■こうなる! “夢の旅”の出発から帰還まで
「砂が貴重な資源になっている!?」「マグニチュード1のエネルギーは菓子パン1個分!?」--などなど、意外に知らない地球のお話が87話もつまった科学読み物、『へんてこりんな地球図鑑』。
著者・岩谷圭介さんは「気球での宇宙旅行」の実現を目ざしています。3回連続インタビューのこの第2回では、「ふうせん宇宙旅行」の出発から帰還までをシミュレーションしてもらいました!
第2回 家族で手軽に行ける、4時間の宇宙旅行
第3回 初飛行は202×年!? お風呂に入って地球を見下ろせるかも!?
第2回 家族で手軽に行ける、4時間の宇宙旅行
前回、「ふうせん宇宙旅行」について少しお話ししました。「気球で地上25㎞という宇宙の入り口に行く」この旅は、ロケットなどで行くよりも安全です。まずは、出発から帰還までを説明しましょう。
気球は昼間に、関東地方の海辺から、乗客5人・パイロット1人・乗務員1人を乗せて上がります。7人乗りの直径2~3mのキャビンには景色が360度で楽しめる、大きな窓がついています。
地上25㎞までは、1時間かけてゆっくり上昇します。飛び立った町がどんどん小さくなっていき、だんだんと見える範囲が広がります。地上20㎞くらいまでは「空」という感じですが、それを超えると地球をおおううすい大気の層、そして最後には真っ暗な宇宙空間にかがやくいくつもの星が見えてきます。
地上25㎞では写真を撮ったり、飲食したりしてゆったり2時間過ごします。帰りは気球から少しずつガスを抜きながら、やはり1時間かけて降り、海に着水します。キャビンは水より軽いので沈みません。着水後、5分でむかえの船が来て、旅は終わります。
■気球が破れても「四重の安全性」がある
「だけど気球が破れたりしたらどうするの!?」と思う人もいるでしょう。「ふうせん宇宙旅行」では下の図のように、もしものときのために「四重の安全性」を考えています。
たとえ乗客がキャビンから出られずに落ちたとしても、キャビンは大きくて軽いため、どんなに速くても時速40㎞で着水できます。万一地上25㎞で気球に穴があいても、着水まで最低でも30分あるので、乗客にはじゅうぶん安全策を取る時間があります。
なぜそうなるか? それはキャビンの底が広くて平らなため、落ちるときに空気の抵抗を強く受けるからです。ちなみに雨粒は、『へんてこりんな地球図鑑』でも書きましたが、マンガで見るような涙形ではありません――空気抵抗を受けるので、底が平らなまんじゅうのような形をしています。
■ロケットなどでの宇宙旅行よりも安くて安全
これがロケットなどならばどうでしょうか? 上空でトラブルが起こったとして、機体は気球ほど空気抵抗を受けず、すさまじい速さで飛行するので、乗客が脱出することは容易ではありません。
仮にトラブルがなくても、ゆったりと昇って降りる気球とはちがい、行きも帰りも大きな加速度が乗員にかかるため、子どもにはハードルが高い。室内の気圧も急変するので、気密服の着用も必要です。
いっぽう「ふうせん宇宙旅行」は家族で、ふだん着でOK。気球がいかに安全・手軽かわかってもらえたと思います。なお値段は1人100万円。ロケットなどの場合は最低3千万円以上です。
次回最終回は、「ふうせん宇宙旅行」は実現までどのくらいの段階まできたかをお話しします。
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岩谷圭介(いわや けいすけ)
1986年生まれ、福島県出身。2012年に日本で初めて風船による宇宙撮影を成功させた。講演や絵本、児童書執筆など、科学の楽しさを伝える活動も行う。著書に『へんてこりんな宇宙図鑑』『宇宙を撮りたい、風船で。』(キノブックス)、『うちゅうはきみのすぐそばに』(福音館書店)などがある。