イヤイヤ期の子どもにはどう関わればいい? 『ベビーブック10・11月合併号』育児特集番外編Q&A

毎日のイヤイヤがひどい場合はもちろん、自己主張がみられなくても、おうちの方としては「うちの子、大丈夫?」と不安になってしまうもの。この時期の子どもには、どのように関わっていけばよいのでしょうか。子育ての心理学に詳しい公認心理師がお答えします。

Q.1 2歳を過ぎても目立ったイヤイヤがないのですが、大丈夫でしょうか?

Q.2 下の子が生まれてからイヤイヤがひどくなりました。どうすればいいですか?

Q.3 イヤイヤがひどいとき、気をそらすためにスマホで動画を見せてもいいですか?

Q.4 思い通りにならないとお友だちをたたく、おもちゃを取ってしまうといった乱暴な行動が多くて困っています……。

Q.5 同じことを何回注意しても聞きません。おすすめの伝え方はありますか?

Q.6 理由がわからないイヤイヤが続くときは、どうすればいいですか?

Q.7 洋服などで「これじゃなきゃイヤ!」というこだわりが強いときは、どうすればよいですか?

Q.1 2歳を過ぎても目立ったイヤイヤがないのですが、大丈夫でしょうか?

A.

2歳の時点では、自我の発達がイヤイヤという形で表れるかどうかは、子どもが持って生まれた気質による部分が大きいものです。イヤイヤがないからといって自我が芽生えていないわけではなく、おうちの方が子どもの自発的な行動を見守りながら適切な関わり方をしている場合は、子どもがイヤイヤをする必要がないというケースもあります。
イヤイヤで意思表示をすることすら許さないほど、おうちの方が子どもを抑えつけているのでなければ、目立ったイヤイヤがなくても「この子はそういう気質なんだな」と考えて見守っているので大丈夫です。

Q.2 下の子が生まれてからイヤイヤがひどくなりました。どうすればいいですか?

A.

赤ちゃん返りは「自分が十分にケアされていないと感じる」という気持ちの表れなので、下の子のお世話を誰かにお願いして、上の子の「甘えたい」という気持ちを満たす時間をつくると改善することが多いです。赤ちゃんの人見知りが始まるのは生後8か月ごろからなので、下の子が8か月になるころまでは、お世話を他の人にお願いしやすい時期だといえます。
おうちの方が下の子のお世話をするときは、「お兄ちゃん・お姉ちゃんだから我慢して」と上の子を待たせるよりも、上の子と一緒にお世話をする方が気持ちが満たされやすくなります。そのとき、上の子に「手伝ってくれて助かったよ。さすがお兄ちゃん・お姉ちゃんだね」といった声かけをするのがおすすめです。

Q.3 イヤイヤがひどいとき、気をそらすためにスマホで動画を見せてもいいですか?

A.

子どもが「イヤイヤをするとスマホを見せてもらえる」と学んでしまうと、スマホを見たくてわざとイヤイヤをするようになり、小学生になるとさらに長時間見たがるというように要求がエスカレートすることがあります。スマホの代わりに絵本を与えるなど、それが習慣になったとしてもおうちの方が困らずにすむルールを早い段階でつくり、「ママやパパの言うことを聞かないとダメなときもある」ということを伝えていきましょう。
やむを得ずスマホで動画を見せるときは、「この1話を見たらおしまいね」というように、終わりにするタイミングを明確にすることが大切です。

Q.4 思い通りにならないとお友だちをたたく、おもちゃを取ってしまうといった乱暴な行動が多くて困っています……。

A.

相手から先にやられたからやり返していることもあるため、一方的に怒らずに、まずは状況を把握しましょう。そのうえで、おもちゃを使いたいなら「たたくのではなく『貸して』と言う」など、おうちの方がお手本を示せると理想的です。ただし、子どもが感情的になっている場合は、トラブルの現場から3~5mほど離れて気持ちを落ち着かせることをおすすめします。
過去に「お友だちをたたいたらおもちゃを貸してもらえた」といった経験があると、子どもはそれを唯一の対処法として認識し、同じ行動をくり返してしまうことがあります。その場合は、おうちで人形遊びやごっこ遊びをするときに似たような状況の設定をつくり、親子でロールプレイ(役割練習)をすることで、「こういう言い方をすると伝わりやすいね」「こんなときは順番を待てるといいね」といった望ましい行動パターンのレパートリーを増やしていきましょう。

Q.5 同じことを何回注意しても聞きません。おすすめの伝え方はありますか?

A.

注意するときは、子どもと目が合った状態で話し始める、具体的な指示を出す、指示した通りに子どもが行動したかを見届けるという3つの点を心がけましょう。「お片づけをしなさい」といった抽象的な指示は2歳前後の子どもにはまだ理解できないので、「車のおもちゃを赤い箱にしまいなさい」というように、やるべきことは具体的に伝えるようにします。
子どもの行動に影響を与えるのは、おうちの方が「何回注意したか」ではなく、「前回、注意されたときに結果的に何が起こったか」ということです。「『テレビを見るのはやめなさい!』と注意されたけれど結局そのまま見続けることができた」といった経験が続くと、子どもは「ママやパパの言うことを聞かなくても自分が困ることはない」と学んでしまいます。「テレビを見るのはやめなさい」と注意するのであれば、その場でテレビを消すというように、注意したことは1回ずつ確実に実行に移すことが大切です。

Q.6 理由がわからないイヤイヤが続くときは、どうすればいいですか?

A.

子どもにとって、イヤイヤをしたときだけ、おうちの方が反応してくれるという状況が続いていると、おうちの方の気を引くためにイヤイヤをくり返してしまうことがあります。子どもが機嫌よく過ごしているときは、家事などを片づけたいと考えるおうちの方も多いと思いますが、子どもにも目線を向け、声をかけたり、笑いかけたりするといったコミュニケーションを大切にしましょう。「イヤイヤをしなくてもママやパパは自分のことを見ていてくれる」と子どもが実感できるようになれば、おうちの方の気を引くことを目的とするイヤイヤはおさまっていくはずです。

Q.7 洋服などで「これじゃなきゃイヤ!」というこだわりが強いときは、どうすればよいですか?

A.

パジャマのまま登園したがるなど、身の危険につながったり、人に迷惑をかけたりすることでなければ、体裁が悪かったとしてもなるべく許容して見守ることをおすすめします。このようなこだわりの多くは一時的なもので、許容したとしても、その後ずっと園や学校にパジャマで行きたがることはないので心配いりません。イヤイヤ期は、それぞれの家庭で決めているルールに反しないことであれば、「まあ、いいか」と許容できる範囲を広げておくと、おうちの方の気持ちが楽になりますよ。

 

佐藤めぐみ先生

公認心理師。育児相談室「ポジカフェ」運営。欧米で学んだ心理学をもとに、ポジ育メソッドを考案。スマホで受講できる子育て心理学講座や心のケア「ポジ育クラブ」を配信中。

イラスト/唐橋充 文/安永美穂 構成/童夢

イヤイヤ期は、子どもが自立への第一歩を踏み出す大切な時期です。『ベビーブック』2022年10・11月合併号「もっとベビーブックwith HugKum」では、おうちの方の関わり方のポイントや、よくあるシーンでの対応方法について詳しく解説しています!

育児特集 番外編Q&A【もっと教えて、先生!】全記事リストはこちら

 

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