ひとりっ子にはひとりっ子の、きょうだいにはきょうだいの、子育てをするうえでの悩みがあるものです。それぞれの子育てで知っておくとよいことを、発達心理学・家族心理学の専門家がアドバイスします。
Q.2 下の子が生まれたら、上の子が赤ちゃん返りをして困っています。
Q.3 上の子に「お兄ちゃん・お姉ちゃんなんだから」という言い方をするのは避けたほうがよいのでしょうか?
Q.5 上の子から「私と○○ちゃん(下の子)とどっちが好き?」と聞かれました。どう答えればよいのでしょうか?
Q.6 ひとりっ子なので、親子が1対1で向き合う時間が長く、気づまりに感じるときがあります。
Q.1 きょうだいげんかには、どう対応すればいいですか?
A.
ケガをしそうなほどの激しいけんかになっている場合は、子どもの身の安全を守るために、大人が仲裁する必要があるでしょう。そこまでの激しさではないのであれば、けんかはコミュニケーションの方法を学ぶ機会でもあるので、気持ちの余裕があるときであれば、おうちの方は一歩引いたところから見守るのがよいのではないでしょうか。
子どもが自分の気持ちをうまく伝えられずにいるときは、「○○ちゃんは、このおもちゃを取られたのがイヤだったんだよね」というように、おうちの方が間に入って子どもの気持ちを代弁すると、子どもたちは互いの気持ちを確認する助けになります。
Q.2 下の子が生まれたら、上の子が赤ちゃん返りをして困っています。
A.
人間の子どもは、生きるためにさまざまな援助を必要とする状態で生まれてくるため、周囲の大人にしっかり保護してもらわなければなりません。上の子にとって、自分より手のかかる赤ちゃんが生まれることは、「自分は見捨てられてしまうかもしれない」という危機的状況に陥る出来事です。そのような状況の中で起きる赤ちゃん返りは、上の子が「自分はまだこんなに手がかかる存在なんだよ」と周囲の大人にアピールして自分に関心を向けようとする、生きものとして真っ当な反応だといえます。
おうちの方としては「これくらいのことは自分でできるでしょ!」と言いたくなるかもしれませんが、上の子にしてみれば危機的状況の中で赤ちゃん返りをせざるを得なくなっていることを理解することが大切です。下の子が眠っているときに上の子のためだけに絵本を読んであげるなど、1対1で向き合う時間をつくり、上の子の気持ちに寄り添うことを意識してみましょう。
Q.3 上の子に「お兄ちゃん・お姉ちゃんなんだから」という言い方をするのは避けたほうがよいのでしょうか?
A.
家族でケーキを切り分けて食べるときに、「お兄ちゃん・お姉ちゃんは大きいから、いちばん大きいケーキを取っていいよ」と声をかけるなど、上の子に特権があるような言い方をすることは避けましょう。このような言い方を繰り返すと、上の子が「自分は兄・姉だからこういうことをしても許される」という考え方をするようになってしまうこともあるため注意が必要です。
また、「お兄ちゃん・お姉ちゃんなんだからがまんして」と言われることが続くと、上の子はおうちの方の期待に応えようとして、いろいろなことをがまんしてしまうことがあります。そのことを理解して、上の子が本当の気持ちを言えるように、スキンシップも含めて丁寧なフォローをしていけるといいですね。
Q.4 ひとりっ子はわがままになりそうで心配です……。
A.
世間では「ひとりっ子はわがままになりやすい」というイメージがあるかもしれません。しかし、イメージの先行が原因となって「わがまま」に見える部分が強調されやすい一面もあるため、おうちの方はあまり心配しすぎないほうがよいでしょう。わが子の個性やよいところに目を向けて、“ひとりっ子だから”ということにとらわれすぎずに接することが大切です。
Q.5 上の子から「私と○○ちゃん(下の子)とどっちが好き?」と聞かれました。どう答えればよいのでしょうか?
A.
その場のことだけを考えると、「あなた(上の子)のことが好きよ」と答えたほうが上の子は喜ぶかもしれませんが、きょうだいのどちらが愛情をより多く得ているかを競うような意識を植え付けることは、おうちの方の本意ではないと思います。このような質問に対しては、「もちろん、あなた(上の子)も○○ちゃん(下の子)も両方大好きだよ」と答えて、「2人とも同じように好き」ということをはっきり伝えておくとよいでしょう。
ただ、おうちの方が下の子のお世話にかかりきりになっていて、上の子と一緒に過ごす時間が少なくなっているような状況の場合は、上の子がおうちの方の意識を自分に向けてほしいと思って、このような質問をすることも考えられます。その場合は、上の子とのスキンシップを増やすなどして、上の子に愛情を伝える機会を意識的に増やしていきましょう。
Q.6 ひとりっ子なので、親子が1対1で向き合う時間が長く、気づまりに感じるときがあります。
A.
1対1で向き合う時間ばかりが長く続くのは、おうちの方にとっても子どもにとっても、あまりよいことではありません。自分ひとりだけでどうにかしようと思わずに、「みんなで子育てをする環境をつくろう」と意識を切り替えてみることをおすすめします。地域の子育てひろばに出かけてみると、同じような年齢の子どもを持つ方と交流できますし、悩んでいることについて専門のスタッフに相談することもできます。近所に祖父母やママ友などの頼れる人がいる場合は、一緒に過ごす時間を増やしてみるのもよいでしょう。
小島康生先生
中京大学心理学部教授。博士(人間科学)。臨床発達心理士。発達心理学、家族心理学を専門とし、多角的な視点から発達研究に取り組む。2人の子の父。
イラスト/Umito 文/安永美穂 構成/KANADEL
ひとりっ子・きょうだいの子育ての違いを知っておくと、わが子の置かれた状況に合った関わり方ができるようになります。『ベビーブック』2024年12・1月合併号「&ベビー」では、関わり方のポイントを解説しています!