「わが子の強みを伸ばしたい」「自己肯定感を高めたい」と思っていても、日常生活の中でどう関わればいいのか迷うことは多いもの。子どもの強みを伸ばすために1~3歳のうちからできることについて、グローバル人材の育成に取り組む専門家がアドバイスします。
Q.1 子どもの強みを伸ばすため、習い事選びで気をつけることは?
Q.2 子どもの自信につながる成功体験を積ませるために、1~3歳の時期から家庭でできることはありますか?
Q.3 強みを伸ばそうとする働きかけが、子どもの負担にならないようにするために、意識しておくとよいことはありますか?
Q.4 守るべきルールはきちんと身につけてほしいのですが、子どもの自己肯定感を損ねずに「ダメなものはダメ」と伝えるにはどうすればよいですか?
Q.5 親の自己肯定感が低くても、子どもの自己肯定感を高め、強みを伸ばしていくことはできますか?
Q.6 親は物静かなタイプなのに、子どもは活発なタイプです。親子の気質の違いを受け入れたうえで、子どもの強みを伸ばしていくにはどうすればいいですか?
Q.1 子どもの強みを伸ばすため、習い事選びで気をつけることは?
A.
習い事は「現時点で好きなことのスキルをさらに伸ばす」という視点で選びましょう。体を動かすことが好きな子なら運動系の習い事を選ぶと楽しめる可能性が高いですし、内気な性格の子ならピアノやお絵描きといった一人でできる習い事を選ぶと落ち着いて取り組めるでしょう。
小学生になると、子どもは周囲と自分を比較できるようになり、「上には上がいる」という現実を知って自信が揺らぎやすくなります。その際にあまり動じないようにするには、未就学児の時期に「自分はできる」という成功体験を積み重ね、自己肯定感を高めておくことが大切です。
いろいろな習い事を片っ端から試すのは、向いていないことに挑戦させて失敗経験を増やす結果につながりやすいため、あまりおすすめできません。また、「周囲の皆がやっているから」という理由で習い事を選ぶこともミスマッチの原因になります。「広く浅く」ではなく、「自分はこれなら誰にも負けない」と言えるものを何か一つ見つけてあげるつもりで、本人の好きなことに取り組める環境を用意できるといいですね。
Q.2 子どもの自信につながる成功体験を積ませるために、1~3歳の時期から家庭でできることはありますか?
A.
食卓にスプーンや箸を並べる、洗濯物をたたむなどの簡単なお手伝いを子どもにお願いしてみましょう。そして、子どもが手伝ってくれたら、「助かったよ、ありがとう!」と感謝の気持ちを伝えて、ギュッと抱きしめてください。これを習慣にすることで、子どもは「できた!」という成功体験を積み重ねることができ、スキンシップを通じておうちの方の愛情を感じる機会も増えていきます。
1~3歳のうちは、おうちの方の期待どおりにうまくできないこともあるかもしれません。その場合も、おうちの方がその場でやり直すことはせずに、手伝ってくれたことへの感謝を伝えることが大切です。やり方を教える場合は、子どもがしてくれたことをやり直すのではなく、おうちの方が新たに取り組む様子を見せながら丁寧に説明すると、子どものプライドを傷つけずにすみます。
Q.3 強みを伸ばそうとする働きかけが、子どもの負担にならないようにするために、意識しておくとよいことはありますか?
A.
1~3歳の時期は、スキルの上達といった目に見える形での成果を子どもに求めることよりも、スキンシップの時間をたっぷりとって、良好な親子関係を築くことを第一に考えましょう。おうちの方が子どもに直接、何かを教えようとすると、うまくできなかったときに感情的な対応をしてしまうこともあります。イライラしてしまうようであれば、おうちの方は子どもの強みを伸ばせる環境を用意することに専念して、指導そのものは習い事の先生などのプロに任せるといった判断をすることも大切です。
Q.4 守るべきルールはきちんと身につけてほしいのですが、子どもの自己肯定感を損ねずに「ダメなものはダメ」と伝えるにはどうすればよいですか?
A.
子どもは社会的ルールを知らないだけなので、ルールを伝える必要があります。例えば、「外を歩くときは、道路で急に走り出すと車とぶつかって危ないから、ママと手をつないで歩こうね」、「これから行く親子教室では、先生やお友だちと体操をしたり歌を歌ったりするよ。お教室では先生のお話を聞くのがお約束だよ」など、お出かけ前にはその場所での過ごし方のルールを前もって言葉で丁寧に説明しておきましょう。そして、そのルールを守ることを子どもと約束してから出かけるようにします。
もしも約束したことが守れなかった場合には、落ち着いて話ができる場所に移動してから、「こういう約束をしたけれど守れなかったよね」と、約束を守れなかったことを叱ります。このような叱り方をすれば、子どもの人格を否定することなく、「約束したことは守らなければならない」ということを教えることができ、子どもの自己コントロール能力を高めることにつながります。
Q.5 親の自己肯定感が低くても、子どもの自己肯定感を高め、強みを伸ばしていくことはできますか?
A.
自己肯定感は遺伝するものではないため、親の自己肯定感が低いからといって心配する必要はありません。親自身の自己肯定感が低くても、子どもに愛情を伝えることはできます。子どもに「大好きだよ」という気持ちを伝え、たくさんスキンシップをすることで、根拠のない自信を育むことができれば、それが強みを伸ばすための土台になります。
ただ、親子や夫婦の会話の中で、ネガティブな話題や「私なんて」と自分を卑下するような言い方を繰り返すと、それを聞いている子どもも同じような考え方をする癖がついてしまうかもしれません。ネガティブな話題を取り上げるときは、子どもがいない場所で話すようにしましょう。
Q.6 親は物静かなタイプなのに、子どもは活発なタイプです。親子の気質の違いを受け入れたうえで、子どもの強みを伸ばしていくにはどうすればいいですか?
A.
おうちの方だけで子育てを抱え込まず、周囲の力を借りることを検討してみましょう。体を動かせる習い事を始めるのもいいですし、パートナーや友人が運動好きであれば子どもを外遊びに連れ出してもらうという方法もあります。子どもに新しい体験をさせようとして、おうちの方が苦手なことまで無理にがんばろうとすると、子育てが大変なものになってしまいます。おうちの方が機嫌よく過ごすことで、子どもも安心して自分の好きなことに取り組めるようになるので、遠慮なく助けを求めましょう。
船津徹先生
TLC for Kids代表。日本、アメリカ、中国の教育現場で30年にわたってグローバル人材の育成に取り組む。著書に『「強み」を生み出す育て方』(ダイヤモンド社)など。
イラスト/瀬戸めぐみ 文/安永美穂 構成/KANADEL
わが子の気質を理解しておくと、子どもに合った関わり方をすることで、強みを伸ばしていけるようになります。『ベビーブック』2025年2・3月合併号「&ベビー」では、気質タイプ別の強みの芽を伸ばすヒントを解説しています!