このように伝えることで、子ども自身がルールを理解し、「ルールを守る心」が少しずつ育っていくのです。
また、そのような状況にならないよう、事前に対策しておくことも大切です。レストランや電車などでの待ち時間も騒がず過ごせるよう、子どもが集中して遊べるシールブックやおもちゃなどを用意しておきましょう。
Q.6 私はなるべくほめる子育てをしたいと思っているのですが、パパは厳しくて叱ってばかりです。悪い影響があるのではと心配です。
A.
夫婦で接し方が異なるのは大きな問題ではありません。ママにはママの接し方があり、パパにはパパの接し方がある。その対応の違いから、この世界にはいろんな人がいるということを子どもは学んでいきます。
もし、「厳しいばかりでなく、ほめる子育てをパパにもしてほしい」とママが考えているのであれば、夫婦で話し合ってみましょう。その際に注意してほしいことがあります。それは、パパに対しても、「叱る子育てってよくないよ!」と否定から入るのではなく、まずは気持ちを受け止めることです。
パパがどんな思いでその接し方をしているのか、初めに話を聞きましょう。それから、自分の気持ちを「Iメッセージ」で伝えて、その理由を話します。こうすることで、お互いの本当の気持ちが伝わりやすくなるでしょう。
天野ひかり先生
上智大学卒業後、テレビ局アナウンサーを6年勤めフリーに。NHK『すくすく子育て』キャスターとしての経験を生かし、全国の親子に寄り添いながら、親子コミュニケーションアドバイザーとして講演会、企業セミナー講師などを務める。著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)など。
イラスト/今井久恵 文/洪 愛舜 構成/童夢
『ベビーブック』2020年12月号「もっとベビーブックwith HugKum」では、年齢別の声かけのコツや思わず叱りたくなるシーンでの対応例など、くわしく解説しています。今日から試せる&この先もずっと使えるコミュニケーションの極意で、親子の時間を楽しく過ごしてみませんか?