どうする? イヤイヤ期 『ベビーブック9月号』育児特集番外編Q&A

イヤイヤ期が子どもの発達に重要な時期だと知っていても、親にとっては毎日の「イヤ」に困ったり、ついイライラしたりしてしまうもの。この時期の乗り切り方、向き合い方を、子どものこころ専門医がアドバイスします。

Q.1 イヤイヤがひどいとき、気をそらすためにスマホを使ってもいいでしょうか?

Q.2 下の子が生まれてからイヤイヤがひどくなりました。どうすればいいですか?

Q.3 電車やレストラン、スーパーなど、外出先でイヤイヤが出たときはどうすればいいですか?

Q.4 まだできないことを自分でやりたがるときは、どうすればいいですか?

Q.5 2歳を過ぎても目立ったイヤイヤがないのですが、大丈夫でしょうか?

Q.6 着替えや入浴など、生活習慣としてやるべきことを嫌がるときは、どうすればよいですか?

Q.1 イヤイヤがひどいとき、気をそらすためにスマホを使ってもいいでしょうか?

A.

本当にひどい状況になりそうな場合にスマホの力を借りるのは悪いことではありません。ただし、イヤイヤ期というのはただ「しのいで卒業する」というものではなく、やりたいという気持ちと実際に自分ができることとのギャップの中で葛藤する過程が、発達において重要な役割を持っています。自分の気持ちにより詳しく気づいたり、それに対して見守ってくれる人の存在を感じたり、そのような気づきや周りのサポートを借りながら自分の中で起こっている竜巻をこうすればやり過ごすことができるという自信を得たりと、その過程でさまざまな力を獲得していくのです。ですので、スマホを使うことに強い罪悪感を持つ必要はありませんが、なるべくお子さんに向き合いながら、「どうしても無理」のお守りとしてスマホを用意しておくといいかもしれないですね。

Q.2 下の子が生まれてからイヤイヤがひどくなりました。どうすればいいですか?

A.

下のお子さんが生まれるということは、この時期の子どもにとってはまるで天変地異が起きたような危機的な状況なのかもしれません。なぜなら、これまで自分が世界の中心であったのが、突然そうではなくなってしまうのですから。そのことを踏まえて、哺乳瓶を使いたいなら使わせてあげる、おむつに戻りたいなら戻してあげる、抱っこを望むなら抱っこしてあげるなど、子どもの心境になるべく寄り添う対応を心がけるといいでしょう。多くの場合、これがずっと続くということはなく、数か月の単位でいずれ必ず収まります。
とはいえ、新しい家族を迎え、このような対応をするだけの時間的・物理的なリソースが家庭内だけで足りないことも当然あると思います。そんなときには、家事をしてもらうサービスや下の子を一時的にシッティングしてもらうサービスなど、外部の力も有効に利用できるといいですね。

Q.3 電車やレストラン、スーパーなど、外出先でイヤイヤが出たときはどうすればいいですか?

A.

気持ちを切り替えるための方法を日ごろから用意しておくといいかもしれません。お気に入りの歌を歌う、手触りのよい柔らかいものを握る、こめかみを3回トントントンと叩く、膝の上に座ってハグをするなど、複数のパターンで用意しておき、いろいろと試してみましょう。
電車やレストラン、スーパーは、子どもにとって魅力が多く、かつストレスも多い場所です。そういうところで「イヤ!」「自分で!」「もっと!」などのという感情が出るというのは、子どもたちにとって当然の権利であるともいえます。ですので、われわれ大人のほうが、「イヤイヤしてもいいよ」と受け入れる文化を作っていけたらと私は考えます。

Q.4 まだできないことを自分でやりたがるときは、どうすればいいですか?

A.

例えできないことだとしても「やりたい」という気持ちを尊重して目立たない程度にアシストし、「わー! ここまでできたね! 次はできるといいよね!」と全力で応援してあげることが、「自分ならできる」という気持ちを育むうえでとても大切です。「見守っているよ」という姿勢を見せることで信頼関係を作り、サポートを受けながらも「できたよ」という達成感を持てるよう意識しましょう。
とはいえ、毎日のスケジュールの中で急いでいたり余裕がなかったりするときもありますよね。時間がないときは、「やりたい」という気持ちを尊重しつつ、折り合いをつけながら達成感を得られるよう、最後の1ステップを手伝ってもらう、などの創意工夫をしてみるといいかもしれません。

Q.5 2歳を過ぎても目立ったイヤイヤがないのですが、大丈夫でしょうか?

A.

イヤイヤ期の「イヤイヤ」は、やりたい・できるはずという気持ちと、実際に自分ができることとのギャップの中で生まれる葛藤の表れです。その表れ方は子どもによってそれぞれ異なります。「イヤ!」と癇癪を起こす子もいれば、ひとり遊びにより没頭する子、ひとりでブツブツ話す子、歌を歌う子、よく寝るようになる子、食べなくなる子など、さまざまです。いろいろな葛藤の表出の仕方があるので、典型的な「イヤ」が出ないこと自体に、大きな不安を抱かなくても大丈夫です。
一方で、2歳を過ぎても言葉が出ていない、目が合わなくて相互のやり取りができにくい、「イヤイヤ」で自分を傷つける、親御さんやお友だちを叩くことが続くなど、おうちの人にとって心配な状況が続く場合は、支援センターやかかりつけ医、保育園・幼稚園の先生などに相談してみてもいいでしょう。

Q.6 着替えや入浴など、生活習慣としてやるべきことを嫌がるときは、どうすればよいですか?

A.

気分を変えて楽しみながら取り組めるよう工夫してみましょう。例えば着替えなら「ママがこのパジャマを着るのと君がパパにズボンを履かせてもうらうの、どっちが早いか、競争ね! よーいドン!」と誘ってみたり、歯みがきなら歯ブラシを2本用意しておいて「今日はどっちで磨く?」と選べるようにするなど、生活習慣の練習の中に楽しさを組み込んでいけるといいでしょう。そのうえで、できたことに対して「こんなに早くズボン履けるの? かっこいいね!」など、しっかりとほめてあげることで、「自分ならできる」という自己効力感が育まれていきます。
いろいろ試したうえでどうしてもダメなら、「たまにはお風呂に入らなくてもいいかな」「晴れた日に長靴をはいてもいいか」というふうに、完ぺきにできない日があってもいいと、大人側の「できなきゃイヤ」を少し緩めてみてもいいかもしれませんね。

山口有紗先生
小児科専門医、子どものこころ専門医。東京大学医学部附属病院小児科などを経て、現在は子どもの虐待防止センターに所属し、地域の児童相談所や一時保護所での相談業務などを行なっている。

イラスト/石塚ワカメ 文/洪愛舜 構成/KANADEL

『ベビーブック』2023年9月号「もっとベビーブックwith HugKum」では、なぜこの時期に「イヤ!」が増えるのか、そして今後どうなっていくのかを発達の段階を追って詳しく解説しています。親子それぞれのイヤイヤ期の「困った」を解消するアドバイスが盛りだくさんです。

育児特集 番外編Q&A【もっと教えて、先生!】全記事リストはこちら

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