
2025年にボローニャ国際ブックフェアで、クロスメディア賞を受賞した韓国の絵本『星のたねまき』。日本語の翻訳出版をきっかけに、作者のハン・ダムヒさんと訳者のすんみさんが、お手紙を交わしあいました。
星の種をまいて育てる、という壮大な空想物語はいったいどこからやってきたのでしょうか。お手紙ならではの打ち明け話です。
【『星のたねまき』往復書簡① 翻訳者から、絵本作家へ】
【優しさの連鎖に心がじんわり温まりました】
ハン・ダムヒさま
蒸し暑い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
わが家には小さな畑があり、今年ルッコラやしそ、トマト、ジャガイモなどを植えました。毎日水やりをし、時に肥料を与えながら世話をしています。種を蒔いてから育つまでを見守る作業は思った以上に手がかかり、特に真夏の世話は本当に骨が折れます。暑さは植物にとっても厳しいようで、今年は一株のジャガイモが実を結ぶ前に枯れてしまいました。
それだけに、厳しい暑さが一段落して植物たちがぐんぐん背を伸ばし始めると、心からホッといたします。しそが食べきれないほどの葉を広げるこの時期は、夏の厳しさを乗り切ったことを植物たちと一緒に祝いたい気持ちになります。
絵本『星のたねまき』の中でも、星が花を咲かせるまでのたくさんの困難が描かれますね。
星のたねまきさんは星たちを守るため日々忙しく働き、ようやく星たちの花が咲いたとき、弾けるような笑顔を見せてくれます。
花が開くまでには、きっと星たちにとっても忍耐のときだったのではないでしょうか。
この春、ルッコラの種を蒔いた際にひとつ発見がありました。種殻がついたまま顔を出した芽があり、その重さに耐えて育ったせいか、殻が落ちたあとも曲がった形のまま大きくなっていったのです。最初は可哀想な気がしましたが、だんだんその曲がり具合こそ、その芽の「ありのままの姿」のように思えてきました。
『星のたねまき』の星たちも、ひとつとして同じ形はありません。星のたねまきさんがせっせとお世話をした結果、畑一面に星の花が咲き誇るシーンは圧巻で、大好きな場面です。何度もページをめくるうちに、星たちの個性が一つずつ目に飛び込んでくるようになりました。星のたねまきさんに優しく見守られて育った星たちが、またどこかの空で誰かを照らす存在になっていく――。この優しさの連鎖に、心がじんわりと温かくなりました。

本を閉じるとき、星のたねまきさんと共に星たちの未来を応援したい気持ちになり、同時に自分自身も背中を押されているような温かい心地になりました。夢を抱く人々へ向けた、ダムヒさんの優しい思いが深く心に届いたからだと思います。
本書には暗闇や隕石、風といった困難が描かれていますが、それらも決して悪いばかりの存在としては描かれていません。このような温かい世界観をダムヒさんはどのように構想されたのでしょうか。「星の種を植える」という印象的なアイデアは、どのように思いつかれたのでしょうか。
今日、庭のホヤがつぼみをつけました。無事に花が咲くまで大切に世話をしながら、お返事を心待ちにしております。
すんみ 拝