これでいい? どうすればいい? みんなが悩む、ほめ方・𠮟り方『ベビーブック2月号』育児特集番外編Q&A

つい感情にまかせて子どもを叱ったり怒ったりしてしまった、いざほめようとするとワンパターンな言葉しか出てこない……。頭ではわかっていてもうまくいかないほめ方・叱り方。児童発達学の専門家が、どうしたらいいか迷いがちなほめ方・叱り方の悩みについて答えます。

 

Q.1 子どものどんなところをほめていいのかわかりません。

Q.2 叱るとき、感情的になってしまい、厳しく叱ってしまいます。これでいいのか悩んでいます。

Q.3 やってはいけないことをしたときに注意しようとしたらすぐに泣いてしまい、話を聞いてくれません。いけないことはいけないと伝えたいのですが、どうすればいいでしょうか?

Q.4  まだ言葉を話せない子に対してほめたり叱ったりすることに意味があるのかと疑問に思っています。何歳ぐらいから理解できるものなのでしょうか?

Q.5 私はなるべくほめる子育てをしたいと思っているのですが、パートナーは厳しく育てたいと考えているようで、よく意見がぶつかります。パートナーの厳しい口調がとても気になるのですが、どうすればいいでしょうか?

Q.6 ほめることは甘やかしになりませんか?

Q.1 子どものどんなところをほめていいのかわかりません。

A.

好奇心をもってお子さんの行動を観察してみると、子どもの小さな成長やがんばっている努力の跡が見えてきます。そんな日常の中にある些細なことに対して、感謝の気持ちを表したりありのままの言葉にして伝えたりしてみるといいでしょう。
また、普段何気なくできていることを「当たり前」とするのではなく、「お昼ごはん全部食べたね」「手をつないで歩けたね」など、日ごろから注目して言葉にするのもいいですね。「できていないこと」に注目して声をかけてしまいがちですが、できるようになったこと、できていることを「当たり前」と流さずに言葉にして伝えてみましょう。

Q.2 叱るとき、感情的になってしまい、厳しく叱ってしまいます。これでいいのか悩んでいます。

A.

わが子のことになるとおうちの人も感情移入しているので、どうしてもイライラしたり強い口調になったりしてしまいますよね。それはある程度仕方がないことです。
ただ、感情的で強い言葉を受けたとき、子どもは「攻撃されている」と不快感や恐怖心を覚えて、何も考えられなくなります。攻撃から自分を守るために脳の考える機能を無意識のうちにフリーズさせてしまうため、どれだけ言葉をかけても子どもには響きません。
イライラしない、感情的にならない、というのは難しいことですが、そのような伝え方をしていると子どもはフリーズして心がどんどん離れていってしまう、ということを、頭の片隅にいつも置いておくといいでしょう。

Q.3 やってはいけないことをしたときに注意しようとしたらすぐに泣いてしまい、話を聞いてくれません。いけないことはいけないと伝えたいのですが、どうすればいいでしょうか?

A.

「叱られる」「攻撃される」という雰囲気を察知すると、自分を守るために感情を司る右脳が爆発して考える左脳を飲み込んでしまう、というのは子どもによく見られる傾向です。こうなると考える脳はフリーズしているので、この状態で話しても意味がありません。
いけないことはいけないと子どもにわかってほしいのであれば、「攻撃される」と判断されないよう、真正面から「ダメ!」と否定するのではなく、第一声では「~がしたかったんだね」と子どもの行動や欲求を受け入れる言葉をかけるといいでしょう。
その上で、好ましくない行動に対しての理由をきちんと説明し、やっていいこと・いけないことの境界線をしっかりと伝えましょう。
既に号泣しているなら、考える脳がフリーズしている状態なので、感情が落ち着くまで待ってから伝えるといいですね。

Q.4  まだ言葉を話せない子に対してほめたり叱ったりすることに意味があるのかと疑問に思っています。何歳ぐらいから理解できるものなのでしょうか?

A.

赤ちゃんは、人の声のトーンに敏感です。生後5か月くらいの赤ちゃんでも、大人が言っている言葉がネガティブな言葉なのかポジティブな言葉なのかを、声のトーンによって聞き分けることができるということがわかっています。
また、生後6~9か月の赤ちゃんを対象にした研究では、日常的に使われている簡単な単語はこの時期すでに理解できている、ということがわかっています。おしゃべりが始まるずっと前から、特定の言葉の意味を理解しているのです。
このように、①感情は声のトーンによって伝わっている、②普段からよく使う言葉の意味は理解できている、という2つの点から、ポジティブな言葉を明るいトーンで話しかけることが大切であることがわかります。0歳の赤ちゃんであっても、「意味がない」ということはありませんよ。

Q.5 私はなるべくほめる子育てをしたいと思っているのですが、パートナーは厳しく育てたいと考えているようで、よく意見がぶつかります。パートナーの厳しい口調がとても気になるのですが、どうすればいいでしょうか?

A.

夫婦とはいえ別の人間なので、やり方や考え方を完全に一致させるのは難しいでしょう。完全一致を求める必要はありませんが、一緒に子育てをしていくチームとして、ある程度は歩み寄れるといいですね。そのためには、話し合いを重ねていくことが大切です。話をするとき、「あなたのこういうところが気になる」という伝え方は、相手からすると自分が批判されていると感じられるので、得策ではありません。
「私は、子どもたちが強い口調で言われたときに悲しそうな顔をしているのを見ると、残念な気持ちになるんだよ」と言ったように、「私」が主語になった言葉で伝えると、建設的な話し合いにつながると考えています。
また、経験談だけを伝えるのではなく、データや立証された研究結果をもとにしながら話すのもよいですね。「こういう研究があったみたいだけど一緒に見ない?」など、エビデンスや第三者の意見を交えながら話すことで、理解や納得がしやすいかもしれません。いろいろなアプローチを試してみてくださいね。

Q.6 ほめることは甘やかしになりませんか?

A.

ほめることが「甘やかし」になるかどうかは、ほめ方によります。具体性に欠ける「おざなりほめ」や、やたらと大げさにほめたたえる「大げさほめ」といったほめ方は「甘やかし」につながることがあります。
結果や能力をほめるのではなく、努力や試行錯誤した手順などの過程をほめる「プロセスほめ」は、「甘やかし」ではなく「励まし」です。自分ががんばってきたことを見てくれている大人が近くにいるということが、子どもの安心感につながります。これは、子どもが羽ばたいていくために大切なこと。安心感があるからこそ、チャレンジできる姿勢が育まれます。つまり、「プロセスほめ」は子どもへの応援の言葉なのです。

 

島村華子先生
オックスフォード大学博士・修士課程修了(児童発達学)。モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育研究者。著書に『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

イラスト/石塚ワカメ 文/洪 愛舜 構成/童夢

「どんな子どもに育ってほしいか」というイメージを持つと、いつものほめ方・𠮟り方が変わってきます。『ベビーブック』2022年2月号「もっとベビーブックwith HugKum」では、子どもの自主性を育てるシーン別のほめ方・叱り方を詳しく解説しています!

 

 

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