毎日のことだからこそ、食にまつわる悩みはつきません。1・2・3歳の食卓が「楽に・楽しくなる」ヒントを、栄養と子どもの発達について研究・発信を行う小児科医がアドバイスします。
Q.2 料理が苦手で毎日の献立をどのように考えればいいのか、いつも悩んでいます。
Q.3 イヤイヤ期が激しく、準備した食事を「イヤ!」と拒否されてしまいます。どうすれば食べてくれますか。
Q.4 自分で食べられるようになるためにやったほうがいいことはありますか?
Q.5 食べる量がとても少ないので心配しています。食に興味がないようで、食べ始めてもすぐ遊び始めて食べようとしません。どうすればいいでしょうか。
Q.6 食べるのにとても時間がかかります。1時間くらいかかる日もあります。どうすれば早く食べてくれますか。
Q.1 好き嫌いが多く、野菜を全く食べません。
A.
野菜を食べないと大きくなれないというわけではありませんが、特に色の濃い緑黄色野菜にはビタミンAやビタミンBなど子どもの成長にとって大切な栄養が含まれているので、なるべく食べてほしいものです。しかし、野菜が苦手な子は多いのではないでしょうか。
野菜は苦味があるものが多く、食べ慣れていない幼児は「食べていいのか」「毒かもしれない」と感じ、拒否してしまうことがあります。これは「新奇性恐怖」という人間に備わっている本能によるものです。味を気にせず食べられるよう、シチューやカレーに入れてみたり、フードプロセッサーでみじん切りにしてハンバーグや餃子に混ぜるなど工夫してみましょう。
他にも食感や硬さが好みに合わないという場合もあるので、茹でたり蒸したり素揚げにしたりと工夫しながら、その子の好みを探してみるのもいいですね。
Q.2 料理が苦手で毎日の献立をどのように考えればいいのか、いつも悩んでいます。
A.
自分のレパートリーを1週間分7種類決めて、それを毎週繰り返すというループでOKです。月曜日はハンバーグ、火曜日は魚の日、水曜日はから揚げの日というふうに決めておくと、毎日悩む必要がなくなるだけでなく、1週間のトータルでバランスよく栄養が摂れるという利点もあります。「今日は魚の日だからこの魚にしよう」というふうに買い物すると、おのずと旬のものを選ぶようになります。旬の食材は栄養価が高いもの。さらに、安く買えるというメリットがあるのもうれしいですね。
Q.3 イヤイヤ期が激しく、準備した食事を「イヤ!」と拒否されてしまいます。どうすれば食べてくれますか。
A.
自我が芽生えて自己主張が激しくなるイヤイヤ期は、何でも「イヤ!」と主張することが多いもの。昨日はおいしそうにぱくぱく食べたものでも、今日は食べないということもよくあります。深刻になりすぎず、「そっか、そんな日もあるよね!」と気楽に捉えること。温度や硬さが嫌だった、ということもあるので、「これならどうかな?」とゲーム攻略のように楽しんでみるのも一つの方法ですが、「でもこれしかないの、ごめんね~」と割り切っても構いません。本当にお腹が空いたら食べるものです。
一つだけ約束していただきたいのは、座るのを嫌がるからといって立ちながらや歩き回りながら食べるのはしないこと。立ち歩きしながら食べると喉に詰まらせ命の危険につながることがあります。食べるときは座る、立ち上がるなら食べない。これは厳守してください。
Q.4 自分で食べられるようになるためにやったほうがいいことはありますか?
A.
自分で食べられるようになるためにおすすめしたいのは、1歳半~2歳半ごろの時期に汚れを気にしないで「好きに食べさせる」ことです。この時期にしっかりと手づかみ食べをさせているほうが、自分で食べられるようになるといわれています。汚れるのを気にしておうちの人がずっと食べさせていたり、「手が汚れているから顔を触らないで!」など逐一言葉をかけたりすると、「自分で食べたい」という意欲が育ちません。
とは言え、汚れると後始末が大変ですよね。なるべく片づけやすいように床に新聞紙を敷いておいたり、スモックタイプのエプロンを着せたりして、負担が少なくなる方法を工夫してみましょう。
Q.5 食べる量がとても少ないので心配しています。食に興味がないようで、食べ始めてもすぐ遊び始めて食べようとしません。どうすればいいでしょうか。
A.
食べているときにすぐに遊び始めてしまうなら、まずは食事中の環境を見直してみましょう。目の見える範囲におもちゃなど遊ぶものがあったりテレビがついていたりすると、そちらに気が散ってしまって食べることに集中できません。また、足がつかない椅子に座っている場合も、落ち着かず集中が途切れてしまいます。
子どもの身長に合った足がぴったりとつく椅子を用意して、テレビを消す、テーブルの上を片づける、おもちゃなどがなるべく視界に入らないようにするなど、環境を工夫しましょう。足がぶらつかないよう足台を置くのも良い方法です。
おもちゃで遊ぶのではなく、食べ物で遊んでいるようにみえる時があります。しかし、例えば食べ物を握ってぐちゃっとつぶしたりべったりと塗りつけたりする行為は、実は遊んでいるのではなく学んでいる行為です。「豆腐は柔らかいのでそっとつままないとつぶれてしまう」ということを、大人はもう知っていますが、子どもは自分でやってみて初めて知るのです。手づかみをして実際に触ってみるのは大切なことなので、経験させておく必要があるのです。
Q.6 食べるのにとても時間がかかります。1時間くらいかかる日もあります。どうすれば早く食べてくれますか。
A.
3歳くらいまでの子どもの集中力が続くのは、長くて10~15分程度です。食事の時間がこれ以上かかっているのなら、盛っている量が多すぎるのかもしれません。この時間内に食べられる分だけ食べて、集中力が途切れてしまったらそこで切り上げ、残った分は小分けにしてとっておきましょう。
幼児は胃袋の発達が未熟なので、一度にたくさんの量を食べることができません。「朝・昼・夜」の三食に捉われることなく、「朝・午前・昼・午後・夜」という風に10時と15時の時間に小さいおにぎりなどを捕食として食べる、といった工夫をしてみるといいでしょう。
工藤紀子先生
小児科専門医・医学博士。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。現在2児の母。著書に『できる子どもの最強ごはんとおやつ術』(文友舎)など多数。
イラスト/熊本奈津子 文/洪愛舜 構成/KANADEL
『ベビーブック』2023年8月号「もっとベビーブックwith HugKum」では、1・2・3歳の食事によくある悩みや、なんとなく「こうあるべき」と思っている幼児食の常識について工藤先生が小児科医の視点から解説! 成長に必要な栄養素を食事で摂るコツも紹介しています。