ひとりっ子でも、きょうだいがいても、「こんなときはどうすればいいの?」と疑問に思うことは多いもの。それぞれのよさを生かすには、どんな関わり方をすればよいのでしょうか。3児のパパでもある保育士&ベビーシッターが、おうちの方のお悩みにお答えします。
Q.1 きょうだいで興味がある遊びが違うときはどうすればよいですか?
Q.2 うちの子はひとりっ子で、自分からお友だちの輪に入っていくことがなかなかできません。
Q.3 ひとりっ子だと親がつい先回りして手助けをしてしまい、自立の妨げになるのではと心配です。
Q.4 周囲から「きょうだいがいないのはかわいそう」と言われて、ひとりっ子のままでいいのか悩んでいます。
Q.5 第2子を妊娠中で、子どもと体を使う遊びができなくなり、がまんさせることが増えているのが気がかりです。
Q.6 上の子に対して「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」という言い方で、がまんをさせたり、お願いをしたりしてもよいのでしょうか?
Q.7 きょうだいの年齢差によって、子育てにはどんな違いがありますか?
Q.1 きょうだいで興味がある遊びが違うときはどうすればよいですか?
A.
きょうだいで興味がある遊びや見たい動画などが違うのは、それぞれに意思があるということなので、とてもよいことです。ただ、おうちの方としては対応に困ることもあるかもしれません。そんなときは、おうちの方が一方的に指示を出すのではなく、子どもたちと話し合いながら、「何時までは○○ちゃんが好きなこの遊びをして、何時からは△△ちゃんが好きなこの遊びをしようね」とルールを決めておくのも一つの方法です。時計にシールを貼って「短い針がここまで来たら」と伝えたり、時計の針の位置を紙に描いて説明したりすると、小さい子でも時間の感覚をつかみやすくなります。
ただし、このルールはあまり厳しくしすぎずに、お子さんが「あと1回だけやりたい」といったリクエストをしてきたときは、その気持ちも受け止めて柔軟に対応しましょう。“いい加減”の塩梅を心がけると、若干の例外はありながらも大体はルールを守れることが増えていくはずです。
Q.2 うちの子はひとりっ子で、自分からお友だちの輪に入っていくことがなかなかできません。
A.
お子さんが一人遊びを楽しんでいるのであれば、無理にお友だちと遊ばせようとする必要はありません。今後、気の合う子と出会えば一緒に遊び始めるかもしれませんし、ずっと一人遊びを続けていても、それは一人で夢中になって遊べる才能があるということなので、心配しすぎなくても大丈夫です。
本当はお友だちが欲しいのになかなかお友だちの輪に入れずにいるのであれば、今いる場所のほかにも、いろいろな環境にふれさせてみましょう。今、周囲に気の合う子がいなかったとしても、いつもとは違う公園に出かけてみたり、おうちの方の友人のお子さんと会ってみたりすると、世界が広がって気の合う子が見つかるかもしれません。同じ場所に行ったことがある子や同じ経験をしたことがある子同士は仲よくなりやすいので、さまざまな経験をして世界を広げておくことは、将来の友だちづくりにもきっと役立つはずです。
Q.3 ひとりっ子だと親がつい先回りして手助けをしてしまい、自立の妨げになるのではと心配です。
A.
子どもが水の入ったコップを運ぼうとしたとき、おうちの方が「こぼすからママが持ってあげる」とすぐに手を差し伸べると、子どもはコップの水をこぼすという経験を通じて学べたはずのことを学べなくなってしまいます。子どもの「自分でやりたい」という気持ちを尊重するために、おうちの方は「何もしない勇気」を持ちましょう。子どもは自分で失敗する経験を通じて学んでいくものなので、身の安全が確保されている場面では「失敗してもいいから自分でやってごらん」というおおらかな眼差しで見守ってあげてください。
Q.4 周囲から「きょうだいがいないのはかわいそう」と言われて、ひとりっ子のままでいいのか悩んでいます。
A.
きょうだいがいればきょうだい同士でさまざまな体験を共有できる楽しさがある一方で、ひとりっ子はおうちの方の愛情をひとり占めできて気持ちが満たされて育つというよさがあります。きょうだいがいてもいなくても、どちらでも寂しくはないので、「かわいそう」という言葉は気にしすぎなくても大丈夫ですよ。
このお悩みは、ひとりっ子のままでいいのかどうかが問題なのではなく、おうちの方自身の生き方や考え方が周囲の意見に左右されてしまってよいのかが問われているように思います。自分はどんな子育てをしたいのかということは、おうちの方自身が決めてよいことです。周囲の顔色をうかがうために外側に向けているセンサーを自分の内側に向けて、「自分は本当はどうしたいのだろう?」ということをじっくり考えてみてくださいね。
Q.5 第2子を妊娠中で、子どもと体を使う遊びができなくなり、がまんさせることが増えているのが気がかりです。
A.
子どもとの遊びを「0」か「10」かで考えると、妊娠中は「10」のパワーを必要とするダイナミックな運動遊びはできないので「遊べなくてごめんね」となってしまうかもしれませんが、「4」か「5」くらいのレベルの遊びができればOKと考えると、気が楽になるのではないでしょうか。体を使う遊びができなくても、子どもの興味のあるものに関する動画を一緒に見たり、絵本を読んだりするなど、おうちの方と楽しく過ごせる時間があれば子どもの心は満たされます。無理のない範囲で、親子で一緒に楽しめる遊びを探してみましょう。
Q.6 上の子に対して「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」という言い方で、がまんをさせたり、お願いをしたりしてもよいのでしょうか?
A.
「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」というのは、大人の側から見た理由づけにすぎません。こういう言い方はしないという選択肢もあることを、おうちの方には知っておいてほしいと思います。上の子はたまたま先に生まれただけであって、下の子と同じようにおうちの方に甘えたい気持ちもありますし、「自分のことを見てほしい」という気持ちもあります。「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」という役割を果たすことを期待するのではなく、その子自身の気持ちを受け止めるような関わり方を意識できるといいですね。
「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」という呼び方をする場合は、「お兄ちゃんだけど、できないこともあるよね」「お姉ちゃんも普段はがんばっているから甘えたくなるんだよね」というようなニュアンスで話すことをおすすめします。
Q.7 きょうだいの年齢差によって、子育てにはどんな違いがありますか?
A.
年齢差が1~3歳くらいの場合は、下の子が生まれる時期が上の子のイヤイヤ期と重なることが多く、おうちの方にしてみると何かと手がかかるものの、子どもたちが手を離れるのも早いというメリットがあります。年齢が近いゆえにきょうだいげんかも多くなりがちですが、大きくなってから振り返ると、そうした経験から学べたことも多いと思えるのではないでしょうか。
年齢差が4歳以上ある場合は、下の子のお世話に手がかかる時期には上の子に簡単なお手伝いをお願いすることも可能になり、おうちの方としては助かる場面も多いかもしれません。ただ、下の子のお世話で忙しそうなおうちの方を見て、上の子が自分の気持ちを言うことを我慢してしまうケースも多いので、スキンシップなどを通じて上の子がおうちの方に甘えられる時間をつくることも意識しましょう。
傳宝光先生
保育士として保育園・幼稚園・放課後等デイサービスにて10年間勤務し、ベビーシッター業を開始。これまでに1800組以上の親子をサポートする。3児の父。
イラスト/うつみちはる 文/安永美穂 構成/KANADEL
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