小学生限定の新人公募文学賞「12歳の文学賞」。12歳(12回目)を迎える今回が、最後の募集です。2016年に作品を募集した「第11回12歳の文学賞」は、2017年3月に受賞者が決まり、その贈賞式が、2017年3月30日、各賞の受賞者6名と保護者のみなさん、審査員が参加して開催されました。
大賞、優秀賞の2作品、そして、あさのあつこ賞、西原理恵子賞、読売新聞社賞6作品への、審査員の選評をご紹介します。

大賞「天敵の攻略法」川内千歳(小6)
選評:松井チーフプロデューサー
さわやかな青春スポーツ小説で、審査会で文句なしの大賞決定となりました。河内さんは昨年の石田衣良賞の受賞者ですが、さらに成長した姿を見せてくれて嬉しかったです。
優秀賞「ワライクエスト」寺田七海(小6)
選評:松井チーフプロデューサー
笑いをテーマにし、関西弁を駆使したテンポの良い作品。ラオスにいたら関西弁を聞いたり話したりする機会は多くなかったと思いますが、見事にひとつの作品に仕上げたと思います。
優秀賞「ヒナステラのクラシック」日向開紀(小5)
選評:松井チーフプロデューサー
不条理な世界をちゃんと描き切ったところに感動しました。最初、象が落ちてくるシーンでガツンとつかまれました。今、5年生ですから、次回また力作が読めるのではないかと期待しています。
あさのあつこ賞「井の中のしじみ、行き着く先を知らず」山本千尋(小6)
選評:あさのあつこ先生
この作品を読んだ瞬間から、これはぜひあさのあつこ賞に! と思っていました。非常にユニークな作品で、優しいところ、かわいいところがひとつもない底意地の悪い〜作品なんですけど、それが本当におもしろい!
なんなんだろう、このおもしろさは? とあらためて考えてみると、この作品が持つ個性であり、物語はこうでなければいけない、こうだったらみんなが楽しめるという枠を取っ払ったところだなと。山本さんが頭の中で作り上げ、ストーリーの中で遊んだ、生涯にひとつ書けるか書けないかの傑作だと思います。
西原理恵子賞「足くさ物語」島田藍(小3)
選評:西原理恵子先生
島田さんは他の立派な賞が欲しかったかもしれませんが、ごめんなさいね、私が取っちゃいました。最初っからおもしろくって、意地悪で、臭くって、無駄な話なんだけど、無駄がない。
ボケた文章を書くのって、無駄なところがあるとおもしろくなくなる。でも、このぼやきみたいな物語は無駄がなくってすごくおもしろい。とても上手なぼやきでした。しかも小学3年生とは! 私、こんなちゃんと書けないわ。これからも書いていってください。期待しています。
読売新聞社賞「スミレさんの恋」渡邉瑞記(小6)
選評:鵜飼哲夫氏
とてもきれいな作品でした。きれいさを支えているのは、やはり文章だと思います。近松門左衛門が「芸術は虚実皮膜の間にある」と言っています。嘘と現実の間にポワポワとあるのが、芸術であり、小説であるということです。
今回の渡邉さんの作品も人間がカタツムリになってしまう、まさに人間の世界のことがいつの間にか嘘の世界になっていく。その書き方がいかにも嘘を書くという感じでもないし、現実を書くという感じでもない。
読んでいるうちに不思議な世界へさまよっていく、それがとてもいいと思いました。と、同時に本人が書きながら言葉を選んで楽しんでいるのが感じられました。これからの作品にも期待しています。
それぞれの選評から、審査員のみなさんの、受賞作品への思い入れが伝わってきます。同時に、第12回「12歳の文学賞」への大きな期待も感じられました。
受賞者の挨拶や、審査員の先生たちのメッセージは、以下でお読みいただけます。
個性あふれる作品を書いた受賞者たちならではの、ユニークな楽しい挨拶です。作品が生まれた背景や、受賞に対する率直な気持ちを語ってくれました。



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