
2025年にボローニャ国際ブックフェアで、クロスメディア賞を受賞した韓国の絵本『星のたねまき』。日本語の翻訳出版をきっかけに、作者のハン・ダムヒさんと訳者のすんみさんが、お手紙を交わしあいました。
星の種をまいて育てる、という壮大な物語はいったいどこからやってきたのでしょうか。お手紙ならではの打ち明け話です。
【『星のたねまき』往復書簡② 絵本作家から、翻訳者へ】
【これまでで一番つらくて暗い時期に、この物語は始まりました】
すんみさま
こんにちは。
お送りいただいた美しい文章を嬉しく読ませていただきました。このところ連日の猛暑のなかで作業を続けておりますが、おかげさまでまるで恵みの雨に出会えたような心地がしました。
私は『星のたねまき』の誕生について、少しお話しできればと思います。
『星のたねまき』には、今も自分の場所で黙々と一日を生き、見えない場所でそれぞれの星のたねを撒いている、私たちみんなの物語になってほしいという思いを込めました。目立たないところで自分の道を進んでいる人、誰かのためにそっと光を添える人、つらい瞬間にも最後まで諦めずに今日を生きている人。その一人ひとりが、みんな「星のたねまきさん」なのだと、私は信じています。
私がこれまでで一番つらくて暗い時期を過ごしていた頃、この物語が始まりました。その頃の私は、終わりの見えない長いトンネルの中にいるようでした。どこへ向かっているのか、この道の先に何があるのかわかりません。ただ毎日、黙々と歩んでいくしかありませんでした。
そんなある日、とりわけ心が冷え込み、暗かった日のことです。暗い夜になってようやく静かに外へ出ていく星のおじさん(訳註:原書のタイトルは『星のおじさん』)の姿が思い浮かびました。誰も見ていない時間に、誰も気づいてくれない場所で、黙々と星を育てる姿が、不思議なほどまで、私の心に留まりました。そしてその時、『星のたねまき』の物語が始まりました。

思い返すと、『星のたねまき』の主な場面のほとんどは、その時期に生まれたものでした。星が眠っている川を渡る場面、嵐を黙々と耐え抜く姿、雨のように降り注ぐ隕石を通り抜け、ついに穏やかな静寂を迎える瞬間。そのすべての場面は単なる想像ではなく、私が経てきた時間と心境から、自然と溢れ出たものでした。
『星のたねまき』は、そうして4年という歳月を経て、一冊の絵本になりました。その間に、絵を見る私の視線が変わり、表現方法も少しずつ深めていきました。人生は、喜びばかり与えるわけでもなければ、困難ばかりを与えるわけでもありません。時には転び、また立ち上がって過ごしてきた時間が、ひとつふたつと物語の中へ染み込んでいったのです。
私は時々思います。もしその4年という時間の中に何も起こらなかったとしたら、今の『星のたねまき』は世に出てくることができなかっただろう、と。
星のたねまきさんは、私が描いたキャラクターである前に、私が過ごしてきた時間から生まれた人物です。だからこの絵本は、ひとつの物語ではなく、私の人生のかけらでもあるのです。
世界には、私たちのまだ知らない数多くの「星のたねまきさん」がいます。自分の場所で黙々と一日を生き、見えない場所でそれぞれの星を育てている人たちです。どうかそのすべての星のたねまきさんが、最後まで勇気を失わず、自分だけの星を育てながら世界を少しずつ照らしていけますように。そして、この小さな絵本が、その道をそっと照らす星の光となって寄り添えることを願っています。
ありがとうございます。
ハン・ダムヒ