ほめない・叱らない、アドラー心理学に基づく子育てとは? 『ベビーブック2・3月合併号』育児特集番外編Q&A

アドラー心理学に基づく子育てでは、上からの目線で子どもをほめたり叱ったりすることはせず、大切な友人に接するように対等な立場から関わることが望ましいとされています。家庭で実践する際の考え方や関わり方のポイントを、アドラー心理学研究の第一人者がアドバイスします!

Q.1 イヤイヤ期を乗り切るために、アドラー心理学の考え方で知っておくとよいことはありますか?

Q.2 私自身はほめたり叱ったりせずに、子どもと対等に向き合いたいと思っているのですが、パートナーや祖父母はほめたり叱ったりすることも必要だと言います。考え方が合わない場合はどうすればよいのでしょうか?

Q.3 子どもを叱らずに育てると、わがままに育ってしまわないか心配です。

Q.4 これまでの子育てでは叱ることが多かったので、子どもを傷つけてしまったのではないかと後悔しています……。

Q.5 うちの子は好き嫌いが多く、食事のときはいつもイライラしてしまいます。どうすればイライラせずにすむのでしょうか?

Q.6 子どもを「見守る」ことと「放任する」ことは、どのような点が違うのでしょうか?

Q.1 イヤイヤ期を乗り切るために、アドラー心理学の考え方で知っておくとよいことはありますか?

A.

おうちの方は子どもがイヤイヤをしているときに注目しがちですが、それでは子どもは「イヤイヤをすればママやパパが自分のことを見てくれる」と学んでしまい、イヤイヤがひどくなりかねません。子どもが機嫌よくしているときに注目して、「静かにしてくれてありがとう」と声をかけると、子どもはおうちの方の注目を引くためにイヤイヤをする必要はないと学びます。困ったときは、「静かにしてくれませんか?」と対等な立場からお願いし、子どもがそのお願いを聞いてくれたら「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えましょう。

イヤイヤ期は「うちの子は一日中イヤイヤがひどい」と感じるかもしれませんが、冷静に考えてみると実際に泣いていた時間は5分間だけだったということもあります。子どもが泣いている時間の長さを正確に把握して「泣いていない時間もこれだけある」とわかれば、機嫌よく過ごしてくれていることに「ありがとう」と言える時間が増え、子どもが自分自身を好きになるために欠かせない貢献感を与えることもできるでしょう。

Q.2 私自身はほめたり叱ったりせずに、子どもと対等に向き合いたいと思っているのですが、パートナーや祖父母はほめたり叱ったりすることも必要だと言います。考え方が合わない場合はどうすればよいのでしょうか?

A.

「子どもが自立できるように、対等な立場からのコミュニケーションをして育てていきたい」という自分の意見を説明しても理解してもらえないようであれば、理解が得られる日が来るのを待ちましょう。ほめたり、叱ったりせずに、子どもを勇気づけるコミュニケーションをしていくことで、親子関係がよい方向へ変わっていくことに気づけば、周囲の方々の反応も変わってくるかもしれません。

子どもは、世の中に1人でも自分を対等に見てくれる人がいると知っていれば、困難をくぐり抜けることができます。おうちの方は保護者であると同時に、子どもの大切な友達のような存在になるつもりで、対等なコミュニケーションを心がけてほしいと思います。

Q.3 子どもを叱らずに育てると、わがままに育ってしまわないか心配です。

A.

子どもを「叱らない」ことは、わがままな行動を何でも許容することではありません。子どもの行動で改めてほしいことがあれば、「こういうふうにしてくれませんか?」とお願いしたり、子どもが正しいやり方をまだ知らないのであれば具体的に教えたりすることが大切です。

子どもをくり返し叱らなければならないのは、「叱る」というやり方では、おうちの方の「そういうことはしないでほしい」という気持ちが子どもに伝わっていないことの表れです。威圧的な態度で叱ることが習慣になると親子の心理的距離が離れてしまい、必要なときに必要な援助をしにくくなってしまうので気をつけましょう。

Q.4 これまでの子育てでは叱ることが多かったので、子どもを傷つけてしまったのではないかと後悔しています……。

A.

おうちの方がこれまで子どもを叱って育ててきたのは、アドラー心理学のような考え方があることを知らなかっただけであり、悪い親だったというわけではありません。ですから、自己嫌悪に陥るのではなく、「今日から少しずつ叱らない関わり方を練習してみよう」と考えてみてはいかがでしょうか。

完璧な子育てができる親はいないと思いますが、それでも子どもはきちんと成長していきます。おうちの方は「私がこの子をきちんと育てなければ」と気負わずに、「この子が自分で育っていくお手伝いをする」と考え、肩の力を抜いて、子どもと向き合っていけたらいいですね。

Q.5 うちの子は好き嫌いが多く、食事のときはいつもイライラしてしまいます。どうすればイライラせずにすむのでしょうか?

A.

大人は子どもの行動の不適切な面に目を向けがちですが、その行動の適切な面に目を向けてみましょう。今は「好き嫌いが多い」という不適切な面に目が向いているかもしれませんが、「今日も親子で一緒に食事ができた」という見方をすることもできます。見方を変えると、子どもの行動の不適切な面に注目する回数が減っていき、親子の関係がよくなりますし、子どもが不適切な行動をすることでおうちの方の気を引こうとすることも減っていきます。

好き嫌いは成長とともに変わることも多いため、「これを食べさせなければ」と深刻に考えすぎず、子どもと一緒に食事を楽しめる「今」という時間を大切にしましょう。そのことが結果的に、食事のときに子どもにかかるプレッシャーを軽減し、「食べてみよう」という意欲を引き出すことも多いものです。

Q.6 子どもを「見守る」ことと「放任する」ことは、どのような点が違うのでしょうか?

A.

「見守る」とは、子どもが何をしたいのか、そのためにはどんな課題をクリアする必要があるのかをおうちの方は知っているけれど、すぐに口出しはせずに、子ども自身がその課題に取り組むのを待っている状況のことをさします。この場合、ほめる・叱るという関わり方はしなくても、子どもが援助を求めてきたら必要な手助けをしたり、子どもができるようになったことがあれば一緒に喜んだりするなど、おうちの方はさまざまな関わりを通じて子どもと心を通わせることができます。

一方の「放任する」とは、子どもが何をしようとしているのかということ自体を知らないという状況です。これでは子どもが助けを求めていても、おうちの方は必要な援助ができません。1~3歳の子育てでは、子どもの身の安全を守り、親子間の愛着を形成する上でも「余計な口出しはしないけれど目は離さない」という姿勢を心がけるのがよいでしょう。

 

岸見一郎先生
哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。子育て中にアドラー心理学に出合う。『改訂版 叱らない子育て』(Gakken)など著書多数。

イラスト/uwabami 文/安永美穂 構成/KANADEL

ほめたり叱ったりしない、アドラー心理学に基づく子育ては、多くのおうちの方にとってまだ馴染みのないものかもしれません。『ベビーブック』2・3月合併号「もっとベビーブックwith HugKum」では、従来の子育てではほめたり叱ったりするような場面で実践すべき「勇気づけ」の具体的な方法について詳しく解説しています!

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