災害時のシミュレーションをしてみると、さまざまな不安が出てくるのではないでしょうか。ベビーブック世代のお子さんがいる家庭だからこそ抱える疑問や悩みについて、産婦人科医であり防災対策の研究者でもある専門家がアドバイスします。
Q.1 災害時に避難する場合は、ベビーカーや自転車を使ってもいいのでしょうか?
Q.2 子どもが保育園、親は職場にいる場合に災害が起きたらどうすればいいでしょうか?
Q.3 防災グッズや保存食はどれくらいの頻度で見直せばいいでしょうか?
Q.4 自宅が水害や地震に危険なエリアなのかどうか、事前に知ることはできますか?
Q.5 地震が起きたとき家の中で危険な場所を教えてください。
Q.6 マンションに住んでいるのですが、災害時も自宅避難のほうがいいのでしょうか? 乳幼児がいるので避難所で過ごせるか不安があります。
Q.1 災害時に避難する場合は、ベビーカーや自転車を使ってもいいのでしょうか?
A.
自転車は、道路にガラスの破片が落ちているなどでパンクする可能性が高いので、避けたほうがいいでしょう。
ベビーカーも、避難経路の中に段差があって登れない場合もあります。なるべく抱っこ紐で抱っこしての避難を推奨します。
Q.2 子どもが保育園、親は職場にいる場合に災害が起きたらどうすればいいでしょうか?
A.
まずは、災害時にどのような対応になるのか、保育園と確認しておきましょう。どこに避難するのか、保護者とはどのような連絡手段をとるのか、電話が通じない場合はどうするのか、備蓄や非常用電源はあるのか、保護者が帰宅できない場合はどうなるのかなどを質問して、保育園での対策について共有しておきましょう。多くの園では防災マニュアルが作成されていますが、もし通っている園にマニュアルがまだない場合は、あなたが質問したことで意識が高まり、マニュアル作成へとつながることもあります。
園との協力関係を築くためにも、園が主催する親子防災訓練や受け渡し訓練にはなるべく参加しましょう。訓練に参加することで、災害時の具体的なシミュレーションができます。
また、どうしても迎えにいけないときに備えて、同じ園の保護者や近所の人など、「いざというとき」に助け合える人を見つけて、連絡先を交換しておくことも大切です。
Q.3 防災グッズや保存食はどれくらいの頻度で見直せばいいでしょうか?
A.
水やカセットコンロ、電池などは、普段使うものを多めに買っておき、使いながら買い足す、という形で更新していくといいでしょう。
非常食は賞味期限が長いものが多いのですが、だからといってずっと入れっぱなしにするのではなく、1年に1回程度のペースで「防災ピクニック」と称して非常食を食べる機会を設けるといいでしょう。賞味期限切れを防ぐだけでなく非常食に慣れることにつながり、食べ慣れないものを嫌がる子にも安心です。
洋服や靴は、衣替えのタイミングで見直しましょう。おすすめは、避難用には1サイズ大きめのものを入れておくこと。そのサイズになったら避難用から普段使いへと移動させ、もう1サイズ大きいものを入れるようにします。そうすると、無駄なく使うことができます。オムツも同様です。
Q.4 自宅が水害や地震に危険なエリアなのかどうか、事前に知ることはできますか?
A.
インターネットで「ハザードマップ」と検索すると、お住まいの自治体が発行する災害による被害を予想した地図が出てきます。また、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」でも調べることができます。
https://disaportal.gsi.go.jp/
ハザードマップでは、地震の危険度、洪水、高潮、津波、土砂災害、火山など災害事に被害の範囲や程度などを確認できるだけでなく、避難所や災害時拠点病院、避難ルートなども知ることができます。
Q.5 地震が起きたとき家の中で危険な場所を教えてください。
A.
危ないのは、物が落ちてきそうなところと、火がつくところです。この両方に当てはまるのがキッチンですね。
反対に、物が落ちてくる可能性が低いところは比較的安全だといえます。これは、それぞれのお宅によって異なります。まずは、わが家の中で安全な場所がどこなのかを、確認しておくといいでしょう。
落ちてくるものがないスペースを作っておくことができれば一番いいですが、住宅事情によってはそれも難しいので、突っ張り棒や開閉防止ロック、L字金具などを設置して、なるべく安全なスペースを確保しておくことも大切だといえます。
Q.6 マンションに住んでいるのですが、災害時も自宅避難のほうがいいのでしょうか? 乳幼児がいるので避難所で過ごせるか不安があります。
A.
自宅避難か避難所、どちらのほうがいいと言い切ることはできません。なぜなら、災害の種類、住んでいる地域、住居形態、階数、住宅の構造(鉄筋か木造か)によって異なるからです。
自宅避難か避難所のどちらがいいのか、いざというときに判断できるよう、ハザードマップなどを確認しながら事前にシミュレーションしておくといいでしょう。また、災害時にはラジオなどで避難情報を収集し、水害などで避難勧告が出た場合はすみやかに避難しましょう。
吉田穂波先生
医師・医学博士・公衆衛生学修士。神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授。東日本大震災では産婦人科医として被災妊婦や新生児の支援に携わる。4女2男の母。著書に『頼るスキル 頼られるスキル 受援力を発揮する「考え方」と「伝え方」』 (角川新書)など。
イラスト/石崎伸子 文/洪 愛舜 構成/KANADEL
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